※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations)
1. 調査目的
教育協力NGOネットワーク(JNNE)は、外務省主催による「教育分野のNGOキャパシティ・ビルディング(能力強化)『教育協力NGO研究会』」を実施するにあたり、能力強化のための事業中期計画を立案した。
能力強化事業の目標は、NGOの教育協力に関する専門的技術的能力の向上を図ることである。活動として、教育協力に関する研究会、ワークショップ、スタディツアーの実施が計画された。事業の目標である「専門技術能力が強化される」ことを図る指標として、(1)JNNE参加団体の支出規模、活動対象国・地域の数、(2)JNNE象国教育機関、他の援助機関への影響力を設けた。
本調査の目的は、これらの指標のベースライン(事業開始前の状態)を明らかにすることである。データとして、参加団体が作成したプロジェクト・プロファイル、事業報告書、ホームページが活用された。しかしながらプロジェクト・プロファイルを作成した団体が8団体と少なかったため、JNNE参加団体の全体像を示すには限界があることを断っておきたい。
2. 調査結果
(1)支出規模、活動対象国
JNNE会員団体のうち教育協力事業を実施している16団体
1の2001年度あるいは2000年度の総支出は、43億2,088万円。支出金額の最も小さな団体が865万円で、最も大きな団体が14億8,800万円であった。
活動国は41か国。地域別には、アジアが16団体、アフリカが5団体、東欧(旧ユーゴ地域等)が3団体、中南米が2団体であった。国別では、タイ、ラオス、カンボジアで活動している団体が5団体、フィリピン、インド、ベトナム、アフガニスタンが4団体、ネパールが3団体となっている。
なお、UNDP、UNHCR、UNICEFなどの国連機関と実施団体契約(
Implementing Partner)を結んでいるNGOは4団体
2であった。
1 16団体とは、特定非営利活動法人 ICA文化事業協会、特定非営利活動法人 アジア教育支援の会、特定非営利活動法人 アフリカ地域開発市民の会、ASPBラオスの子どもに絵本を送る会、特定非営利活動法人 幼い難民を考える会、社会福祉法人 基督教児童福祉会・国際精神里親運動部、財団法人 国際開発救援財団、特定非営利活動法人 C.P.I.教育文化交流推進委員会、特定非営利活動法人 ジェン、社団法人 シャンティ国際ボランティア会、社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、特定非営利活動法人 地球の友と歩む会、特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター、日本民際交流センター、宮崎国際ボランティアセンター、特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン。
2 4団体とは、特定非営利活動法人 ジェン、社団法人 シャンティ国際ボランティア会、社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン。
(2)教育協力事業の取り組み
プロジェクト・プロファイルを作成した8団体
3の総計で34の教育協力事業を分析した。1.協力を実施している教育領域、2.協力の形態、3.協力活動の内容、4.受益者数を調べた。なお、34事業のうち教育が主な目的である事業が29事業、教育は目的の一部である事業が5事業であった。
3 8団体とは、特定非営利活動法人 アフリカ地域開発市民の会、ASPBラオスの子どもに絵本を送る会、特定非営利活動法人 幼い難民を考える会、社会福祉法人 基督教児童福祉会・国際精神里親運動部、財団法人 国際開発救援財団、社団法人 シャンティ国際ボランティア会、特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター、日本民際交流センター。
1.教育領域
どのサブセクターに対する協力事業か、については、学校教育の方が学校外教育よりも多い。初等教育が最も多く、全事業の6割弱を占めている。
学校教育 |
27事業(79%) |
うち 就学前教育
初等教育
前期中等教育
後期中等教育
高等教育 |
4
20
9
7
3 |
学校外教育 |
15事業(44%) |
うち 子どもを対象
成人を対象
図書館活動
職業訓練
その他(専門家育成) |
7
5
6
4
1 |
2.協力形態
協力の形態としては、資金援助、物資供与が最も多い。専門家を派遣している事業は10事業と少ない。多くの事業は、いくつかの形態を混合したものである。
資金援助
物資供与
調整担当者派遣
情報提供・交換
専門家派遣
研修生受入
教育関係者交流 |
27事業
25
24
13
10
6
6 |
3.協力内容
どのような協力活動、介入を実施しているかについては、教員等教育者に対する活動が最も多く、特に現職研修の活動が多い。給与等の支援を行っている事業が10ある。
教育者(教員、指導員、図書館員等) |
25事業 |
うち 現職前養成
給与支援・補填・待遇支援
現職研修
教員養成者・研修者に対する研修 |
4
10
19
9 |
教育内容については、カリキュラムや教科書の改善を行っている事業は少なく、副教材の配布が多い。学校等の教育施設の建設・補修事業は14事業を占めている。学習者への支援のうち、奨学金の供与・貸与は4事業と少ない。
教育内容 |
23事業 |
うち カリキュラム改善
教科書開発・改善
教科書の配布
副教材の開発
副教材の配布
教育方法・評価方法の開発・改善
視聴覚教材、ITの普及
図書の出版、普及 |
2
0
1
9
18
4
0
9 |
教育設備・施設
(学校、図書館等の建設・補修) |
14事業 |
コミュニティ |
12事業 |
うち 保護者組織・学校委員会等の設立・支援
学校行事への保護者・住民の参加促進
保護者への啓発活動
学校支援のための収入向上活動 |
9
7
11
3 |
学校や図書館の運営 |
12事業 |
うち 運営システム確立
運営・管理者研修 |
7
12 |
教育行政 |
10事業 |
うち 教育行政者への研修
教育行政・教員養成機関の財政支援
教育行政機関への提言活動 |
3
1
9 |
学習者 |
9事業 |
うち 奨学金の供与・貸与
制服の供与
文房具の供与
通学手段の確保・支援
給食の支援
保健・衛生指導 |
4
1
4
1
5
2 |
その他 |
4事業 |
うち 学校外教育の学習活動の開発・改善
補修授業の学習場所の提供
文化交流事業 |
2
1
1 |
4.受益者数
34事業の受益者総数は、540,000人であった。
(3)対象国教育機関、他の援助機関への影響
34事業のうち19事業(56%)が、教育行政機関あるいは援助機関に対して何らかのインパクトを与えている。パイロット的に行っていた事業が教育政策に取り入れられた、他の援助機関が活動を複製するために協力の要請を受けた、学校建設の建築基準が改善された等の影響があげられている。
影響がみられる |
19事業 |
うち 対象国中央政府教育機関
対象国地方政府教育機関
|
12
4 |
今のところなし |
14 |