※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations)
1994年、南アに黒人政権が誕生。アパルトヘイトの教育を否定し、黒人が自主的、自立的に考えられる教育をめざし、教員自身で生徒のニーズに合わせた成果重視の学習指導を行うための野心的な「カリキュラム2005」を導入。その一環として、遅れている理数科教育の強化に着手した。
<プロジェクトの概要>
| ●名称: | 南アフリカ・ムプマランガ州中等理数科教員再訓練事業(MSSI) (JICAの技術協力プロジェクト)
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| ●プロジェクトの目標: | (1)学校ごとに自主的な現職教員研修のしくみができる (2)教員の指導力が向上し、授業が改善される
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| ●実施主体: 協力:
 | ムプマランガ州教育省 JICA、プレトリア大学
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| ●対象主体: | 州内の全中学校(540校)の全理数科教員 | 
| ●期間: | 1999年11月~2002年11月(3年間) | 
■経験提供型の協力
日本は理数科教育の技術協力での経験ノウハウを提供することになった。内容は、州内のすべての中学校で現職の理数科教員が、定期的に授業改善に関する自主研修を行うシステムを作る支援すること。現地では
Peer Teacher Learning(PTL)と名づけられ、徐々に受け入れられてきている。
通常の技術協力が専門家を派遣して現地指導する技術移転型であるのに対して、この事業では新しい試みとして経験提供型を試みた。JICA国別特設研修制度を使って、現地州政府の教員訓練要員(指導主事)グループを6週間の日本研修に招き、日本の組織の中に組み込まれている理数科教育開発の経験について学習してもらい、それをもとに彼ら自身の手で自らが中心になって実施する「さみだれ式」の研修事業計画を作成。それをJICA短期派遣専門家とプレトリア大学専門家の合同チームの支援で実施する。成功の鍵は十分な意見交換を通しての相互学習、特に現地側事業関係者の積極的な学習姿勢。
■自主研修を教員自身でモニタリング
現地での学校ごとの自主研修では、月1回、先生たちが授業改善の研究をする。これに対する評価の方法は、先生たちが自身でモニタリングし、改善していくしくみになっている。
例えばある学校で、8人の先生が集まって電気をどう教えるかについて話し合ったのであれば、それを定型モニタリング用紙に記録していく。3か月ごとに集計し、進捗状況を相互チェックする。その際は校長も参加する。
現職理数科教員が意欲的に取り組むための仕掛けとして、プロジェクト参加を通して大学院の学位が取れるしくみを加えた。自主研修というグループワークを強調しつつ、意欲のある個人が私益を追求できる仕組を作ることで、十分な動機づけが働くよう配慮した。学位を提供する役割を担ったプレトリア大学は、かつてアパルトヘイトを支持していた旧白人系大学。今回の取り組みは、大学にとって融和を図る機会であり、州教育省とのパイプを太くした。
JICAとしては、意図的に若いジュニア専門家しか現地に置かないようにした。日本が出過ぎないようにとのねらいからで、プロジェクトの成功を支える正しい判断だった
<MSSI校内理数科教員研修活動(2001年3月~9月)>
| 地区名 | 参加校数 | 校内理数科教員研修活動実施回数 | 
| 実施回数 | 1校当たり平均回数 | 
| 3月~5月 | 6月~9月 | 3月~5月 | 6月~9月 | 
| 初年度参加地区 Groblersdal
 KwaMhlanga
 Moretele
 Witbank
 | 30
 23
 23
 20
 | 25
 82
 39
 46
 | 33
 52
 38
 53
 | 0.8
 3.4
 2.3
 2.3
 | 1.1
 2.3
 1.7
 2.7
 | 
| 2年度目参加地区 Eestehoek
 Hazyview
 Malelane
 Nelspruit
 | 10
 10
 12
 10
 | 29
 24
 31
 18
 | 29
 28
 48
 16
 | 2.9
 2.4
 2.6
 1.8
 | 2.9
 2.8
 4.0
 2.3
 | 
事業評価には、多様な活用方法がある。事業計画の一助としての事前評価、目的達成度を事後的に測る成果・インパクト評価に加えて、この事業に特徴的なように、事業パートナー間の対話を促進する手段として期中に活用することもできる。関係者が予め合意した方法でモニタリング・データを出し合い、それをもとに事業の実施プロセスについて協議しつつ継続的に共同学習することが事業の有効性、効率性を高めかつ現地側体制の自立可能性を確実にするための要点。データの共有と評価に基づく対話がそのような建設的な事業実施を可能にする。
また、援助評価と、事業評価は異なる。事業をどう援助していくべきかは、事業の評価とは別途である。これを混同してはならない。
| 広島大学教育開発国際協力研究センター(CICE): 途上国の教育開発に対する技術協力を研究、モデル事業の実施、政策提言を通して支援していく機関として文部科学省が設立。NGOとの連携にも意欲的。CICEはサイスと読む。
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