ODAとは? 国際協力とNGO(非政府組織)

事例6 意欲をめぐる研修に、住民も参加
意欲向上・環境教育研修事業アフリカ地域開発市民の会(CanDo)

※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations


■孤立が教授意欲を低下させる

ケニアの村落地域の小学校では、教材や施設の不足・欠如に加え、小規模の小学校が分散している。人との交流がなく、自分を元気づけるきっかけがないなど、孤立が影響し、一般的に教員の教授意欲は低い。
CanDoはムインギ県ヌー郡・ムイ郡における導入事業として、域内のすべての小学校52校への教材配布を進めていった。その過程で、一部の小学校では成績向上など成果が確認できたものの、地域全体として持続的な効果は見られなかった。
そこで、地域の教育行政官や学校教員と踏み込んだ議論を行った。その結果、教員の意欲が低いことが問題意識として共有された。そうして、意欲向上を目的とする教員研修を進めていくことが合意された。

■環境教育が意欲を引き出す

研修は「意欲向上」と「環境教育」をテーマに進めている。
「意欲向上」研修では、まず、地域の小学校の管理職を対象とする集合型研修を導入とする。その後、集合型研修の成果として、各小学校での実践活動を確認し、実践内容の向上を図る場として小学校単位の全教員対象研修を実施する。研修では、「意欲」の定義、「意欲」を左右する要因・影響、「意欲向上」の具体策を議論する。
意欲向上を目指す一環としての「環境教育」研修では、環境教育の概念を理解し、教科学習と環境活動を関連づけて、実践に移す具体的な方法を議論する。
菜園や植林などの実践的活動を通じた環境教育は、対象地域において斬新な取り組みである。地域の人々は、子どもたちの研究発表を見て、教育の成果を、喜びをもって実感する。こうして教員の教授意欲が引き出され、持続することが期待される。

■手当は、一切支給せず
研修の進行は、「意欲向上」では、高校教員資格と経験のあるケニア人講師が教育行政官と協力して行う。「環境教育」では、地域の気候・植生や環境教育に精通したケニア人講師が行う。研修に参加する教員や教育行政官には、一切手当を支給しない。


<ポイントとなる事柄>

1.まず、地域との関係づくりから
地域での実績がない外部のNGOが、教員の低意欲という根本的な問題を指摘するのは困難であり、すべきでもない。CanDoでは、教材配布や教室建設・補修などの協力事業を通じて、地域との関係づくりを進めた。それらの事業成果を地元関係者と評価する過程で初めて、意欲の問題を共有することができた。

2.昇給目当てではない動機づけ
教員の意欲を持続的に高めるために、「意欲向上」研修では、昇給や賞罰などの外的な動機づけではなく、教員自身の内的な理由による意欲向上(内在化)が重要である点を共有し、対策を参加教員同士で議論する。
内在化を進めるきっかけとして、「環境教育」研修の実施や、地域の理科教員が理科教育推進のために意見・情報を交換し合う理科教員フォーラムの設立・育成を進めている。

3.保護者・校長・教員が話し合う場を設ける
従来、一般教員と保護者が話し合う機会がなかった。
授業参観や保護者会などは行われず、保護者が学校(特に校長)と従属関係にあると推察される(CanDoの教室建設事業の事例参照)。そこで、教員対象の研修に、保護者の参加を促し、両者が対等に学校の問題を話し合う場を提供している。2002年9~10月のケニア全土の教員ストライキの中、他の地域では、保護者が学校や教員組合と話し合って、学校閉鎖を解除させた例もあり、保護者と学校の関係改善が果たしうる役割は注目に値する。

(執筆:國枝信宏)
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