※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations)
ASPBでは、子どもの情緒面の発達を促すものとして、1995年よりラオスでの紙芝居の普及を図ってきた。紙芝居づくりのワークショップを繰り返し行い、児童館タイプの施設や幼稚園、小学校などでの活用を進めてきた。
2003年2月には、ラオス教育省とラオスのNGO的団体(ラオスは国内NGOを作ることは認められていない)のPADECTとの連携で、紙芝居の「創作」のコンクールおよび、「演じ方」のコンクールを開催した。首都ヴィエンチャンほか3県から、小中学生、高校生、大学生、小学校教員など100点近くの作品が寄せられた。
教育省は、小学校で、毎日最後の授業を「特活」の時間として設けている。読書や紙芝居などにも積極的に活用されている。教育現場では、紙芝居や絵本などを授業に取り入れたことに対し、「子どもが授業を楽しみにするようになった」「衛生など生活の指導に、子どもの理解がよくなった」「子どもが人の前で話をする勇気が持てるようになった」との声が上がり、ドロップアウト率を低くする一助となっていると評価されている。
<ポイントとなる事柄>
1.子どもにも先生にも、楽しい教材
従来からの授業のやり方といえば、先生が子どもたちに教科書を書き写させ、暗唱させるばかりだった。授業を受ける身には退屈でつらい。教える側も意欲的にはなりにくい。
紙芝居はコミュニケーションのメディアである。絵を使ったストーリーとともにメッセージを伝える機能を持っている。何よりも、教える側にも楽しく、子どもが自分の話に集中してくれることが教員としての自信につながる。子どもにとっては、こわい先生が親しめる先生に変わる。それがドロップアウト率を下げる一因となる。
2.普及には時間、連携が浸透のカギ
しかし、普及には時間がかかる。ASPBでは94年に児童館タイプの施設の開設を支援し、そこを中心に紙芝居の普及を目指してきた。日本から専門家を派遣し、ワークショップを開催すると、その時は非常に盛り上がるものの、その後の自主的な制作はほとんど見られなかった。小学校の図書室にも配布したが、十分に活用されているとはいえなかった。
ここにきて普及が目に見えるようになったのは、ASPBが児童館での紙芝居づくりのワークショップに力を入れ、PADECTは村々を演じて周り、小学校での普及セミナーを行ってきたこと。サヤブリ県では児童館(情報文化省)と小学校(教育省)が手を携え、それによって紙芝居の浸透が進み、他の地域に刺激を与えたこと、など連携が功を奏したためといえるようだ。
3.コピーとオリジナル
紙芝居を普及する上で問題となったことがある。他の作品の模倣やコピーが行われたことだ。ASPBは、著作権について説明し、注意を促した。コンクールでも模倣と見られる作品もあった。しかし、子どもの応募作は、日常生活の中での発見などオリジナリティある作品が次々と登場した。これからが楽しみだ。
4.専門家のアドバイス、現地のニーズ
紙芝居に対する考え方として、日本の専門家は絵の表現力とエンターテイメント性を重視した。ラオス側は教材としての機能性と、メッセージ性を重視した。両者の意見がぶつかりあい、語り合う中で、質が高められてきたといえる。
(執筆:森透)