ODAとは? 国際協力とNGO(非政府組織)

事例3 住民と既設校を増改築
学校建設シャンティ国際ボランティア会(SVA)

※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations


元々、住民の寄付で建設を行う村立小学校が多いのがカンボジア。SVAでは、校舎建設のみに終わらず、建設後、就学率向上、学校維持管理状態の向上を含めた学校運営が行われる事業を目指し、「住民参加型」学校建設事業に取り組んでいる。
新たな学校を新設するのではなく、すでにある学校の校舎の増改築が対象だ。
事業を進めるにあたっては、「学校建設委員会」という住民組織が中心となり、事業全般を管理する。
SVAは、調査、設計、建設費と学校備品(家具、文具)の供与、そして入札による業者選択、建設のモニタリング指導、事業後の評価を行う。

SVA事業実施関係組織図
【対象校発掘】
●現地調査
対象校がある州教育局から校舎のニーズ、他団体の支援状況等の情報を得た後、直に調査票を使った現地調査を実施して行う。対象州はSVA図書館事業課の対象地から選択することで、「点」ではなく「面」による両事業のインプットが可能となる。

●寺委員会との連携で住民参加
調査では、通常、すでにある学校建設委員会に加え、仏教寺院の寺委員会という住民組織の連携を仰ぐことを前提に住民と話し合い、その能力を判断する。寺委員会は、行政組織以外に伝統的に寺の行事で寄付を募り、住民を動員した地域事業を取り仕切っていることが多く、学校建設に取り組んでもらうことが重要な点となる。

【合意形成】
●責任分担の確認
事業実施における住民側の希望、疑問に答えながら、住民達の能力を鑑みた話し合いを持って、責任分担を確認する。

【建設】
●工事を住民がチェック
建設は業者が行い、SVAは建設指導を行うが、常駐しているわけではないので、SVAスタッフは住民にも作業や資材の質について、チェックポイントを指導するため、完工までの住民の役割は重要なものとなる。

【建設後】
●維持管理、生徒の意識調査
事後評価を年1回2年間行い、維持管理状況の確認、指導、生徒の意識調査などを実施する。
建設作業中に実施することもあるが、校舎と同時に設置するトイレの使い方研修会を、教員、生徒対象に実施し、その管理、使用方法など維持管理への配慮を行っている。

●支援者の視察、図書館員モニタリング
日本の支援者の視察を兼ね、住民主催の贈呈式が実施される。クラスター中心校の場合、SVA図書館事業課による図書館員モニタリングを兼ねた情報把握を行う。


<ポイントとなる事柄>

1.住民参加の試行錯誤
事業手法の中心となる「住民参加」の定義は、状況に応じて変更している。
例えば、参加の一項目として、過多な住民負担(労賃全額)を強いたことにより、住民の寄付金不足により支払いの遅延が起きたり、住民と建設労働者の関係が悪くなったり、事業後に学校建設委員会が、寺委員会へ返済見通しの無い負債を抱えてしまった例が見られた。
また、校舎建設ニーズが高くても、住民側が負担を嫌い、たとえ希望の建築様式でなくても、全額支援を行う他団体の支援を選ぶ例も見られた。
SVAでは、地域の活動のために1年間に、複数の募金活動が行われている場合が多いという地域の事情を把握した。そして事業目標を重視するために、住民が負担を感じずに貢献できる負担額を再設定し、現金でなく労働力による貢献に代替できる方法に変更した。
特に建設中は住民と、学校運営、維持管理を話し合う好機である。手法の改善後、学校建設委員会は、集金の心配のみに集中せず、事業管理に集中できる結果となり、事業は改善されている。

2.建築様式
気候や電気が通らない地域であるといった条件に配慮。窓が大きく、採光性や通気性に優れ、大きく伸びたひさしの下をミニベランダにして、雨季に子どもたちが遊べる空間を作るなど、快適な学習環境実現を図っている。
維持管理の観点から、できるだけ地元でも調達可能な資材を使用している。伝統文化にも配慮し、屋根にカンボジア伝統の装飾を付けているなどのこだわりがある。
建築の効率化、廉価化など狙って提案された他団体の建築基準や住民の希望も取入れながら、設計を行っている。

3.住民との関係づくり
「住民の希望を取入れた事業を実施する」とはいえ、SVA側のリソースが限られており、事業ごとに完全に柔軟な対応はできないのが現実である。そこで、特に重視しているのは、地域に応じたリーダーシップ構造を把握したアプローチをし、住民が事業の内容、役割分担を理解することとしている。「他団体と異なり、SVA支援の事業は、わかりやすい」という反応を得ており、住民との関係を構築している。

(執筆:伊藤解子)
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