ODAとは? 国際協力とNGO(非政府組織)

事例1 保護者が力をつけていくために
教室建設・補修事業アフリカ地域開発市民の会(CanDo)

※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations


■教室建設は「箱モノづくり」としてではなく

地域開発の一要素として教育協力を実施しているCanDoは、ケニアの村落地域の小学校への教室建設支援において、教室というハード面の充実を、住民参加によって進めつつ、その過程で保護者のエンパワメントを実現することを主眼に置いている。

■ケニアの学校は、給与以外は保護者が負担

ケニアの教育制度では、教室建設や補修の費用など、政府派遣教員の給与以外は全て保護者が負担する。そのため、貧困化が深刻な村落地域の小学校では、屋外や脆弱な仮小屋での授業が珍しくない。一方、保護者で構成される学校委員会は、学校の運営主体であるが、保護者が校長に従属することで形骸化している場合が多い。
CanDoでは、これらを念頭に、およそ次のような手順で建設事業を実施している。

【事前調査】
●協力対象地域の選定
地域内での全般的なニーズ調査を実施する。

【協力対象校の発掘・合意形成】
●優先順位をつける
学校から協力要請を受け付ける。CanDoと行政が話し合い、協力対象候補校の優先順位をつける(基準:ニーズ、実施能力)。
●学校への訪問調査
●工事作業の詳細説明と合意形成
協力対象候補校に対し、学校委員会役員会・学校委員会・保護者総会の順に作業工程並びに必要な現地調達資材の量についての詳細説明を行い、作業計画及び資材管理における責任分担に関する合意を形成する。

【着工】
●職人の技術レベルの確認
建設工事の開始に先立ち、住民による現地調達可能な資材の収集とレンガ製作およびCanDo専門家による現地の建設職人の技術レベルの確認を行う。
●作業の進捗状況をチェック
CanDoと行政が共同で作業の進捗状況をモニタリングする。

【竣工後】
●学校による教室完成式を開催
●各校における評価
建設事業の評価、および建設職人の技術レベルの再評価を行う。


住民参加型教室建設における役割・費用の分担


役割分担 地域住民(学校委員会)側 NGO(CanDo)側
建設資材
現地で調達可能な資材(レンガ、砂、砂利、石、水)の提供
一部の建設資材購入資金の調達
在庫台帳等による管理の責任
その他の建設資材(セメント、トタン、材木、その他)の購入、提供
建設道具の貸与
資材運搬
CanDo倉庫から学校までの運搬
購入先からCanDo倉庫(地域の拠点に数ヶ所)までの運搬、保管
学校へのリヤカー貸与
建設職人
建設職人の雇用・監督
単純労働の提供
ケニア人建設専門家の派遣による現場監督及び技術指導


<ポイントとなる事柄>

1.学校委員会による資材管理
支援開始に先立ち、学校委員会との話し合いで、資材管理における校長と保護者の共同責任についての理解を徹底させる。
過去に支援対象校の一部で、資材の紛失・不正使用などが確認され、後日、CanDoからの指摘により資材を返却するケースが発生した。これは、校長が資材管理の権限を独占しているか、逆に、保護者が校長に依存して資材管理の責任を果たす意識が希薄であるなど、学校委員会が形骸化していたことが原因と推察された。
以後、行政官による指導に加え、新たに資材管理の責任を担う保護者代表を選出するなど保護者のエンパワメントにつながる予防策を講じている。

2.再現可能性
CanDoが派遣するケニア人建設専門家から現地の職人へ、実地研修(OJT)と建設マニュアルを通して技術移転を行う。
同様に、住民および教員へ、基礎的な建設技術と施工管理技術の移転もめざす。
建設業者に頼らない住民主体の作業のため、完成までに時間はかかる。そのかわり、移転される技術のレベルは、現地調達が可能な資材を最大限に活用した低コストの教室建設でありながら、60年程度の耐用年数を実現する。
建設事業の開始から3年ほど経過した最近では、CanDoの事業を通して技能を高めた職人が他校での建設事業の現場監督を務めるなど、着実に技術移転が進みつつある。

(執筆:國枝信宏)
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