※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations)
JNNE(教育協力NGOネットワーク)研究会の2年目は、「NGOの教育協力のガイドライン」づくりを試みました。
■なぜガイドライン?
教育協力を行うNGOの活動は、ある社会と、あるいはその社会の公教育との関わりを深める中で、質と責任ある仕事が求められています。
ボランティア精神と「思い」、アイデアとともに始まった活動が、プロジェクトとして進展し、規模も拡大する中で、現在、どういった質を持ち、その社会に対して、どのような位置にあるのか、その社会の発展にどう貢献するのか。あらためて冷静な目で相対化をしていく作業が求められています。これをどこまで自覚的に行うのか、それぞれの団体に問われています。
こうした作業を進めることは、世界のすべての人が基礎教育を受けられることをめざす国際的取り組みであるEFA(
Education For All)の達成に向けたNGOの役割を確かめ、さらには新たな可能性を見出していくプロセスでもあります。
そのための手がかりとして活用できるものをめざしたのが、昨年から試みている「教育協力のチェックリスト」であり、今回作成した「教育協力のガイドライン」です。
■2つの視点
「ガイドライン」の視点は2つ。「よりよい教育のため」と「よりよい協力のあり方」です。
前者は教育を受ける主体(主に子ども)に対して何をするのがよいのかを追求し、後者は教育を行う主体(学校、行政、保護者、社会など)に対して、どのような関わり方をするのがよいのか問うもの、であるともいえます。これらの2つは、車の両輪に例えられるかも知れません。
「事業の質を上げるために専門能力・技術を高めよ」と言われることがあります。もちろんそれは重要ですが、求められていることの、一つの要素です。現場の現実に対して、どういう姿勢で臨むのか。専門技術は、どういう目的で、どういう筋道を立てて使うのか、にこそ配慮すべきだからです。
■「よりよい協力のあり方」
なぜならば、私たちNGOは教育協力をするのであり、直接教育を担う主体という立場にはないからです。教育は、もちろん、その社会に生きる人々がする仕事です。
支援/援助のプロジェクトにおいて、ややもすると、用意した資源の投入に懸命になり、主体が誰なのかを忘れてしまう危険があります。こうした一方的投入に対して批判を加え、人々の立場に立って活動することを、NGOが標榜しながらも、そこに陥る可能性は、つねにつきまといます。「オーナーシップ」「参加型」といった言葉は、ときとして影の主役をカモフラージュする役割を果たします。「よりよい協力のあり方」を探ることは研究会の大きなテーマであり、それを明確にすることが、「協力者」のガイドラインづくりの考え方だと理解しています。
■なぜ学校
このガイドラインは、事例と研究会メンバーの実践経験から導き出したものです。より多くの事例と豊富な経験を反映させることによって、バージョンアップを図っていくことができます。
「学校教育編」としたのは、研究会メンバー団体の他、多くの日本のNGOが、学校建設など学校そのものに関わる事業を行っているというのが大きな理由です。
「教室の中・学校の外」と題したのは、「校舎を建てれば、それでいいのか」という問題意識があったからです。校舎を建てるだけでなく、教室の中で日々行われている授業、学校の外から教育を支える地域社会などに注目した協力をしてこそ、EFA達成に向けて前進できる。このことを私たちはあらためて確認しました。
■取り組みの成果
今年度の研究会の成果は、ガイドライン作りや各機関との経験交流を通じ、自らの活動を相対化し、広い視野から捉え直すことができたことです。地域開発の中で教育がどのような位置にあるのか、自団体の教育協力事業が、その地域(国)の中でどのような意味を持つのか、EFAの取り組みの中ではどうなのか、という視点を養うことができました。それは、地域に根ざすことにアイデンティティと使命を持つNGOとしての認識を再確認したことでもあります。こうした立場から、今後、あるべき教育協力、EFAに向けて提言につなげていきたいと考えています。
2003年3月
教育協力NGOネットワーク(JNNE)
教育協力研究会チーフコーディネーター
森 透