ODAとは? ODA改革

戦略的・効果的な援助の実施に向けて
-「見える化」の徹底とPDCAサイクルの強化-

平成23年1月

戦略的・効果的な援助の実施に向けて

 昨年6月に発表した「ODAのあり方に関する検討最終とりまとめ」においては,援助案件の評価結果も含め「見える化」を徹底するとともに,案件形成,実施,評価,改善というPDCAサイクルにおいて,第三者の関与を得ることで,ODAの説明責任の向上を図ることとした。
今般,「最終とりまとめ」にある事項を着実にフォローアップするため,(I)PDCAサイクルの抜本的な強化(II)プログラム・アプローチの強化(III)「見える化」の徹底を具体的に実施していくこととする。
この中で,過去に実施された案件も含めて,資金協力案件の現状について外務省・JICAが精査した上で,各案件の具体的達成状況とそこから得られた教訓を,「見える化」作業の一貫として公表する。さらに,ODAに対する意見や情報等を,外務省ウェブサイト「ODAに関するご意見・ご質問」やJICAウェブサイトで受け付ける。

(I)PDCAサイクルの強化
案件計画段階において,援助の重点分野や方針を一層明確にするため,国別援助方針を簡潔で戦略性の高いものに改編する。また案件形成段階においては,適正な案件形成を確保するため,「開発協力適正会議」を設置し有識者やNGO等第三者の関与を得る。さらに評価段階においても,第三者の関与を検討し,失敗事例・成功事例双方から教訓を導き出し,教訓を将来に活かすためのフィードバックを強化する。

(II)プログラム・アプローチの強化
途上国との政策協議に基づいて設定した開発課題とその解決のためのプログラム目標に従って,体系的にプロジェクトを形成することで,プロジェクト間の相乗効果,ひいては援助全体の成果の向上を図る。

(III)「見える化」の徹底
各プログラム又はプロジェクトで期待する具体的な成果指標を事業実施決定の公表の際に明示・公表するとともに,事業の完了時には完了報告を公表し,さらに3年後を目処に事後評価を行い,成果の達成状況を公表する(「見える化」)。

(I)PDCAサイクルの強化:無償・有償案件のPDCAサイクル強化策

1 PDCAサイクルの各段階における強化策
  • 図
2 「見える化」の着実な実施

(1)実施中及び今後の実施案件
⇒ 平成24年度末までに全ての実施中案件(無償案件についてはJICA実施分)をJICAホームページ上に掲載予定。

(2)過去の案件の遡り掲載
⇒ 平成22年から過去10年程度に完了した無償・有償案件(事後評価実施済み案件)につき,平成25年度末までに掲載を完了予定。

(I)PDCAサイクルの強化:草の根・人間の安全保障無償強化策

1 よりきめ細やかな実施のための強化策
  • 図
2 供与限度額引き上げの検討

(1)細やかな実施のために外部監査の強化,技術協力部分(ソフトコンポーネント)の一層の充実等追加的費用が必要

(2)フォローアップ費の計上

(I)PDCAサイクルの強化:国別援助方針 制度見直しのポイント

1 国別援助方針とは

 被援助国の政治・経済・社会情勢を踏まえ,当該国の開発計画,開発上の課題等を勘案して策定した国別の我が国の援助方針。

 ODAの戦略性・効率性・透明性向上に向けた取組の一環として,平成11年以降,現在までに28ヵ国について策定。

 ODA大綱,ODA中期政策の下に位置づけられ,具体的な案件策定の指針となるとともに,我が国の援助方針を国内外に発信する役割を担う。5年を目途に改訂を想定。

  • 図

 事業展開計画は,被援助国において実施中の個別ODA案件を援助重点分野,開発課題,協力プログラム毎に位置づけて一覧したもの。

(主な内容)
  • 当該国の開発の現状と課題,開発計画
  • 当該国に対する我が国経済協力の意義
  • 我が国経済協力の方向性,重点分野,課題
  • 援助実施に当たっての留意点
2 「ODAのあり方に関する検討」を踏まえた制度見直しの方向性

 岡田前大臣の下で発表した「ODAのあり方に関する検討最終とりまとめ」(平成22年6月29日)において,戦略的・効果的な援助を実施するために援助の方向性を明確化するとの観点から,国別援助計画の制度見直しの方向性として以下の点を示した。

国別援助計画の制度見直し

  • 簡潔で戦略性の高いものに改編
  • 国別援助方針に名称を変更
  • 原則としてすべてのODA対象国について策定
  • 内容及び策定プロセスの簡素化・合理化
  • 国別援助計画と事業展開計画を統合

→上記方針に沿って,今後3年を目処に策定予定。

(I)PDCAサイクルの強化:「開発協力適正会議」の設置について

1 趣旨・目的

 無償資金協力に加え,有償資金協力及び技術協力を含むODA事業に関して,関係分野に知見を有する外部の専門家と意見交換を行うことを通じて,事業のより一層の効果的な実施と透明性の向上を図ることを目的として設置。

2 これまでの無償資金協力実施適正会議との相違
  • 図
3 構成員及び選定方法

 外務省及びJICA関係者を除き,NGOを含めた,財界・経済界,学界,言論界等からの専門家を選定予定。

(I)PDCAサイクルの強化:評価の強化(措置状況及び今後の方針)

【背景】
  • 平成22年6月に発表した「ODAのあり方に関する検討最終とりまとめ」・・・評価体制の強化,過去の成功例・失敗例から確実に教訓を学び取るための仕組み,評価の見える化を提言。
  • 平成22年6月のOECD・DAC対日援助審査報告書が評価の独立性の確保,評価結果のフォローアップ体制の確立を勧告。また,事業仕分けでも評価の徹底につき指摘。

【外務省の取組】

(1)体制強化

  • ODA評価を国際協力局から独立,大臣官房へ移管予定(平成23年4月~)
  • 評価・広報室長に外部の専門家を登用(平成23年1月~)
(2)ODA評価データベースを導入し,ODA評価の教訓を案件形成等に更に活用(平成23年度中)。


【JICAの取組】

(1)重点的な評価

  • 全てのプロジェクトを万遍なく評価しようとするこれまでの方針を改め,教訓を得られそうな案件に絞った上で,詳細な評価を重点的に実施する。(平成22年度分評価対象案件より適用)

(2)評価結果のデータベース化

  • JICAホームページの「事業評価案件検索」を作成,公開済。(平成22年度9月末)

(3)評価の見える化

  • 平成22年10月~ 「ODA見える化」サイトにて,個別プロジェクトの評価結果を掲載。今後,同サイトへの掲載プロジェクトを増加予定。
  • 図

(II)プログラム・アプローチの強化

1 背景・理念

 我が国の経済・財政状況が厳しい中,幅広い国民の理解を得てODAを実施していくためには,戦略的かつ効果的に援助を実施していく必要がある。

  • 現在のアプローチ:プロジェクト毎の要請に基づき個別案件を中心に援助実施を検討
  • プログラム・アプローチへの移行・強化:
    援助ニーズの詳細な分析,途上国との政策協議等に基づいて開発課題とその解決に向けたプログラム目標を設定し,その実現に資するための具体的なプロジェクトを導き出していく

    →「援助効果の最大化」:プログラムに従って体系的にプロジェクトを形成する(無償・有償,技協等の援助手法を有機的に組み合わせる)ことで,プロジェクト間の相乗効果を上げ,全体としての成果の向上を図る。
    →「説明責任の向上」:政策的意図・援助効果等について,より体系的に説明責任を果たす。
  • 図
2 作業スケジュール
  • 数カ国についてパイロット・プログラムを選定し,試行的に着手する。
  • 具体的には,国別の分析を踏まえて途上国との間で十分協議し,開発計画に則った形で,プログラム目標を設定する(必要に応じ,プログラムの形成に向けた調査を実施。)。
  • 将来的には,プログラム化して絞り込んだ開発課題の解決に向け,重点的,積極的に援助リソースを配分していく。
3 留意点
  • これまでの援助重点分野,開発課題等は新しいプログラムと併存する形で今後とも存続する。
  • プログラム策定に際しては,相手国の開発ニーズ,債務持続性及びプライオリティ等を十分に見極める。

(注)イメージの例:○○国「コメ増産プログラム」
開発課題:不安定な農業生産,農業の商業化・近代化の遅れが経済成長の妨げに。
プログラム目標:XX年までのコメ生産増Y%達成

図

(注)本件プログラムは,既存の援助重点分野『農業開発』に合致。

4 パイロット・プログラム

 今後も継続して支援すべき国・重点分野であること,成果指標の測定がある程度可能と考えられること,地域バランス等を踏まえ,まずは以下の国についてパイロット・プログラムの策定を目指す。

  • インドネシア「ジャカルタ首都圏投資促進のための運輸交通環境整備プログラム」
     運輸・交通能力が飽和状態にあるジャカルタ首都圏において,運輸・交通・物流の関連インフラ整備及び効率化を通じて,同地域の投資環境・ビジネス環境の改善を目指すもの。
  • ガーナ「アッパーウエスト州母子保健システム強化プログラム」
     我が国が重点的に支援を実施しているアッパーウエスト州における母子保健環境の改善を目指すもの。
  • タンザニア「コメ生産能力強化プログラム」
     我が国も主要ドナーとして援助協調を進めている同国において,特に不安定な生産能力に悩む農業分野に着目し,コメ生産力の増強を目指すもの。
  • バングラデシュ「基礎教育内容向上プログラム」
     就学率が向上している一方で,修了率の低さ(中途退学率や留年率の高さ)が問題となっている同国において,教育の質を向上させることによって,初等教育の修了率向上を目指すもの。
  • ラオス「電力整備プログラム」

     水力開発のポテンシャルが高いにもかかわらず国内の電力供給力不足及び低い電化率に悩む同国において,安全かつ安定的な電力供給の拡大を目指すもの。電化率の向上,停電時間の減少等の指標をプログラム目標に据える。

    (注)今回選定したパイロット・プログラムについても,今後,詳細を精査していく過程で見直しの可能性もあり得る。

     

(III)「見える化」の徹底:ODA見える化サイト概要

【背景】平成22年6月に発表した「ODAのあり方に関する検討 最終とりまとめ」において,ODAへの国民の理解と支持を促進していくための広報のあり方として,「すべてのODA資金協力プロジェクトの現状・成果等を体系的に可視化するためのウェブサイト(HP)の立ち上げ」を通じて情報開示を強化することとされた。これを受け,10月1日にJICAのホームページ上(外務省ODA・HPから直接リンク)に暫定版のODA見える化サイトを立ち上げた

 

  • 図
  • 画像

 

《今後の予定》

  • 開発効果が十分に発現している案件」等につき外務省HPに掲載の上,本見える化サイトにリンク。
  • 平成23年4月・・・正式サイトの立ち上げ(掲載件数:約100件)
  • 実施中及び今後の実施案件平成24年度までに全ての実施中案件を順次掲載予定。
  • 過去の案件の遡り掲載・・・過去10年程度に完了した無償・有償案件も平成25年度末までに順次掲載予定。

(III)「見える化」の徹底:ODA「見える化」の取り組み強化
・無償資金協力,有償資金協力,草の根・人間の安全保障無償資金協力

  • ODAの「見える化」の徹底及び教訓反映の強化の観点から,資金協力案件につき,概ね過去10年間に完了した案件を中心に改めて精査した。
  • 対象案件は,無償資金協力1,060件,有償資金協力1,102件,草の根・人間の安全保障無償資金協力5,335件で,96%以上の案件で想定された効果が発現している。
  • 図
  • 効果が発現している案件(注)のうち,代表例は別添1の通り。
    (注)外務省が国際基準を踏まえ評価を実施し,想定された効果が現時点で概ね発現している無償資金協力案件
    JICAが国際基準を踏まえ評価を実施し,想定された効果が現時点で概ね発現している有償資金協力案件
    在外公館がフォローアップ等を実施し,想定された効果が現時点で概ね発現している草の根・人間の安全保障無償資金協力案件
  • かつて改善すべき点があったが,現在は効果が発現・外部からの指摘事項が改善している案件は別添2の通り。
  • 改善すべき点などがある案件については別添3の通り。我が国の資金協力事業は,被援助国政府等の行う事業への資金の供与(贈与または貸与)であり,事業の完遂及びその後の適正かつ効率的な使用や維持・管理については,先方が責任を持って行うこととなっている。

(なお,別添1~3は,事後評価や会計検査の結果,並びに外務省・JICAが把握できる範囲で調査した情報に基づき作成したものであり,今後新たな事実が判明した場合には変更があり得る。)

本資料別添リスト(以下「見える化リスト」という。)は,下記1 及び2 のリンク先のページに最新版を掲載していますので,御確認ください。

なお,「見える化リスト」は,2014年7月に,JICAホームページの「見える化サイト」に統合しましたので,「見える化リスト」のうち下記1 に記載の事業については,JICAホームページ上の「見える化サイト」個別案件ページを,下記2 に記載の事業(JICAが関与していないもの)については外務省ホームページを,それぞれ御確認ください。

1 JICAホームページ「ODA見える化サイト別ウィンドウで開く
- 有償資金協力
- 無償資金協力(プロジェクト型の施設建設・機材調達等)
- 技術協力

2 外務省ホームページ
草の根・人間の安全保障無償資金協力

(III)「見える化」の徹底:ODA「見える化」の取り組み強化
・文化無償資金協力

  • ODAの「見える化」の徹底及び教訓反映の強化の観点から,文化無償資金協力案件についても,無償資金協力案件及び草の根・人間の安全保障資金協力案件と同様の精査を行った。
  • 対象案件は,一般文化無償資金協力530件,草の根文化無償資金協力185件で,97%以上の案件で効果が発現している。

 

  • 図

 

  • 効果が発現している案件(注)のうち,代表例は別添4の通り。
    • (注)外務省がフォローアップ等を実施し,想定された効果が現時点で概ね発現している案件
  • かつて改善すべき点があったが,現在は効果が発現・外部からの指摘事項が改善している案件,改善すべき点などがある案件については別添5の通り。

(なお別添4~5は,外務省が把握できる範囲で調査した情報に基づき作成したものであり,今後新たな事実が判明した場合には変更があり得る。)

本資料別添リスト(以下「見える化リスト」という。)のうち,文化に関する無償資金協力(JICAが関与していないもの)については,以下のリンク先のページに最新版を掲載していますので,御確認ください。

文化に関する無償資金協力(一般文化無償資金協力/草の根文化無償資金協力)

(III)開発効果の発現の分析と教訓例

  • 図


本資料別添リスト(以下「見える化リスト」という。)は,下記1 及び2 のリンク先のページに最新版を掲載していますので,御確認ください。

なお,「見える化リスト」は,2014年7月に,JICAホームページの「見える化サイト」に統合しましたので,「見える化リスト」のうち下記1 に記載の事業については,JICAホームページ上の「見える化サイト」個別案件ページを,下記2 に記載の事業(JICAが関与していないもの)については外務省ホームページを,それぞれ御確認ください。

1 JICAホームページ「ODA見える化サイト別ウィンドウで開く
- 有償資金協力
- 無償資金協力(プロジェクト型の施設建設・機材調達等)
- 技術協力

2 外務省ホームページ
草の根・人間の安全保障無償資金協力
文化に関する無償資金協力(一般文化無償資金協力/草の根文化無償資金協力)



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