ODAとは? ODA評価

第3回ODA評価東京ワークショップ最終報告書

3. 第2セッション


議題2 A: 合同評価1

第1分科会
「アジアにおける合同モニタリング・評価の課題-国・セクター・レベルの取り組み-」


牟田博光
東京工業大学教授

 ODA評価の目的は、ドナー国と援助受入国の双方において説明責任と透明性を確保することであり、また、パフォーマンス管理を支援する役割も果たしている。

 ODAの質を向上するには、事後評価に加え、実施中の評価や事前評価が不可欠である。ODA評価はこれまで主としてドナーによって実施されてきたが、現在は国レベル、セクター・レベルの合同モニタリング・評価が重要となっており、結果が更に重視されている。

 個別プロジェクトからセクター・レベルへの移行という傾向があるが、方法論に関して言うと、どのアウトプットやプロジェクトがプログラムやセクター・レベルでの目標達成に有効だったのかを特定するのは困難である。従って、セクター・レベルあるいは全国レベルでのターゲットを明確にすべきであり、データの効果的な収集、フィードバック方法についても明らかにされる必要がある。

ダニエル・カメルガーン
フランス経済財政産業省 開発評価室室長

 カメルガーン室長より、2003年3月にパリで開催されたワークショップ「開発評価のパートナー」の成果について報告があった。右ワークショップの主な議題は、(1)地域に合わせた評価方法、(2)現在の問題・課題、(3)説明責任、(4)協調と評価能力の向上、であった。

 このワークショップの最後に、「相互主義」と「パートナーシップ」をキーワードに協調と評価能力の改善に関する議論が行われたが、評価の対象を援助から開発に移す時が来ていると考えられる。

 このワークショップから、主に(1)対話への意思が共有されたこと、(2)相互主義とパートナーシップに対する要請があること、(3)援助を促進するための評価の役割、という3つの教訓が得られた。

ディスカッション

 第1分科会は、和田充広外務省経済協力局調査計画課長及びハンス・ルンドグレンOECD開発協力局審査・援助効果課評価担当主任が共同議長を務めた。

 タイのアモンチャウィン課長から、プログラム・レベルのインパクト評価に関する質問があった。これに対し、牟田教授は、現時点ではセクター・レベルやプログラム・レベルにおけるインパクトについて十分な検討が行われていないとの認識を示した。プログラム・レベルで最終目標を設定するためには体系的なプログラムを策定することが重要である。これは個別プロジェクトの検討にも影響を及ぼすものであり、現行のプロジェクトの中には必ずしもプログラム・レベルでの検討に合致していないものもあり得る。

 外務省の清原事務官より、外務省の評価活動について概要説明があった。さらに、和田課長より、外務省の評価活動は常に進展しているとの補足があった。

 和田課長は合同評価のフィードバックについて、果たして現在の方法で十分なのかと疑問を投げかけた。また、データ収集に関する問題、評価にかかる費用等も重要な論点であり、費用削減の方法を検討する必要がある。また、和田課長から参加者に対し、市民社会関与の問題についても検討するよう呼びかけがあった。

 フィリピンのサントス次官は、合同評価の方法論に関して改善の余地があり、方法論を策定するための更なる取り組みが必要であると述べた。

 インドのメホートラ局長は、プロジェクト・レベルで外部の開発支援提供者と合同でモニタリング・評価を実施することは適切かつ有益だが、国やプログラムのレベルでは、(1)外部のドナーの関与・参加、(2)援助受入国にプログラム・レベルでも合同評価を期待できるか、(3)ドナー間の調整、という三点を考慮する必要があると述べた。

 マレーシアのチア部長は、発展途上国がドナー国にも受け入れられる評価の枠組みを作り、その枠組みによって重複が避けられるなら、その方が望ましいと述べ、他の参加者にもこの点を検討するよう提案した。

 UNICEFのケネル室長は、日本がどの程度外部評価を活用しているのかを質問した。同課長は外部評価は内部評価に比べ大局的になる傾向がある反面、外部評価を通して既存の政府プロジェクトに異議を唱えることが可能であると指摘した。さらに、ケネル室長から、プロジェクトの有効性に関する国内での議論に対し、どのように外部評価を活用しているのか、質問があった。

 外務省の取り組みについて、清原事務官より、外務省では2001年に有識者委員会を設立し、同委員会の意見は外務省の実施部門に取り入れられているとの説明があった。

 牟田教授は「内部評価」対「外部評価」という問題に言及し、プロジェクトの担当者は当該プロジェクトに精通している一方で、独立評価を行う評価者はプロジェクトに関して限られた知識しか持っていないという問題点を指摘し、まず徹底的な内部評価を行い、その結果について独立評価を行うのが理想的であろうと述べた。評価の実践を通じて合同評価の方法論が形成される可能性もあるが、将来的には援助受入国自身が中心となって合同評価を実施するのが理想的である。

 ルンドグレン主任は、合同評価の要領はすでに作成されていること、基本的な評価基準の定義などについて掲載した用語集があり、この用語集は一般的に受け入れられていると指摘した。また、セクター毎の評価には、セクター独自の課題に対応した枠組みが必要であるという点も指摘された。

 フランスのカメルガーン室長は、パートナー国自身がセクターやプログラム・レベルで合同評価を実施することの重要性を強調した。

 世界銀行のチバー課長は、どこを出発点として合同評価を検討するのが最善なのかという問題を提起した。枠組みや方法論は合同評価にとって不可欠であるが、更にフィードバックの取り組み方について十分に検討するという合意が形成されるならば、それは今次ワークショップの重要な成果となるであろう。

 UNDPのメノン次期室長は、国レベルの評価については手続きや必要条件の違いが問題であるという点を強調した。また、DACの枠組みでさえ十分に活用されていないこと考慮すると、果たして途上国が評価の枠組みを作成することがどれだけ効果的なのか、検討の余地があると述べた。ローマ宣言の趣旨に照らせば、各国のリーダーシップの下で評価の枠組みが作成されるべきであり、今回のワークショップで、評価作業を前進させるような措置について事前の合意に至ることができるかもしれない、と述べた。また、合同モニタリング・評価の目的は、国レベルでのODA活動をそれぞれの状況に適合させることにある、と指摘した。

 JBICから、JBICは被援助国における援助の実施に際しては専門家の意見を取り入れており、またプログラム・レベルやセクター・レベルの評価を重視していると述べた。また、JBICは方法論の策定について柔軟な対応に努めており、評価活動を受け入れやすく、効率的なものにするためには柔軟性が重要であると述べ、この点は他の参加者も強調していた。また、市民社会が評価に関与する必要性についても発言があった。 

 UNICEFのケネル室長は、1960年代に開発援助が初めて実施された際、援助は第二次世界大戦終戦当時から存在した国別プログラムに基づいて行われていたが、次第に個々のプロジェクト・レベルまで細分化されてきたことを説明し、今後はプログラム及び国レベルに戻る必要があると述べた。また、途上国の「オーナーシップ」よりも「リーダーシップ」を強調すべきであり、各途上国が自国の援助計画や評価の方法論に関しリーダーシップを発揮すべきである、また、これまで評価は供給側のツールであったが、この状況を逆転させ、評価を需要側に移す必要がある、との見解を示した。

 フィリピンのサントス次官は、今後の課題は方法論の違いを解消する手段を見いだすことであり、そのためには、ドナー国と援助受入国が互いを対等なパートナーとして扱う必要があると述べた。

 マレーシアのチア部長は、JBICとの経験に鑑み、評価の要素はプログラムに組み込まれつつあると述べた。同部長はプロジェクト・レベルからプログラム・レベルへのスケール・アップの重要性を指摘した。

 タイのピブンソンクラーム局長は、ドナー国ではなく被援助国が作成した共通の枠組みによる合同評価のシステムを構築することが重要だと述べた。

 和田課長は参加者に謝意を述べ、このセッションを終了した。

第2分科会
「アジアにおける合同モニタリング・評価の課題-プロジェクト・レベルの取り組み」


グラハム・ウォルター
アジア開発銀行業務評価局課長

 ウォルター課長から、ODAプログラムのモニタリング・評価の重要性に関する説明があった。パフォーマンス管理とは、ODAプロジェクトの結果を評価することであり、パフォーマンス情報を活用すればパフォーマンスを向上させるための適切な決定を下すことができ、その利益は大きい。ADBにおいては資金拠出するプロジェクトの評価をプロジェクトの事前、実施中、事後の各段階で実施し、それらの評価結果をフィードバックして新たなプロジェクトに役立てている。モニタリング・評価に使うパフォーマンス評価の基準は、関連性、効果性、効率性、持続可能性、制度的発展性、その他のインパクトである。但し、モニタリング・評価に関しては、帰属の問題、期待される結果が不明確なこと、データ不足、合同評価システムの調整といった問題を検討する必要がある。更に、誰が合同評価に参加するのか、ADBシステムは他のシステムとどのように異なるのか、各国の国内ニーズを満たしながらの調整は可能か、業務コストを引き下げることができるのか、なども考慮すべき点である。

 JBICの松澤次長より、次のような説明があった。パートナー国がJBICのプロジェクト評価に参加する場合、まず、両者の間で事前審査とモニタリングを実施し、プロジェクト完工報告書を作成する。次にJBICとパートナーで事後評価を行い、その後、評価報告書の共有やセミナーの実施を通じてフィードバックを行う。この段階でのパートナー国の役割は、提言のフォローアップを行い、それを受益者に対して周知することである。

 JICAの富本次長は、JICAが独立行政法人となったことを紹介し、これにより透明性の向上と結果重視型組織への転換が求められていると述べた。JICAは過去30年間にわたり、様々なタイプの評価を行ってきたが、常にパートナー国のオーナーシップを尊重するとの原則の下に、パートナー国と共に合同評価を行ってきた。JICAは技術支援の提供を通してキャパシティ・ビルディングを推進し持続可能性を重視している。またJICAは、その他のパートナーとの共同作業を進めるための検討を始めたところである。JICAは組織の改編を通じて、プロジェクト評価アプローチを採用するに至った。

ディスカッション

 このセッションは、富本幾文JICA企画評価部次長及び松澤猛男JBICプロジェクト開発部次長が共同議長を務めた。

 松澤次長は議論を始めるにあたり、パートナーのキャパシティ、パートナーシップとオーナーシップ(誰が何を担当するか)、調整、結果重視型アプローチ(パートナーの目標に結びついたプロジェクトの目標)に関する参加者の意見を求めた。

 インドネシアのパンガリブアン課長は、インドネシアが2003年度に外部資金によるプロジェクトを1つも誘致できなかったのは、準備不足が一番の原因だったと述べた。更に、同課長から、ADBがどのような方法でプロジェクトの満足度を評価しているのかについて質問があった。これに対し、ADBのウォルター課長より、ADBもインドネシアのプロジェクト準備の問題は認識している、プロジェクトの成否を評価する際には実施パフォーマンスと開発目的の2つの分野が評価されるが、開発目的の分野でプロジェクトの成否が肯定的に評価される場合は少ないと説明した。

 ミャンマーのミン・テウン課長補佐は、ミャンマーの援助プロジェクトへの日本政府の支援に対し感謝の意を表明し、どのような市民社会組織がプロジェクト評価に関与すべきと考えるかについてADBに説明を求めた。中国の康炳建氏もADBのウォルター課長に対し、合同評価には基本的に誰が参加すべきかについて意見を求めた。

 これに対しウォルター課長は、市民社会は大きな集団であり、主要な利害関係者はすべて評価に参加してもらう必要があると述べた。富本次長は、日本のODAを批判する市民社会団体の数が増えていると指摘した。JBICはそのような状況を受けて、利害関係者がより効果的に参加できるようガイドラインの見直しを進め、同時に地元住民のプロジェクトへの参加を奨励していると述べた。

 フィリピンのマニュエル主任専門官は、特定のグループによって評価が仕切られてしまう傾向があると指摘し、公正な評価方法を採用すべきだと述べた。更に、一部の国ではカウンターパート資金の拠出に問題があると述べ、このような事態は合同評価の際も問題となるだろうとの考えを表明した。

 インドのマン課長補佐は、開発における結果重視型アプローチに対する支持を表明した。インドは、すべての支援について内部評価を実施した結果、二国間開発協力の受け入れを六カ国に制限する決定を下したが、これにより援助の調整と効率性の改善が見込まれる。インド政府は開発プロセスにおける市民社会団体(CSOs)の重要性を認識し、CSOs経由であれば、六カ国以外の二国間パートナーによる資金の投入を許可することを決定した。合同評価は発展途上のプロセスであり、様々な利害関係者が関与することは評価にとって貴重なインプットとなる。

 モンゴルのロドイダンブ課長補佐は、ドナー国が関連政府機関を評価グループに入れることを認めれば、より有益な評価が実施できると述べた。富本次長は、援助の引渡しについても簡素化する傾向があり、評価は足並みを揃え、調整しながら行わなければならない、と述べた。また、同次長は、キャパシティは極めて重要であることから、JICAは多くの研修支援を提供している、と述べた。

 スリランカのアラハコーネ課長は、ドナーの参加は国レベルよりプロジェクト・レベルではるかに目立つと指摘した。また、評価の枠組みを考案するに当たってはロジカル・フレームワークを採用すべきだと強調した。

 マレーシアのアブドラ課長は、ドナーの報告様式は様々だが、それを一本化する取り組みが行われなかった事実を認識しなければならないと述べた。パートナーによるオーナーシップに関しては、マレーシアはプロジェクト実施における市民社会の関与を求めてきたが、実際にはプロジェクトの大半は技術委員会のレベルで実施されていると述べた。

 ベトナムのヴー専門官は、ドナー諸国がベトナム支援を再開したのはこの10年のことであり、モニタリング・評価はプロジェクト・サイクルに不可欠な役割を果たしてはきたものの、いまだ不十分で更に拡充させる必要があると述べた。更に、ベトナム政府、ADB、JBIC及び世界銀行が調整を開始したことを報告した。

 バングラデシュのジャビウラ次官補は、合同評価には関係者間のギャップがつきものであり、共通理解を促進することによってこれを埋めることが課題であると指摘した。更に、パートナーの能力、パートナーシップとオーナーシップ、調整、結果重視というテーマは支持するが、話し合いの対象にならなかった分野でも政治的コミットメントは非常に重要だと付け加えた。

 第2分科会セッションの締めくくりとして、ADBのウォルター課長が各参加者の発言を確認し、引き続き富本次長が、今回がODA評価に関するワークショップの三度目に当たるが、今後具体的進展を達成するための包括的枠組みが形成されることを期待すると述べた。松澤次長はパートナーのキャパシティ、パートナーシップとオーナーシップ、調整、結果重視という観点から、参加者の議論を総括した。
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