2 地域機構
中南米地域にはラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)2、米州機構(OAS)3のほか、以下のような地域枠組みが存在し、様々な課題について政策調整を行っている。また、36か国から成るアジア中南米協力フォーラム(FEALAC)4もあり、2月には「防災・減災と科学技術の活用」をテーマにFEALAC諸国の若手行政官30人をオンラインで招へいしたほか、9月には5人の各国若手行政官を日本に招へいし、「脱炭素化と科学技術の活用」について意見交換を行った。
(1)太平洋同盟
チリ、コロンビア、メキシコ及びペルーから成る太平洋同盟は、現在エクアドル、コスタリカ及びホンジュラスとの間で正式加盟に向けた交渉を行っている。また、1月にコロンビアで開催された太平洋同盟首脳会合で、シンガポールの準加盟に向けた署名を行った。さらに、オーストラリアやカナダ、ニュージーランド、韓国の準加盟国入りに向けて交渉中である。
日本は、太平洋同盟のオブザーバー国であり、基本的価値を共有するグループとして、連携を重視している。11月にメキシコシティで開催された太平洋同盟関連会合では、林外務大臣がビデオメッセージで参加し、防災分野などにおける太平洋同盟との具体的な協力推進について発信した。
(2)南米南部共同市場(メルコスール:MERCOSUR)5
メルコスールは、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイから成る関税同盟であり、1995年1月から域内関税は一部の品目を除き原則として撤廃されている。2019年には、EU、欧州自由貿易連合(EFTA)との自由貿易協定(FTA)、2022年には、シンガポールとのFTAについて交渉妥結し、韓国、カナダなどとも交渉中である。なお、ベネズエラ6は加盟停止中、ボリビアは準加盟国7である。
(3)カリブ共同体(カリコム:CARICOM)8
カリコムは、カリブ地域の14か国による経済統合や外交政策の調整などを目的に設立され、国際場裡で協調行動を取ることで存在感を示している。カリコム諸国は比較的所得水準が高い国が多い一方、毎年のようにハリケーンによる甚大な被害を受けるなど、自然災害の脅威にさらされているほか、人口・経済規模の小ささから生じる小島嶼(しょ)国特有の脆(ぜい)弱性を抱えている。ハイチでは政情不安が続き、2021年の大統領暗殺に続き、武装集団(ギャング)による石油製品の流通妨害などもあり燃料不足や生活インフラの麻痺(ひ)が深刻化するなど、国内の混乱が続いている。
日本は、対カリコム協力の3本柱(小島嶼国特有の脆弱性克服を含む持続的発展に向けた協力、交流と友好の絆(きずな)の拡大と深化、国際社会の諸課題の解決に向けた協力)に基づいた外交を展開しており、所得水準の高い国に対しても各国の開発ニーズや負担能力に応じて必要な協力を行っている。例えば、2月には、水産業や観光業に深刻な影響を与えているサルガッサム海藻の被害対策として、カリコムに加盟する5か国に対する無償資金協力に署名した。
日本との関係では、外交関係樹立40周年を迎えたベリーズ及びアンティグア・バーブーダに、上杉謙太郎外務大臣政務官と秋本真利外務大臣政務官がそれぞれ訪問したほか、上杉政務官はトリニダード・トバゴも訪問、秋本政務官はジャマイカも訪問した。また、9月の国連総会において、カリコム議長国のスリナムと外相会談を実施するなど、二国間及びカリコムとの関係強化のための意見交換を行った。


2 CELAC:Comunidad de Estados Latinoamericanos y Caribeños(Community of Latin American and Caribbean States)
3 OAS:Organization of American States
4 FEALAC:Forum for East Asia-Latin America Cooperation
5 MERCOSUR:Mercado Común del Sur (Southern Common Market)
6 2021年12月時点加盟資格停止中
7 2012年12月加盟議定書に署名し、ブラジルの議会承認待ち
8 CARICOM:Caribbean Community (加盟国:アンティグア・バーブーダ、ガイアナ、グレナダ、ジャマイカ、スリナム、セントクリストファー・ネービス、セントビンセント及びグレナディーン諸島、セントルシア、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、ハイチ、バハマ、バルバドス、ベリーズ)