外交青書・白書
第2章 地域別に見た外交

第8節 アフリカ

1 概観

アフリカは、54か国に13億人を超える人口を擁し、高い潜在性と豊富な天然資源により国際社会の関心を集めている。

同時に、アフリカは平和と安定を脅かす紛争・政治的混乱、テロ・暴力的過激主義や、深刻な貧困・開発問題などの課題を依然として抱えている。アフリカにおけるこれらの課題の克服は、国際社会全体の平和と繁栄にとっても重要である。

2020年はアフリカにおいても、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の感染が拡大した。アフリカにおける新型コロナ感染者数は、2月にエジプトにおいて初の症例が確認されてから、緩やかなペースで増加した。その後、8月をピークとし、サブサハラ・アフリカを中心に新規感染者数の減少が見られたが、秋以降、一部の国で再び増加傾向に転じ、同年末以降、アフリカは第2波を迎えた。医療環境の整っていない国も多い中、アフリカにおける新型コロナは今後も深刻な課題であり続ける可能性が高い。

日本は、アフリカの「オーナーシップ(自助努力)」と国際社会との「パートナーシップ」を基本理念として、4半世紀を超える歴史を誇るアフリカ開発会議(TICAD)1を通じ、長年にわたり、アフリカの発展に貢献してきた。その際、日本は人間の安全保障の理念を踏まえた一人ひとりの保護と能力強化を重視した取組を行ってきている。

このような考え方の下、日本は、TICADを通じ、アフリカの保健・医療体制を中長期的に支える取組を実施してきた。これらの取組は、今般の新型コロナの感染拡大下において真価を発揮した。例えば、日本が設立を支援し、検査技師の育成に協力してきたガーナの野口記念医学研究所は、ガーナのPCR検査の最大約8割を担う新型コロナ対策の拠点となっている。

新型コロナの感染拡大がアフリカの経済・社会に甚大な影響を及ぼす中で、日本は、人間の安全保障の理念に立脚し、「誰の健康も取り残さない」という目標の下、アフリカでのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた支援を含め、様々な取組を重層的に進めた。主な具体的な取組としては、第一に、新型コロナへの対応能力の強化として、医療関連機材の整備支援や、医療従事者などの研修などを実施した。具体的には、新型コロナの感染拡大に対し、日本は、アフリカ54か国中48か国(2020年12月現在)において、二国間及び国際機関を通じ、各国の状況に応じた能力強化や保健・医療関連機材の供与などの支援を実施した。第二に、強靭(きょうじん)で包括的な保健・医療システムの構築として、例えばケニアでは中央医学研究所への支援を行い、ガーナでは母子手帳の普及のための人材育成を行っている。第三に、社会・経済面の諸課題への対応として、サバクトビバッタ、洪水などの被害やテロ・紛争の脅威によって難民・国内避難民となった人々に対する人道支援を行った。さらに、平和と安定の分野においては、2019年8月のTICAD7において日本が提唱した「アフリカの平和と安定に向けた新たなアプローチ(NAPSA)」の下、PKO訓練センターを通じた支援を含め、制度構築支援などを実施した。

第8回アフリカ開発会議(TICAD8)は2022年にチュニジアで開催予定である。アフリカにおいてTICADを開催するのは、2016年にTICADVIをケニアで開催して以来、2回目となる。日本は、次回のTICAD8を見据え、新型コロナの感染拡大が浮き彫りにした様々なアフリカの開発課題に積極的に取り組んでいく。

新型コロナの影響によって要人の往来が難しくなる中、茂木外務大臣は、2020年12月、TICAD8開催国であるチュニジア並びにインド洋に面する南東部アフリカ3か国のモザンビーク、南アフリカ及びモーリシャスへ外務大臣就任後初のアフリカ訪問を実現した。また、2021年1月にはセネガル及びケニアを訪れ、日本の外務大臣としては初めて、2か月間でアフリカ計6か国を訪問した。

日・モーリシャス外相会談(12月13日、モーリシャス・ヴァコア・フェニックス)
日・モーリシャス外相会談
(12月13日、モーリシャス・ヴァコア・フェニックス)
サル・セネガル大統領表敬(2021年1月11日、セネガル・ダカール)
サル・セネガル大統領表敬(2021年1月11日、セネガル・ダカール)

これらの訪問において、茂木外務大臣は、各国首脳や外相らと会談を行い、TICAD8に向けたアフリカの開発の推進、ポスト・コロナを見据えたビジネス関係の強化を確認するとともに、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」のビジョンの下での協力を進めていくことを確認した。茂木外務大臣の2回にわたるアフリカ訪問は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて、「包容力と力強さを兼ね備えた外交」をアフリカで実践し、日本がポスト・コロナの国際秩序形成においてリーダーシップを発揮していくための基盤を構築する訪問となった。

1 TICAD:Tokyo International Conference on African Development

このページのトップへ戻る
青書・白書・提言へ戻る