4 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の実施状況
ハーグ条約は、子の利益を最優先するという考えの下、国境を越えた子供の不法な連れ去りや留置をめぐる紛争に対応するための国際的な枠組みとして、子供を元の居住国に返還するための手続や国境を越えた親子の面会交流の実現のための締約国間の協力等について定めた条約である。
この条約は、日本については2014年4月1日に発効し、2018年12月末現在、日本を含め99か国がこの条約に加盟している。
条約は、各締約国の「中央当局」として指定された機関が相互に協力することにより実施されている。日本では外務省が中央当局として、様々な分野の専門家を結集し、外国中央当局との連絡・協力、子の所在特定、問題の友好的解決に向けた協議のあっせんなどの当事者に対する支援を行っている。
ハーグ条約発効後2018年12月末までの4年9か月間に、外務大臣は、子の返還を求める申請を197件、子との面会交流を求める申請を131件、計328件の申請を受け付けた。日本から外国への子の返還が求められた事案のうち、30件において子の返還が実現し、32件において返還しないとの結論に至った。外国から日本への子の返還が求められた事案については、32件において子の返還が実現し、19件において返還しないとの結論に至った。
2018年2月には、ハーグ条約の実施に携わる日本の関係者に専門的知見を習得する機会を提供するため、米国でのハーグ条約事案の裁判手続等に詳しい米国人弁護士を招へいし、講演会等を開催した。また、8月には子の連れ去り等を予防するための広報活動の一環として、ブラジル司法省の中央当局長を招へいし、在日ブラジル人及びその配偶者等を対象としたセミナーを国内4都市で実施するとともに、外務省や実務家との意見交換を行った。
返還援助申請 | 面会交流 援助申請 |
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日本に所在する子に関する申請 | 101 | 101 |
外国に所在する子に関する申請 | 96 | 30 |
このほかにも、在外公館と連携し、海外にて在留邦人向け啓発セミナーを積極的に実施しているほか、国内の地方自治体や関係機関等でのセミナー実施や多言語でのリーフレット配布などの広報活動に力を入れている。
また、8月にはハーグ条約室のツイッターを開設し、ソーシャルメディアを通じてより幅広い層へハーグ条約を周知すべく取り組んでいる。