3 地方自治体などとの連携
外務省は、内閣の最重要課題の一つである地方創生に積極的に取り組み、地方との連携による総合的な外交力を強化するための施策を展開している。
日本国内では、外務大臣が各都道府県知事と共催し、各国の駐日外交団や商工会議所・観光業界関係者を外務省の施設である飯倉公館に招き、セミナー、レセプションの開催やブースの展示等の実施を通じて地方の多様な魅力を内外に広く発信する地方創生支援事業を展開している。2018年は、高知県(2月)、北海道(3月)及び福島県(12月)とレセプションを共催した。いずれも約300人の関係者が出席する盛況であり、各都道府県の観光、食材、伝統工芸品などの広報・宣伝に加え、高知県からは「よさこい鳴子踊り」、北海道からは「アイヌ古式舞踊のパフォーマンス」が行われたほか、福島県からは再生可能エネルギー、Jヴィレッジ(サッカー施設)、福島県産酒等の広報・宣伝もあり、福島県の復興の現状と将来へのビジョンが紹介された。各都道府県が持つ様々な魅力が広く発信され、駐日外交団などの参加者と共催自治体との間で更なる交流・連携促進につながる機会となった。



(12月7日、東京・外務省飯倉公館)
また、外務省と複数の自治体が協力して、各国の駐日外交団や商工会議所、航空会社等の関係者に対して各地域の産業、観光、投資、企業誘致等の特徴や利点・魅力を発信する「地域の魅力発信セミナー」を実施した。6月のセミナーには萩市(山口県)、新潟県、五島列島(長崎県)及び養父市(兵庫県)が、12月のセミナーには茨城県、栃木県、神奈川県及び静岡ツーリズムビューロー(静岡県観光協会)が参加し、プレゼンテーションを通じた地域の魅力発信や、参加者との交流会において各地域の特産品や観光の紹介、伝統文化の実演やブースの出展が行われた。セミナーに参加した外交団等からは、東京に居ながらにして地方の魅力を直接体験できる貴重な場であるとして好評を得て、地方自治体と外交団等の外国関連団体関係者とのネットワークづくりの促進にもつながった。

交流会における山口県の萩焼絵付体験コーナーの様子(6月21日、東京)

交流会のブースの様子(12月5日、東京)
また、外務省と地方自治体等との共催で、各地方が誇る文化・産業施設等の魅力を現地で直接体験してもらうことを目的に駐日外交団が参加する「地方視察ツアー」を、高岡市(富山県)・金沢市(石川県)(1月)、台東区(東京都)(2月)、燕三条地域(新潟県)(5月)、静岡県(11月)及び北海道(11月)で実施し、延べ50余りの国・機関の駐日外交団から約70人が参加した。各国大使を始めとする外交団は、地域が誇る景勝地や地域の文化・産業施設等に直接足を運ぶことで、各地にあふれる地域の魅力を堪能した。北海道については、胆振東部地震からの復興ぶりを内外に示す機会となった。ツアーをきっかけに参加国との交流・連携が始まった自治体や、参加外交団とのつながりを活用して同地域への来訪者増加を目指す自治体も出てきている。

(1月17日~18日、富山県・石川県)

(2月21日、東京都台東区)

(5月15日~16日、新潟県燕三条地域)


さらに、外務省では地方自治体に対し、最新の外交政策等に関する説明や意見交換の場を積極的に提供している。その一環として「地方連携フォーラム」を1月に開催した。第1部の外交政策説明会では外務省幹部による「最近のベトナム情勢」に関する講演を実施し、第2部の分科会では「プロトコール(国際儀礼)」、「中小企業の海外進出~ゴルゴ13の安全対策指南~」、「日本農林水産物・食品の輸出拡大に向けて」、「最近の観光動向と日本版DMO2の動き」のテーマで意見交換が行われ、その後の駐日外交団を交えた意見交換会では駐日外交団等も参加し、自治体職員との間で活発な意見交換が行われた。
海外では、東日本大震災後の国際的風評被害対策として、輸入規制及び渡航制限の撤廃・緩和の働きかけと併せ、地方創生の一環として地方の魅力発信、県産品の輸出促進、観光促進等を支援する総合的な広報事業である「地域の魅力海外発信支援事業」を北京・上海(1月から2月)で、またモスクワ(3月)でそれぞれ実施した。
北京・上海では、イベントや試食会の開催を通じた日本産米等の日本産品の魅力の発信、中国の大型電子商取引サイトと連携した販売促進につながる事業を開催し、計23の日本の地方自治体が参加した。また、モスクワでは「ロシアにおける日本年」の一環として、地方自治体の産品や文化を通じて日本の魅力をロシア国内で発信し、各地方の工芸品及び食品の消費拡大のほか、ロシアへの輸入が規制されている農水産品等への規制緩和に向けた土壌作り等を目的に広報イベントを開催し、計6の日本の自治体が参加し、2日間で計約1万4,000人が来場した。
また、在外公館施設を活用して自治体が地方の魅力を発信することを通じて、地場産業や地域経済の発展を図るための支援策である「地方の魅力発信プロジェクト」をアジア、北米及び欧州地域において計18件実施した。


このほか、外務省では様々な取組を通じて日本と海外の間の姉妹都市交流を全面的に支援している。具体的には、在外公館長や館員が海外の姉妹都市提携先を訪問して、国際交流・経済交流関係担当幹部などと意見交換を行ったり、在外公館長の赴任前や一時帰国の際に地方都市を訪問し、姉妹都市交流に関する意見交換や講演を行ったりすることで、地方の国際化を後押ししている。加えて、日本の自治体と姉妹都市提携を希望している海外の都市等がある場合は、都道府県及び政令指定都市等に情報提供するとともに、外務省ホームページの「グローカル外交ネット」で広報するなどの側面支援を行っている3。
また、各地の日本産酒類(日本酒、日本ワイン、焼酎・泡盛等)の海外普及促進の一環として、各在外公館における任国要人や外交団との会食で日本産酒類を提供したり、天皇誕生日祝賀レセプション等の大規模な行事の際に日本酒で乾杯をするなど日本産酒類の積極的な紹介を行う等、日本酒を始めとする日本産酒類の宣伝に積極的に取り組んでいる。
さらに、開発途上国の急速な経済開発に伴いニーズが急増している水処理、廃棄物処理、都市交通、公害対策等について、ODAを活用して日本の地方自治体の経験やノウハウ、また、これを支える各地域の中小企業の優れた技術や製品も活用した開発協力を進めるとともに、そうした途上国の開発ニーズと企業の製品・技術とのマッチングを進めるための支援を実施している。これらの取組は、地元企業の国際展開やグローバル人材育成、日本方式のインフラ輸出にも寄与し、ひいては地域経済・日本経済全体の活性化にもつながっている。
2 Destination Management Organizationの略。観光地域作りの舵取り役を担う法人のこと
3 2018年2月現在日本との姉妹提携数(都道府県、市区町村含む。)が多い国は、多い順に米国(454件)、中国(364件)、韓国(162件)、オーストラリア(108件)、カナダ(71件)等(一般財団法人自治体国際化協会による集計、同協会ホームページhttp://www.clair.or.jp/j/exchange/shimai/countries/ 参照)