第7節 アフリカ
アフリカは、54の多様な国々に12億人を超える人口を擁し、高い潜在性を持つ市場と豊富な天然資源により、国際社会の関心を集めている。こうした背景もあり、国際社会における合意形成にアフリカ諸国が及ぼす影響力は拡大している。
一方、アフリカでは、政情不安や深刻な格差・貧困といった以前からの課題が残るほか、近年は新たに保健システムの脆弱性(ぜいじゃくせい)や暴力的過激主義の台頭等の課題も顕在化している。また、新興国経済の減速や資源価格の下落の影響で、経済成長は一時に比べ減速している。
これらの課題は、国境を越えて影響を及ぼすことから、アフリカ諸国がこうした困難を克服し、安定的な成長を遂げることは、アフリカのみならず日本を含む国際社会全体の平和と安定にとっても重要である。
国際社会との協調の下で、アフリカ自身の取組を後押しする枠組みとして、日本が国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行(WB)及びアフリカ連合委員会(AUC)と共に継続的に開催しているアフリカ開発会議(TICAD)がある。TICADは、1993年以降、アフリカのオーナーシップ(自助努力)の尊重と日本を含む国際社会とのパートナーシップの推進を基本理念として開催されてきた。これまでTICAD首脳会議は5年に1度日本で開催されてきたが、アフリカ側の意向を受け、第6回以降は3年に1度、アフリカと日本で交互に開催していくこととなった。
2016年8月にケニア・ナイロビで開催した第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)で、安倍総理大臣は、2016年から2018年までの3年間で、日本の強みである質の高さをいかした約1,000万人の人材育成を始め、官民総額300億米ドル規模の「アフリカの未来への投資」を行うことを発表した。閉会式では、各会合の議論を踏まえ、TICAD Ⅵの成果文書としてナイロビ宣言が採択され、ナイロビ実施計画が発表された。
また、2017年8月にはモザンビークの首都マプトでTICAD閣僚会合を開催し、河野外務大臣と堀井学外務大臣政務官が出席した。同会合では、TICADⅤ及びⅥで表明した取組の進捗状況を確認し、「TICAD進捗報告2017」及び「日本の取組2017年」を発表するとともに、議論の概要を共同議長サマリー(要約)として取りまとめた。日本のこれまでの支援は、アフリカの多くの国から高い評価を受けた。


日本は、TICADで打ち出した施策も踏まえ、様々な側面からアフリカとの関係強化に取り組んでいる。平和と安定の分野では、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の自衛隊施設部隊の撤収後も、司令部要員派遣を継続している。また、アフリカ各国の国連平和維持活動(PKO)訓練センターや国連主催のPKO要員の訓練コースへの支援を通じた能力強化等を引き続き行った。さらに、9月の国連総会では、安倍総理大臣がアフリカの国連安保理理事国首脳等と会合を行ったほか、河野外務大臣がアフリカ諸国外相との夕食会を実施し、アフリカの平和と安定に関する諸課題に対する日本の貢献を紹介するとともに、北朝鮮問題や国連安保理改革等について議論した。

経済面では、TICAD Ⅵにおいて共有された日本企業のアフリカ進出に対する高い期待に応える取組の一環として、5月に武井外務大臣政務官を団長とするアフリカ貿易・投資促進合同ミッションがナイジェリア及びモロッコを訪問し、貿易投資促進セミナーやアフリカ側企業関係者との懇談等を実施した。8月のTICAD閣僚会合においては、サイドイベントとして「日・アフリカ民間セクターとの対話」を実施し、アフリカの開発と経済成長促進に対する日本とアフリカの民間企業の果たす役割の重要性が確認された。また、内閣官房副長官の下に設置されたアフリカ経済戦略会議で、西アフリカ「成長の環」、東アフリカ・北部回廊及びナカラ回廊の三大重点地域における総合広域開発を始めとする具体的施策の推進を始め、TICAD Ⅵの結果を踏まえた取組を政府一丸となって進めることが確認された。さらに既に発効しているケニアやモザンビークの投資協定に加え、アンゴラ、ウガンダ、エチオピア、ガーナ、コートジボワール、ザンビア、セネガル、タンザニア、ナイジェリア、マダガスカル等との間で投資協定の締結に向けた協議を実施している。
アフリカ連合(AU)等との協力強化にも引き続き取り組んだ。特に、2018年初頭にAU日本政府代表部を設置し、AU及びアフリカ各国との一層の関係強化を図っていく。
さらに、米国・英国・フランス・インドなどの第三国とは、アフリカに関する政策協議などを通じ、情報交換と政策協調に努めている。