外交青書・白書
第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交

3 科学技術外交

5月、「科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会」は岸田外務大臣に報告書を提出し、科学技術外交の戦略的方向性、具体策及びその効果的推進に向けた基盤強化と人材育成等に関する提言を行った。この提言のうち、外交政策の立案・実施における科学的知見の活用強化について、9月、岸田外務大臣は、岸輝雄東京大学名誉教授を外務省参与(外務大臣科学技術顧問)に任命した。外務大臣科学技術顧問は、外務大臣の活動を科学技術面でサポートし、内外の科学技術分野の関係者との連携強化を図りながら、各種外交政策の企画・立案における科学技術の活用について外務大臣及び関係部局に対し助言を行う役割を負っている。

岸田外務大臣から外務省参与(外務大臣科学技術顧問)に任命され、辞令交付を受ける岸輝雄東京大学名誉教授(9月24日、東京・外務省)
岸田外務大臣から外務省参与(外務大臣科学技術顧問)に任命され、辞令交付を受ける岸輝雄東京大学名誉教授(9月24日、東京・外務省)

12月には、上述の有識者懇談会委員のほか、生命科学・医学、環境及び情報通信技術などの分野の学識経験者や民間企業関係者17人を委員とする「科学技術外交推進会議」を立ち上げた。同会議は、有識者懇談会の提言に基づき、「科学技術外交アドバイザリー・ネットワーク」を構築する取組の一部として立ち上げられ、外務大臣科学技術顧問を補佐し、科学技術を生かした首脳・外務大臣による外交の展開や国際会議の企画・立案を支援するものである。

日本は、科学技術外交を戦略的に推進する際の基本的考え方として、①科学技術・イノベーションを推進するための二国間・多国間の協力、②地球規模課題の解決に向けた科学技術の活用、③科学技術協力を通じた二国間関係の増進及び④科学技術立国としてのソフトパワーの発信の4点を掲げ、2015年には、以下の施策を実施した。

① 中国、ベトナム、オーストラリア、米国、ブラジル、オランダ、ノルウェー、ハンガリー、ロシア、イスラエル、南アフリカ及びEUの計12か国・機関との間で科学技術協力協定に基づく合同委員会(政府間対話)を開催し2、多様な分野における協力の現状、今後の方向性などを協議した。特に米国とは、10月の第14回合同高級委員会の際、政府間対話とは別に、日米の産官学の著名な有識者が出席する第3回日米オープン・フォーラムを開催し、将来性の高い医療関連分野とデータ分野をテーマに、世界の人々に豊かな生活をもたらす科学技術の発展とそのための日米協力の在り方などについて議論した。

② 安全保障の観点からは、国際科学技術センター(ISTC)への参画を通じ旧ソ連諸国科学者の平和目的の研究を支援することにより大量破壊兵器の拡散防止に貢献しており、12月、「国際科学技術センターを継続する協定」に署名した。

③ 日本の優れた科学技術の対外発信は、文化に関する対外発信とともに、対日理解の促進や対日イメージの向上に資する。このため外務省は、青色発光ダイオード(LED)の開発で2014年にノーベル物理学賞を受賞した天野浩名古屋大学教授をロシア及びフランスへ派遣し、研究者間のネットワーク構築に加え、大学や国際機関(UNESCO)等で先端的な研究の対外発信を行うことを通じて日本の優れた科学技術の国際的なブランド・イメージの確立・強化を目指すパブリック・ディプロマシーを推進した。

天野名古屋大学教授のロシア・テクノプロムにおける講演会(6月4日、ロシア・ノヴォシビルスク)
天野名古屋大学教授のロシア・テクノプロムにおける講演会(6月4日、ロシア・ノヴォシビルスク)

2 日本は、32の科学技術協力協定を署名又は締結しており、47か国・機関に適用されている。

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