3 イラン
日本の約4.4倍の国土を有し、人口約8,000万を抱えるイランは豊富な天然資源に恵まれたイスラム教シーア派の大国である。日本は、原油の安定供給及び中東地域の安定確保の観点から伝統的な友好関係を維持・強化させてきた。また、イランの核問題について、日本は国際社会と協調しつつ、日本独自の立場から、同問題の平和的・外交的解決に向けて貢献を行っている。
2013年8月に発足したローハニ政権は、核問題をめぐるEU3(英仏独)+3(米中露)との協議に取り組み、11月、第1段階の措置及び最終段階の包括的合意の要素から成る「共同作業計画」を発表した。また、2014年2月から、包括的合意に至ることを目指した協議が開始され、2015年4月に最終合意の土台となる主要な要素について合意に達し、7月には、ウィーンにて「包括的共同作業計画(JCPOA)」に合意するに至った。
日本は、核問題を含む地域・国際問題の解決に向け、国際社会・地域諸国との信頼醸成を進めるとともに、地域の安定に建設的な役割を果たすようイランに働き掛けている。また、日本はハイレベルの政治交流を始めとした重層的な二国間対話の枠組みを通じ、イランとの伝統的な関係の一層の強化を行っている。2015年4月、ジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議の際に日・イラン首脳会談を行い、9月の国連総会(於:ニューヨーク(米国))でも首脳会談(4度目)を行った。10月には、岸田外務大臣が2年ぶり、2度目となるイラン訪問を行い、ザリーフ外相との会談(5度目)後、原子力安全分野等での協力、日・イラン投資協定(同月に実質合意)の早期署名・発効、日・イラン協力協議会の設置で一致したことを確認する共同ステートメントを発表した。同訪問では、ローハニ大統領との会談、経済ミッション(約20社の代表)の同席を得た経済関係閣僚との会談も行われた。
また、従来の対話に加え、両国の医療、環境当局間の覚書に基づく協力が活発に行われ、さらに「高等教育及び科学研究の分野における協力覚書」が署名されるなど、協力の裾野が広がっている。
イランからは2月にハーシェミ厚生相が、10月にファルハーディ科学研究技術相が、11月にはサーレヒ副大統領兼原子力庁長官が訪日するなど、関係強化に向けたハイレベルの往来も活発に行われた。