外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

4 アフガニスタン

2014年9月末にガーニ大統領とアブドッラー行政長官が政治権力を分け合う国家統一政府が発足したが、2015年も引き続き大きな課題に直面している。

アフガニスタンが自立と安定を確保していくことは、日本を含む国際社会全体の安定と地域の繁栄のために重要な課題となっている。しかしながら、依然としてタリバーンなどの反政府武装勢力によるテロ事件が頻発しており、9月28日には、タリバーンの激しい攻撃を受けて同国北東部のクンドゥーズ市(国内第5の都市)が一時陥落した。アフガニスタン治安部隊(ANDSF)の能力強化が焦眉の急である。なお、2015年初頭、国際治安支援部隊(ISAF)の後継である「確固たる支援任務(RSM)」が活動を開始し、米国を含む北大西洋条約機構(NATO)加盟国等の外国部隊(兵力約1万3,000人)が、ANDSFの教育・訓練を行っている。

国家の長期的安定のため、国家統一政府はタリバーンとの和解を模索してきたが、大きな進展は見られていない。7月8日には、パキスタンの仲介によりタリバーンとアフガニスタン政府との和解協議が開催された。7月29日にタリバーン最高指導者オマル師が2年以上前に死亡していたことが発表され、タリバーン側も死亡を認めるという混乱が発生したため、予定されていた第2回和解協議が延期された。12月2日、タリバーン新最高指導者マンスール師が内部闘争で負傷したと報じられるなど、タリバーン側が一枚岩ではない状況も看取される。

ガバナンス面でも、国家統一政府発足後の閣僚任命が遅れており、重要ポストである国防相は議会下院で承認されず、代行が任命されるにとどまっている。また、選挙制度改革の遅れにより、6月に下院議員の任期が満了したものの、議会選挙が実施できていない。

自立した経済体制の構築に向け、治安改善や汚職対策などの課題に取り組んでいるものの、2014年のGDP成長率は1.3%と鈍化し(前年は3.7%)、雇用状況も改善していない。11月11日に首都カブールで政府の対応を非難する大規模な民衆デモが発生するなど、国民の不満が顕在化している。

日本は、同国の自立を助け、再びテロの温床としないとの方針の下、2001年以降、治安・開発などの分野で総額約59億米ドルの支援を実施してきた。

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