外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

5 中東和平

(1)中東和平をめぐる動き

米国の仲介により、2013年7月から2014年4月にかけて行われたイスラエル・パレスチナ間の直接交渉は、双方の主張の隔たりなどから頓挫し、以後交渉は中断された状態が継続している。

2014年12月30日、国連安保理で中東和平に関する安保理決議案が否決されたことを受け、2015年1月、パレスチナは国際刑事裁判所を含む複数の国際条約に加入を申請し、これに対してイスラエル側は対抗措置をとった(後に撤回)。

こうした中、9月頃から、イスラエル国内及び西岸地区では、パレスチナ人がイスラエル人を殺傷する事件やエルサレムの「神殿の丘」付近での衝突が頻発するなど、現地の治安状況は悪化している。また、ガザ地区の人道状況も劣悪な状況が続いている。

「神殿の丘」の岩のドーム
「神殿の丘」の岩のドーム
復興の遅れが目立つガザ地区
復興の遅れが目立つガザ地区

国際社会は、イスラエル・パレスチナ双方に対して、早期交渉再開を呼び掛けた。中でもフランスは中東和平の現状を打破するための試みとして、「国際支援グループ」形成などを呼び掛けた。こうした試みも踏まえ、9月、国連総会の機会に中東和平に関する拡大カルテット会合が開催された。日本からは岸田外務大臣が同会合に出席し、中東地域の諸課題の中で、中東和平問題が最優先課題の1つであることを強調し、日本は新たに約1,200万米ドル規模の対パレスチナ支援を行うこと、また、和平プロセス推進のため幅広い国々を動員する必要性を表明した。

(2)日本の取組

日本は、国際社会と連携しながら、「二国家解決」実現に向けて政治・経済面から働き掛けを行ってきている。総理大臣、外務大臣、中東和平担当特使などあらゆるレベルで関係者との政治対話を行ってきているほか、イスラエル・パレスチナ双方の関係者や若者を日本に招へいするなどの当事者間の信頼醸成を進めている。

1月、安倍総理大臣はイスラエル・パレスチナを訪問し、イスラエルではネタニヤフ首相らと、パレスチナではアッバース大統領と会談し、中東和平問題解決に向け直接働き掛けた。11月、安倍総理大臣は、パリで開催されたCOP21の機会にもネタニヤフ首相に対して更に働き掛けを行った。また2月には訪日したマーリキー・パレスチナ外務庁長官に対し、岸田外務大臣から直接交渉再開に向け柔軟な対応を働き掛けた。

日本の対パレスチナ支援は、1993年以降、約16億米ドルに達しており、人道支援、雇用創出、医療・保健、農業など様々な分野に及ぶ。特に独自の取組として、イスラエル・パレスチナ・ヨルダンと協力しながら、パレスチナの経済的自立に向けた「平和と繁栄の回廊」構想を進めている。同構想の旗艦事業として実施中のジェリコ農産加工団地では、2015年、第1号企業が本格操業を開始するなど進展が見られている。

ジェリコ農産加工団地
ジェリコ農産加工団地

また、アジア諸国の支援を動員すべく日本が開始した「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)」の枠組みの下で、農業分野での研修事業や観光分野でのセミナーなどアジア諸国との三角協力を通じた対パレスチナ支援が進んでいる。

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