第5節 ロシア、中央アジアとコーカサス
アジア太平洋地域の戦略環境が変化する中、同地域におけるパートナーとしての関係をロシアとの間で発展させることは、日本の国益に資する。このような認識の下、ウクライナ情勢などの国際情勢も踏まえつつ、日露間の政治対話に努め、2014年には、3回の首脳会談、1回の外相会談が行われた。
ウクライナ情勢の悪化(詳細については第2章第4節1.(6)「ウクライナ」参照)を受け、日本は、G7の連帯を重視し、事態の改善に向けロシアが建設的役割を果たすよう、累次の働きかけを行うとともに、一連の対露措置を行った。同時に、日露関係は難しい舵取りを迫られたが、政治対話の維持に努めつつ、個別分野での交流・協力を着実に行った。
安全保障分野では、谷内国家安全保障局長が訪露したほか、日露共同捜索・救難訓練などの防衛交流が実施された。経済分野では、伝統的な主要協力分野であるエネルギーに加えて、医療、都市環境、農業、省エネなどの分野でも様々なプロジェクトが進んでいる。
また、 2014年は、日露両首脳により合意された「日露武道交流年」の下で、40以上の事業が両国各地で開催されるなど、文化・スポーツの分野でも活発な交流が図られた。
日露間最大の懸案である北方領土問題については、1月の次官級協議などにおいて交渉が行われたが、両国の立場には依然大きな隔たりがある。幅広い分野で日露関係全体を進める中で、領土問題を解決して平和条約を締結すべく、引き続きロシアとの交渉に精力的に取り組む方針である。
中央アジア・コーカサス諸国は、アジア、欧州、ロシア、中東を結ぶ地政学的な要衝に位置し、石油、天然ガス、鉱物などの天然資源が豊富である。また、この地域は、2014年に国際治安支援部隊(ISAF)が撤収したアフガニスタンに隣接することから、同国を含む地域全体の安定、テロとの闘い、麻薬対策といった国際社会が直面する重要課題に取り組んでいく上で、今後も重要性が高い。
日本は「中央アジア+日本」対話の枠組みを通して中央アジアの地域協力を促進してきた。2014年は同対話の立ち上げから10周年に当たり、今後実践的な協力を強化していくことで各国が合意した。