2 外交実施体制の強化
外務省は、国内外の情勢変化に対応した機動的な外交を進めるため、限られた資源や人材を優先度の高い業務に投入しつつ、外交実施体制の強化に引き続き取り組んでいる。
近年、外交・安全保障政策の観点を含め、宇宙空間の重要性が一層高まっており、これを背景として、日本政府においても、宇宙政策を実施する体制が強化されている。また、宇宙に関して、各国との対話・協議・協力などもより活発になっている。このため、外務省内で民生・安全保障の両方にまたがる宇宙分野全体を包括的に主管する部署として、5月に総合外交政策局安全保障政策課の下に宇宙室を省令に基づいて設置した(詳細については第3章第1節5(3)「宇宙」参照)。
在外公館は、海外において国を代表するとともに、外交の最前線での情報収集、邦人保護、外交関係促進などの分野で重要な役割を果たしつつ、日本企業支援や投資・観光の促進など、国民の利益増進に直結する活動を行っている。2013年7月には、ODAや国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)への自衛隊要員派遣などを通じ、南スーダンに対し積極的に平和と安定の定着や国造り支援を継続してきたことを踏まえ、同国に日本国大使館を開設した。また、2014年1月には、捕鯨や水産資源の問題などで共通の利益を有し、再生可能エネルギー(特に地熱分野)での協力拡大、北極海の航行可能化により重要性が増大していることから、アイスランドに日本国大使館を開設した。2013年度末の日本の在外公館(実館(1))数は、204公館(大使館136、総領事館60、政府代表部8)であり、この数は、米国の277公館、中国の254公館など他の主要国に比べると、依然として少ない水準にある。2014年度は、外交実施体制の強化が引き続き不可欠との考えの下、豊富な天然資源の獲得や進出日本企業支援などを含む二国間関係の緊密化・強化の観点から、マーシャル、アルメニア及びナミビアに日本国大使館を設置予定である。
定員については、2013年度において、政府全体での厳しい財政状況に伴う国家公務員総人件費削減の方針の下、外務省も10人削減し、定員数は5,753人となった。この人員数は、他の主要国と比較しても十分とはいえないため、より効果的かつ効率的な体制の構築を目指し、新興国、資源産出国、新設公館所在国などへの人員再配置を進めつつ、人員体制の整備を行っている。なお、2014年度は、外交実施体制の強化が引き続き不可欠との考えの下、外務省は33人増員予定である。
以上のような外交実施体制を支えるため、外務省は、2013年度予算において、①普遍的価値に基づく戦略的外交のダイナミックな展開、②成長と経済基盤の強化に資する外交を重要外交課題と位置付け、6,083億円(対前年度比1.5%減)を計上した。また、2013年12月には2013年度補正予算が成立した。外務省所管の補正予算の総額は2,058億円であり、追加財政需要として「シリア・パレスチナを含む中東情勢等に対する緊急支援」、「紛争・自然災害等に対する人道支援」など、計14件・総額1,908億円を計上した。また、経済対策としては、「途上国・新興国における日本方式普及・インフラシステム輸出等の取組支援」、「中小企業・地方自治体の国際展開支援事業」などのためにODAを活用する経費など、総額150億円が計上された。
今後も、日本の国益増進のためには、外交実施体制の強化は不可欠であり、引き続き在外公館体制の整備を戦略的に進めていく考えである。更なる合理化努力を行いつつ、他の主要国に劣らぬ外交実施体制の水準を確保できるよう努めていく。
1 庁舎が存在し、そこに専任の職員が配属されている公館