外交青書・白書
第4章 国民と共にある外交

各論

1 国民への積極的な情報発信

(1)国内メディアを通じての情報発信の強化

外務省は、日本の外交政策等に対する国民の理解と支持を得るために、新聞・テレビ・ウェブサイトなどの各種メディアを通じた的確な情報発信に努めている。特に、外務大臣の記者会見は、外国メディア、インターネットメディアやフリーランス記者などにも開放されており、記者会見の模様については、記録及び動画を外務省ホームページに掲載している。

総理大臣及び外務大臣の外国訪問に際しては、その内容・成果を分かりやすく伝えるため、訪問地において情報発信を行っている。また、メールマガジンによる外交関連情報の配信、地方メディア関係者への外交関連情報の提供、各地方出身の外務省幹部に対する地方紙インタビューなど、様々な形での情報発信や取材への協力を行っている。

なお、各種メディアの報道において、事実誤認と思われるものや説明が十分でないものが見受けられた場合には、必要に応じてそのメディアに報道の訂正を求めるほか、外務省の見解を寄稿したり、記者会見で表明した上で、外務省ホームページに掲載するなど、国民の正確な理解が得られるよう努めている。

岸田外務大臣による定例記者会見の様子(東京・外務省)
岸田外務大臣による定例記者会見の様子(東京・外務省)
会見による情報発信
外務大臣記者会見 84回
外務副大臣記者会見 14回
外務報道官記者会見 36回
合計 134回

※2013年1月1日~12月31日

文書による情報発信
外務大臣談話 37回
外務報道官談話 75回
外務省報道発表 1,376回
合計 1,488回

※2013年1月1日~12月31日

(2)インターネットを通じた情報発信

外務省は、日本の外交政策に関する内外の理解と支持を得るとともに、広報文化外交を推進していくため、ウェブサイトやソーシャルメディアなど、インターネットを通じた情報発信にも積極的に取り組んできている。外務省ホームページ(日本語)では、総理大臣や外務大臣の外交活動に関する情報を迅速に発信するとともに、日本の外交政策や各国情勢などの最新情報を提供している。また、分かりやすく国際情勢を解説する「わかる!国際情勢」、小中校生向けの「キッズ外務省」など、幅広いコンテンツを掲載している。

外務省ホームページ(英語)を広報文化外交の重要なツールと位置付け、日本の外交政策や変化する国際情勢に対する日本の立場などについて、英語での情報発信を充実させてきている。また、世界各国にある大使館及び総領事館などのウェブサイトを通じ、現地語での情報発信も行っている。

さらに、各種のソーシャルメディアの普及を踏まえ、フェイスブックとツイッターによる情報発信を行っており、岸田外務大臣自身による外務省公式フェイスブックへの投稿を2013年11月から開始したところである。このほか、ユーチューブを通じた動画による情報発信にも努めている。

外務省ホームページ
外務省ホームページ
「キッズ外務省」
「キッズ外務省」
「わかる!国際情勢」
「わかる!国際情勢」
外務省公式フェイスブック
外務省公式フェイスブック

(3)国民との対話

外務省は、外務大臣や外務省職員が国民と直接対話を行う「国民と対話する広報」を推進している。

国民と外務大臣が直接対話を行う機会として「大臣と語る」を実施しており、外務大臣が国民の関心の高いテーマや日本の外交政策の在り方について分かりやすく説明するとともに、参加者の質問や意見にも率直に答えている。2013年3月には「これからの日本外交」、2014年1月には「核軍縮・不拡散」をテーマに同会合を開催した。

さらに、2013年には外務省が地方自治体や国際交流団体などの民間団体からの依頼により行う「国際情勢講演会」(20件)、若い世代の国際理解を促進するため、大学や高校に外務省職員を派遣して行う「外交講座」(57件)や「高校講座」(131件)、大学生と若手外務省職員との意見交換の場である「学生と語る」(2件)などの各種講演会、小中高生を対象とした外務省内見学である「小中高生の外務省訪問」(63件)を実施し、それぞれ好評を得た。また、日本の外交政策や国際情勢に対する大学生の理解や関心の促進を目的とした「大学生国際問題討論会」(1件)では、毎回質の高い活発な議論が行われている。

また、日本のODA政策やその具体的な取組についても、各種シンポジウムや講演会、外務省職員を学校などに派遣する「ODA出前講座」(29件)を通じて、国民に紹介している。

外交専門誌『外交』は、学者、ジャーナリスト、NGOなどの多様な論者による外交に関する活発な議論を通じて、外交に対する国民の関心を高める目的で発刊されている。2013年は、「アフリカ開発会議(TICAD)」をめぐるアフリカ外交など様々な重要外交課題を特集や特別企画で取り上げ、内外の著名な有識者の論文などを数多く掲載した。

外交専門誌『外交』
外交専門誌『外交』

また、外交政策に関する更なる理解を得るため、分かりやすいパンフレットも作成している。

そのほか、外務省では、外務省ホームページや首相官邸ホームページ、電子政府の総合窓口(e-Gov)のご意見コーナー、さらに電話やファックス、書簡といった様々な媒体を通じた広聴活動を行っている。寄せられた意見については外務省内で共有の上、政策立案などの参考としている。

国民から寄せられた意見(広聴室受付分)
電子メールによる意見 12,446回
電話による意見 8,116回
FAX・書簡による意見 644回

(2013年1月1日~12月31日)

(4)外交記録公開及び情報公開の促進

外務省は、戦前期の文書に加え、自発的な取組として戦後の外交文書を、1976年以来、外交史料館において公開している。外務副大臣又は外務大臣政務官が委員長を務め、外部有識者が参加する「外交記録公開推進委員会」を設置し、作成又は取得から30年が経過した外交記録ファイルの外交史料館への移管や公開に積極的に取り組んでいる。2013年12月までに10回の「外交記録公開推進委員会」を開催した。特に2011年秋以降、外交記録公開を加速化しており、2010年5月から2013年末までに移管・公開した外交記録ファイル数は1万3,879冊に及ぶ(詳細については239ページのコラム参照)。

COLUMN
外交記録公開

2010年5月に、外交記録の公開をよりいっそう推進するために新たに「外交記録公開推進委員会」が設置されました。外務副大臣ないし外務大臣政務官が委員長となり、外部の有識者の参加を得て、年に2回から3回ほど委員会が開かれ、2013年末までに10回会合が開催されています。私は、設置された2010年以降、外部有識者の常任委員として、会合に参加してきました。

有識者会合の様子
有識者会合の様子

この外交記録公開推進委員会での活動を通じて、これまで4年の間に膨大な量のファイルが公開されてきました。そこには、沖縄返還に関する文書や、日本の先進国首脳会議への参加に関する文書など、歴史的価値の高いものが多く含まれています。それにあわせて、公開された外交史料が保管されている外交史料館の利用者も確実に増えつつあり、優れた多くの新しい研究が発表・刊行されてきています。

このような外交記録の公開は、国民の間での外交への理解を深める上で大きな意義があります。委員会設置当時、外務大臣は、「外交は、国民の理解と支持がなければ前に進められません。」と述べていました。また、故高坂正堯京都大学教授は、「外交が世論の強力な支持を得たときに、日本は外交政策を持つといえるようになるのだ。」と論じています。外交記録の公開がよりいっそう進み、国民の外交への理解が深まれば、それは日本の外交力の強化にも寄与するはずです。

1970年代以降は、外交活動のグローバル化により外交記録の量が飛躍的に増えていきます。また、デジタル化の時代の外交記録の公開へ向けて、現在の体制では十分とはいえません。さらなる努力によって、外交をめぐる「国民の理解と支持」がさらに深まることを望んでいます。

筆者
筆者

慶應義塾大学教授 細谷雄一

さらに、外務省は、日本の安全や他国との信頼関係、対外交渉上の利益、個人情報の保護などに配慮しつつ、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)」に基づいて情報公開を実施している。2013年には864件の開示請求が寄せられ、12万380ページの文書を開示した。

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