第1節 世界とのつながりを深める日本社会と日本人
日本と外国との間で人の往来を増やすことは、経済の活性化や異文化間の相互理解の促進につながる。このような考えから、外務省は、外国人の日本への入国や滞在を円滑化するとともに、日本人の国際社会での活躍を支援することにより、外国との間の人的交流を促進させることを重視している。
2013年の訪日外国人数は、約1,036万人となり(注:2012年は836万人)、初めて政府目標の1,000万人を超えた。また、日本に在留する外国人(中長期在留者及び特別永住者)の数は、「リーマン・ショック」を契機として2008年末をピークに減少しているものの、2013年6月末で約205万人であり、2000年(約169万人)と比べると約1.2倍となっている。
外務省は、日本再興戦略の柱の1つである観光立国推進に貢献するため、2013年に、日・ASEAN友好協力40周年を契機として、ASEAN諸国に対してビザ免除や数次ビザ(1)を導入するなどビザの緩和を実施した。これらが、2013年に訪日外国人数が過去最高を記録した要因の1つであると考えられる。ビザ緩和には、こうした効果があるが、同時に日本の利益を害するおそれのある外国人の入国を阻止するための厳格なビザ審査も重要であり、関係省庁とも協力して総合的に取り組んでいる。
また、日本においては少子高齢化や人口減少が進行しつつあることから、外国人観光客の誘致にとどまらず、日本経済を支える人材を国内外を問わず確保していくことが一層重要となっている。こうした背景の下、外務省は、2005年以降、外国人の受入れや社会統合に関する国際シンポジウムやワークショップにおいて、外国人の受入れや社会統合に伴う具体的課題や取組について討議の場を設け、国民参加型の議論の活性化に努めている。2013年は、大規模災害と在留外国人について議論を行った。その際、災害時における在留外国人による支援についての経験や教訓を共有することにより、外国人が日本社会に貢献し得るとの認識の共有が得られた。
今日、政府以外の主体の力をいかし、オールジャパンでの外交を展開することがより一層重要となっている。例えば、国際協力に対する市民の関心の高まりを背景に、開発途上国などに対する支援活動の担い手及び政策提言を行うチャネルとして、非政府組織(NGO)の重要性が近年ますます高まっている。開発援助分野では、人権、軍縮、人身取引政策、国連改革などの外交課題についても、NGOの役割は大きい。こうした認識に立ち、外務省は、NGOを国際協力における重要なパートナーと位置付け、資金協力、環境整備、政策対話などを通じて、国際協力を推進する上での連携強化に努めている。
また、青年海外協力隊(JOCV)やシニア海外ボランティア(SV)などの国際協力機構(JICA)ボランティア事業の参加者は、現地の人々と同じ目線でその国が抱える開発課題の解決に一緒に汗を流して取り組んでおり、国際協力の重要な担い手である。こうした事業は、日本の「顔の見える援助」を代表する取組として、各国から高い評価を得ている。また、その国の経済・社会の発展のみならず、日本と各開発途上国との間の相互理解や友好親善の促進にも大きな役割を果たしている。さらに、帰国したボランティア事業参加者の知識や経験が日本社会に還元されるとの観点からも、これらの事業の意義は大きい。企業活動がグローバル化する今日、主に事業の国際展開を目指す中小企業などの民間企業のニーズにも応えるプログラムとして、「民間連携ボランティア」を創設(2012年度)した。このように、JICAボランティア事業を活用して、企業などのグローバル人材育成を支援している。
幅広い分野で複層的に良好な国際関係を築いていく上で、地方自治体などの役割は大きい。近年、地方自治体や地域の団体・市民による国際交流や経済交流の取組は幅広く、活発に行われている。国際的な相互理解、信頼関係の構築、日本のブランド力強化などの観点から、地方自治体などは、外交において極めて重要な役割を果たしている。外務省は、地域の団体・市民や地方自治体などを、外交を推進していく上での重要なパートナーと位置付け、オールジャパンでの総合的外交力の強化を目指している。このために、①地方の魅力の世界への発信、②地方の国際的取組の支援、③国際交流に関わる広範囲な情報の提供に重点を置きつつ、地方自治体などとの在外公館施設を活用した「地方の魅力発信プロジェクト」、地方自治体が在京外交団に対して地域の魅力を発信する「地域の魅力発信セミナー」、在京外交団が直接地方自治体を視察する「地方視察ツアー」、地方自治体の実務担当者を対象として外交政策を説明する「地方連携フォーラム」、「地方連携関西シンポジウム」などを実施している。特に、東日本大震災後の風評被害対策支援や地場産業の振興、地域経済の活性化を支援するための多様な取組を実施している。
1 ビザの有効期間内であれば何回でも使用できるビザのこと