外交青書・白書
第4章 国民と共にある外交

各論

1 外国人の活力を日本の成長につなげる

(1)成長戦略とビザ(査証)緩和

安倍政権は、2013年6月に、日本再興戦略を策定した。この中で、日本の力強い経済を取り戻すための成長分野として、観光立国推進をその重要な柱の1つとした。その施策として、訪日外国人数を増やすためのビザの発給要件の緩和が盛り込まれている。外務省は、これまでも中国人の個人観光客向けの沖縄及び東北数次ビザなどを導入してきた。これに続き、2013年は近年成長著しいASEAN諸国に目を向け、同年の日・ASEAN友好協力40周年を契機に、ASEAN諸国を中心にビザ免除や緩和などの一連の措置を実施した。具体的には、7月1日からタイ及びマレーシアのビザ免除、ベトナム及びフィリピンの数次ビザの導入、インドネシアの数次ビザの滞在期間の延長、11月18日からカンボジア及びラオスの数次ビザの導入、2014年1月15日からはミャンマーの数次ビザの導入を実施した。ASEAN諸国以外についても、アラブ首長国連邦とパプアニューギニアに対し、数次ビザを導入した。

日本政府観光局(JNTO)の統計によると、ビザ緩和を実施したASEAN諸国からの訪日者数の伸びが見られるなど、これらの措置には一定の効果が見られる。2013年12月には目標であった1,000万人の訪日外国人数を初めて達成した(2012年は836万人)。具体的には、例えば、ビザ免除となったタイからの訪日者数は、前年より20万人近く増え、45万人と過去最高を記録した。今回のビザ緩和を通じ、観光客の増加、ビジネス面での利便性の向上など、各国との交流が一層発展することが期待される。

このようにビザの緩和は、人的交流の促進や日本経済の成長に一定の効果があり、ビザ緩和の拡大やビザ発給の円滑化などが求められる。一方で、日本の利益を害するおそれのある外国人の入国を阻止するために厳格なビザ審査も重要である。関係省庁とも協力し、ビザ緩和による治安への影響を最小限に抑えるとともに、二国間関係などを、総合的に勘案し、ビザの緩和に取り組むことにより、人的交流を活発化させていく。

ビザ発給件数と訪日外国人数の推移
ビザ発給件数と訪日外国人数の推移

(2)外国人受入れ・社会統合をめぐる取組

2008年のリーマン・ショックを契機に、日本に長期滞在する外国人の数は減少してきている。東日本大震災の影響もあって、日本に長期滞在し、日本の活力の担い手となるような外国人の日本離れが懸念されている。少子高齢化や人口減少が進行しつつある中、日本の活力となるべき人材を国内外を問わず確保していくことが今後一層重要となる。例えば、リーマン・ショックを契機として帰国支援金の支給を受けて帰国したブラジル国籍者などの南米系日系人離職者については、当分の間、同様の身分に基づく在留資格による再入国を認めないこととしていた。しかしながら、昨今の経済・雇用情勢等を踏まえ、2013年10月から一定の条件の下に、再入国を認めることとした。

また、外務省は、外国人の受入れや社会統合に関して国際ワークショップを開催している。2013年2月の国際ワークショップ(外務省、大田区、国際移住機関(IOM)共催)では、「大規模災害と在留外国人」のサブ・テーマの下、「大規模災害時の在留外国人への多言語による情報発信のあり方」と「日本に在留する外国人の団体を含む関係機関の連携のあり方」の2点を中心に議論を行った。その結果、在留外国人への情報提供については、平時から各国大使館、国、地方自治体及び民間団体による具体的な連携の枠組みの構築が進んでいるとの認識が共有された。また、外国人を災害対策で単に弱者として捉えるべきではなく、炊き出し、通訳、がれき処理などの「在留外国人による支援」についての経験や教訓を共有することを通じて、外国人は災害時にも日本社会に貢献しているとの認識が共有された。

在留外国人数の推移と日本の総人口に占める割合の推移
在留外国人数の推移と日本の総人口に占める割合の推移
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