外交青書・白書
第4章 国民と共にある外交

2 国際社会で活躍する日本人

(1)非政府組織(NGO)の活躍

ア 開発援助分野

国際協力活動に携わる日本のNGOは、400以上あるといわれている。その多くは、貧困や自然災害、地域紛争など様々な課題を抱える開発途上国・地域において、草の根レベルでの現地のニーズを把握し、柔軟できめの細かい支援を実施しており、その重要性はますます高まっている。

外務省は、日本のNGOが開発途上国・地域で実施する経済社会開発事業に対して、「日本NGO連携無償資金協力」を実施しており、NGOを通じた政府開発援助(ODA)を積極的に行っている。2013年度(1月末現在)には、日本の39のNGOが、アジア、アフリカ、中東など、27か国1地域において、日本NGO連携無償資金協力事業を実施した。その活動内容も、保健・医療・衛生(母子保健、結核・HIV/エイズ対策、水・衛生など)、農村開発(農業の環境整備・技術向上など)、障害者支援(職業訓練・就労支援、子供用車椅子供与など)、教育(学校建設など)分野などで92件の事業を実施するなど、幅広いものとなっている。

また、政府、NGO、経済界などの協力や連携により、大規模自然災害や地域紛争が発生した際に、より効果的かつ迅速に緊急人道支援活動を行うことを目的に設立された「ジャパン・プラットフォーム(JPF)」には、2013年12月末現在、42のNGOが加盟している。JPFは、2013年には、インド北部水害被害、ミャンマー南部水害被害、フィリピン南部紛争、フィリピン台風30号を含む東南アジア水害等に際し、被災者支援を行った。さらに、アフガニスタン、パキスタン、シリア及び周辺国、ミャンマー、南スーダン、「アフリカの角」地域において人道支援を実施した。

アフガニスタンにおける地雷回避教育(写真提供:AAR(特定非営利法人 難民を助ける会)/JPF(特定非営利法人 ジャパン・プラットフォーム))
アフガニスタンにおける地雷回避教育(写真提供:AAR(特定非営利法人 難民を助ける会)/JPF(特定非営利法人 ジャパン・プラットフォーム))

日本のNGOは、前述のような政府資金による活動のみならず、支援者による寄付金や独自の事業収入などを活用した活動も数多く実施している。また、近年では、企業の社会的責任(CSR)への関心が高まりつつあり、技術や資金を持つ企業が国際協力について高い知見を持つNGOと協力の上、開発途上国で社会貢献事業を実施する形での連携も数多く見られるようになっている。

このように、開発援助の分野において重要な役割を担っているNGOを国際協力のパートナーとして位置付け、NGOがその活動基盤を強化して更に活躍していけるよう、外務省とJICAは、NGOの能力強化、専門性向上、人材育成などを目的として、様々な施策を通じてNGOの活動を側面から支援している。具体的には、2013年においては、外務省は、NGO活動環境整備支援事業として、「NGO研究会」、「NGO海外スタディ・プログラム」、「NGOインターン・プログラム」、「NGO相談員制度」の4事業を実施している。

さらに、NGOとの対話・連携を促進するため、「NGO・外務省定期協議会」の全体会議を2013年6月に実施した。これに加え、ODA全般について協議するODA政策協議会や、NGO支援や連携策について協議する連携推進委員会も実施している。

イ その他の主要外交分野における連携

外務省は、開発援助分野以外の外交課題においても、NGOと連携している。例えば、2013年3月に開催された第57回国連婦人の地位委員会(CSW)において、NGO関係者の橋本ヒロ子氏が日本代表を務めたほか、NGO関係者が政府代表団の一員となり積極的に議論に参加した。また、第68回国連総会では、NGO関係者の鷲見八重子氏が政府代表顧問として人権・社会分野を扱う第3委員会に参加し、発言などを行った。さらに、人権に関する諸条約に基づいて提出する政府報告や第三国定住難民事業、安全保障理事会決議に基づく女性・平和・安全保障に関する行動計画などについても、日本政府はNGO関係者などとの対話を行っている。

核軍縮を含む軍縮分野でも、日本のNGOは存在感を発揮しており、外務省とも連携している。具体例として、通常兵器の分野における、NGO主催のセミナーへの外務省職員の参加を通じ、また、アフガニスタンなどにおける地雷や不発弾の除去、危険回避教育プロジェクトの実施に当たり、NGOと協力している。

さらに、核軍縮の分野において、2010年から開始した「非核特使」の委嘱事業は、被爆者が世界各地で核兵器使用の惨禍の実情を伝えるNGO等の活動を政府が後押しするものである。2013年1月現在、延べ112人が本制度により世界各地へ派遣されている。

国際組織犯罪分野では、人身取引対策の分野において、人身取引対策に日頃から従事しているNGOなどと政府関係省庁との意見交換の場を設けている。2013年9月及び11月には、人身取引対策における今後の課題について議論した。

国連改革の分野では、外務省は、2012年以降、「国連改革を考えるNGO連絡会」との共催により「国連改革に関するパブリックフォーラム」を開催してきた。国連改革をめぐる国際情勢などが多様化してきていることを踏まえ、その意義、成果及び今後の在り方について、有識者によるレビューを実施した。

(2)青年海外協力隊・シニア海外ボランティア

青年海外協力隊(JOCV)は、技術を有する20~39歳の青年男女が、開発途上国の地域住民と共に生活し、働き、相互理解を図りながら、その地域の経済及び社会の発展に協力・支援することを目的とする事業である。これら協力隊員は、まさしく日本の「顔の見える」協力を行い、開発途上国の発展に貢献してきた。2013年12月末までに累計で88か国に3万8,571人の隊員が派遣され、計画行政、商業・観光、公共・公益事業、人的資源、農林水産、保健・医療、鉱工業、社会福祉、エネルギーの9分野、約200職種にわたる協力を展開している。

理数科教師としてルワンダの小学校で授業を行う青年海外協力隊員(写真提供:久野武志/JICA)
理数科教師としてルワンダの小学校で授業を行う青年海外協力隊員(写真提供:久野武志/JICA)

また、シニア海外ボランティア(SV)は、幅広い技術と豊かな経験を有する40~69歳の中高年層の男女を開発途上国に派遣する事業である。2013年12月末までに71か国に5,290人を派遣し、JOCVと同じ9分野にわたる協力を行ってきた。近年は一線を退いたシニア層の再出発やその知見の再活用という観点からも、SVに対する関心が高まっている。

ドミニカ共和国の大学で剣道の指導を行うシニア海外ボランティア。この大学では、人間形成を目的に2011年から教育課程の体育授業に剣道が取り入れられている。(写真提供:佐藤浩治/JICA)
ドミニカ共和国の大学で剣道の指導を行うシニア海外ボランティア。この大学では、人間形成を目的に2011年から教育課程の体育授業に剣道が取り入れられている。(写真提供:佐藤浩治/JICA)

JOCV及びSVは、開発途上国の経済・社会開発や復興のために協力したいという国民の高い志に支えられている。外務省は、これを国民参加型国際協力の中核を担う事業として、積極的に推進している。2013年12月末現在、1,732人のJOCVと432人のSVが、世界各地(それぞれ70か国、58か国)で活躍を続けている。また、帰国したボランティア参加者は、その経験を教育や地域活動の現場で共有するなど社会への還元を進めている。日本独自の国民参加型による活動は、受入れ国を始め、国内外から高い評価と期待を得ている。

出身都道府県別派遣実績(集計期間:2013年1月1日~12月31日)
出身都道府県別派遣実績(集計期間:2013年1月1日~12月31日)

また、中小企業などの民間企業におけるグローバルな視野を持った人材育成にも活用できるよう、各企業の社員をJOCVやSVとして開発途上国に派遣する「民間連携ボランティア制度」を2012年に創設した。この制度は、企業側の要望を聴取し派遣国などを調整するなど、民間企業が参加しやすい仕組みとなっている。日本の民間企業の人材育成にも資する新たな取組を推進してきている。

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