外交青書・白書
第4章 国民と共にある外交

3 地方自治体などとの連携

近年、地方自治体や地域で活躍する各種団体は、伝統的な国際交流(姉妹・友好都市交流)のみならず、経済交流(輸出振興、観光誘致など)、国際協力など、様々な取組を積極的に行っている。国際的な相互理解、国際社会における日本の地位の向上、日本のブランド力強化などの面で、外交上重要な役割を果たしている。

外務省としても、オールジャパンでの総合的な外交力を強化するため、このような国際的取組を進める地方自治体などとの連携を強化する各種の取組を積極的に実施している。例えば、日本の地方自治体が地方の魅力を発信し、地場産業や地域経済の発展を図るための支援策として、在外公館施設を活用した「地方の魅力発信プロジェクト」を実施している。2013年には、各地方自治体がアジア、北米地域などで8件の各種PR事業やセミナーなどを開催した。

岩手県二戸市PR事業(8月27日、在ニューヨーク総領事公邸)
岩手県二戸市PR事業(8月27日、在ニューヨーク総領事公邸)

また、日本の地方の魅力を日本に駐在する各国の外交団に対して発信する「地域の魅力発信セミナー」事業も行っている。2013年には「企業・投資誘致」他をテーマとするセミナーを外務省で開催したほか、地方視察ツアー(神奈川県、北九州市及び福島県をそれぞれ訪問)を3回、各地方自治体と連携して実施した。4月には阿部外務大臣政務官が中東・アフリカ地域の在京外交団とともに福島県を視察訪問した。また、地方自治体の国際的取組支援の観点から、「全国市長会議に際する外務大臣主催レセプション」を開催し、在京外交団とのネットワーク構築を行ったり、自治体ブースを設置して地方の魅力を紹介するなど、日本の地方についての諸外国の理解増進に努めている。

地方視察ツアーの様子(神奈川県)
地方視察ツアーの様子(神奈川県)

日本の大使や総領事は、一時帰国に際し、積極的に地方自治体などを訪問しており、外国の最新の現地情報を提供している。また、今後の経済交流や国際交流面での在外公館と地方自治体などとの協力についても協議を行っている。加えて、2013年には東京において「地方連携フォーラム」、奈良において「地方連携関西シンポジウム」を開催した。このうち、「地方連携フォーラム」においては、「基調講演」(日本の再生と文化芸術の役割)と「外交政策講演」(ASEANの現状と日・ASEAN関係の強化)及び分科会で5つのテーマ(「日中関係」、「日・ASEAN関係」、「農林水産物等輸出促進」、「観光客誘致のための広報戦略」及び「国際協力(中小企業等の海外展開支援等)」)について自治体職員が外部有識者、関係省庁職員や外務省職員と意見交換を行った。また、「地方連携関西シンポジウム」においては、日・ASEAN友好協力40周年を迎えたASEANに焦点を当て、「これからの日・ASEAN関係~地域レベルの観光、経済交流の促進に向けて~」をテーマとし、急成長が期待される東南アジアからの観光客誘致や経済関係の現状と課題について活発な議論を行った。さらに、外務省ホームページ内のグローカル外交ネットでは、外務省と地方自治体が連携して実施する各種施策、地方自治体の国際交流、経済交流などの国際的活動について様々な情報を提供している。

COLUMN
日・EUをつなぐ七色の架け橋 ~HAIKU~

小学校の国語の授業で俳句を詠んだことがある方は多くいらっしゃると思いますが、日本の俳句が、今では“HAIKU”として世界約70か国に広まり、各々の国の言語で親しまれていることはご存じでしょうか。日本とEUは、2009年から英語俳句コンテストを年に1回開催してきており、これまでにこのコンテストに参加した人数は、延べ2,000人を超えます。

HAIKU(1)

これは、EUの首脳の一人であるファン=ロンパイ欧州理事会議長が、東日本大震災直後の2011年5月に開催された日EU定期首脳協議で披露した俳句です。政治家としてのみならず、俳句愛好家としてもその名が知られているファン=ロンパイ議長は、2013年11月18日、正岡子規生誕の地である愛媛県松山市を訪問し、野志克仁市長を始め松山市民に温かく歓迎されました。議長は、「『俳句大使』として俳句を詠むことで人々の喜びや幸せに貢献していきたい。」と述べ、俳句への情熱を語りました。

その翌日に東京で開催された定期首脳協議では、ファン=ロンパイ議長が「People far away, But sun and stars on our flags, Belong together(離れ居て、星日の旗に、集い来る)」という俳句を披露し、これを受けて、安倍総理大臣が「降る星を、見上げる夜に、友来る」と即興で詠みました。日・EU双方の首脳が俳句を披露したのは今回が初めてのことです。日・EU関係を連想させる俳句のやりとりを通じて場が和やかになり、首脳同士の距離がぐっと縮まりました。

野志松山市長から名誉市民称号を授与されるファン=ロンパイ欧州理事会議長(於:松山城)
野志松山市長から名誉市民称号を授与されるファン=ロンパイ欧州理事会議長(於:松山城)

俳句が持つ力は、海外の方々との日本文化を通じた交流促進のみにとどまりません。俳句を詠むことは自分自身を見つめ直すきっかけともなります。その点に着目した欧州委員会は、2013年から2014年に、刑務所での矯正教育の一環として俳句講座の実施を決定しました。今後は、ベルギー、ポーランド、イタリア、ギリシャ及びセルビアの5か国にある全14の刑務所で実施することになっています。既に俳句講座が実施されたベルギーの刑務所では、参加した10人全員が、講座を通じて自分自身に向かい合ったそうです。HAIKUの潜在性にはまだまだ大きいものがありそうです。

俳句が海外と日本との架け橋として、どこかの国の誰かの喜びや幸せにつながってくれることを切に願いつつ、私もここで一句。

HAIKU(2)

欧州局政策課事務官 名倉友理絵

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