経済協力開発機構(OECD)

平成29年4月17日
(写真1)安倍総理大臣表敬の様子 安倍総理大臣表敬 (写真提供:内閣広報室)
(写真2)岸田外務大臣表敬の様子 岸田外務大臣表敬

 グリアOECD事務総長は,4月12日(水曜日)から17日(月曜日)までの日程で訪日したところ,概要及び評価は以下のとおりです。

ポイント

  • 安倍総理,岸田外務大臣のほか複数の閣僚等との会談・表敬を通じ,自由で開かれた貿易・投資の推進や,多角的貿易体制の維持・強化の重要性が再確認された。
  • グリア事務総長から,「OECD対日経済審査報告書」を公表。過去4年間のアベノミクスへの高い評価が示される一方,日本経済の課題に関する政策提言が示された。
  • 昨年の日本のOECD開発センター復帰の成果として,「第1回アジア国際経済フォーラム」を開催し,質の高いインフラ整備等について議論。
  • OECD議員連盟主催勉強会において,グリア事務総長から「対日経済審査報告書」の分析・政策提言が広く紹介され,日本とOECDとの関係が議員レベルでも強化。
  • (注1)加盟国及び一部非加盟国を対象に,マクロ経済政策,構造問題等に関する国別審査を定期的にOECDが実施しているもの。同審査は約2年に1回の頻度で行われており,審査結果は「OECD対日経済審査報告書」として公表(前回報告書は2015年4月公表。)。
  • (注2)地域が直面する課題について,OECD加盟国と非OECD加盟国が解決のための意見交換を行う,閣僚級のフォーラム。アジアでは初の開催(アフリカ,ラ米の国際経済フォーラムは既に存在し,年1回パリにて開催。)。

1 主要日程

(1)4月13日

  • 黒田東彦・日本銀行総裁への表敬
  • 榊原定征・経団連会長への表敬
  • OECD・経団連共催の「貿易投資セミナー」における基調講演
  • 麻生副総理兼財務大臣への表敬
  • 「対日経済審査報告書」の公表及び記者会見(主要テーマは,「雇用の拡大と生産性の向上を通じた包摂的成長の促進」及び「財政の持続可能性の達成」)
  • 安倍内閣総理大臣への表敬
  • 薗浦外務副大臣主催夕食会

(2)4月14日

  • 神津里季生・日本労働組合総連合会会長との朝食会
  • 第1回アジア国際経済フォーラム(外務省,OECD開発センター及び東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)共催)開会式における基調講演
  • OECD議員連盟主催勉強会における講演
  • 世耕経済産業大臣への表敬
  • 岸田外務大臣への表敬
  • 石原内閣府特命担当大臣(経済財政政策)への表敬
  • OECDとERIAとの間の協力事項に関する覚書(MOU)の改訂に係る署名式
  • グリアOECD事務総長主催レセプション

2 安倍総理大臣表敬(4月13日午後)

  • (1)安倍総理大臣は,OECD対日経済審査報告書に関連し,アベノミクスの下での日本経済の改善状況について説明し,同報告書の提言も参考にしつつ,引き続き改革を断行していく旨述べた。また,安倍総理大臣から多角的貿易体制を維持・強化することの重要性に触れつつ,OECDの貢献に期待する旨述べた。さらに,安倍総理大臣は,OECD開発センター復帰の成果としてアジア国際経済フォーラムが立ち上げられたことを歓迎するとともに,フォーラムの議題である「質の高いインフラ投資」について,国際スタンダードを確保すべくOECDと協力したい旨表明。
  • (2)グリア事務総長は,対日経済審査報告書に示されているとおり,2012年以降,日本の一人当たり実質経済成長率はOECD諸国平均並に上昇し,日本国民の生活は明らかに改善しているとして,アベノミクスの成功に対する祝意を表明。他方,特にサービス業の生産性が低いことや,高齢化と包摂的成長の両立,消費税の引き上げによる税収の確保など,日本経済には課題もあることから,OECDの政策提言を活用いただきたいと述べた。最後に,グリア事務総長より,経済分野での外交における,安倍総理大臣のリーダーシップへの期待が表明された。

3 岸田外務大臣大臣表敬(4月14日午後)

  • (1)冒頭,岸田大臣から,世界で反グローバル化や保護主義的な風潮が拡大する中,OECDと連携しつつ,自由で開かれた貿易・投資を推進していくとの決意を表明。これに対し,グリア事務総長から,自由な貿易・投資は批判にさらされているが,OECDとしても信念をもってこれらを守っていく旨の発言があった。
  • (2)続いて,グリア事務総長から,対日経済審査報告書について,特に,アベノミクスの成果として,2012年以降,日本の一人当たり実質経済成長率はOECD諸国平均並に上昇した点に言及しつつ,概略の紹介があった。
  • (3)岸田大臣からは,OECD開発センター等によるアジア国際経済フォーラムの立ち上げを歓迎するとともに,質の高いインフラ整備と資金供給の重要性を指摘し,これらの国際スタンダードづくりにOECDと協力したい旨述べた。

4 薗浦外務副大臣主催夕食会(4月13日夜)

  • (1)グリア事務総長から,OECD対日経済審査報告書の主要点に触れつつ,日本経済の現状や課題に関するOECDの分析について述べた。これに対し,薗浦副大臣は,経済分野における日本の取り組みについて説明した。
  • (2)両者は,日本とOECDの協力関係について協議を行い,特に,東南アジア諸国へのアウトリーチの重要性について一致。
  • (3)また,OECD事務局の日本人職員の比率を分担金拠出率に見合った水準に高める方策についても有意義な意見交換が行われた。

5 評価

 全体として,以下の成果があり,OECDとの協力関係の強化を通じた日本の経済外交にとって大きな進展があった。

  • (1)安倍総理,岸田外務大臣のほか複数の閣僚等との会談・表敬を通じ,世界で反グローバル化や保護主義的な風潮が拡大する中,自由で開かれた貿易・投資の推進や,多角的貿易体制の維持・強化の重要性が再確認され,「自由貿易の旗」をともに高く掲げていくことで一致。
  • (2)グリア事務総長から,「OECD対日経済審査報告書」を公表。過去4年間のアベノミクスへの高い評価が示される一方,特にサービス業の生産性の低さ,高齢化と包摂的成長の両立,財政収支の改善等,日本経済の課題に関する政策提言が示された。
  • (3)昨年の日本のOECD開発センター復帰後,初となるグリア事務総長訪日において,「第1回アジア国際経済フォーラム」を開催し,日本として重視する質の高いインフラ整備や資金供給の重要性等について議論を行った。
  • (4)OECD議員連盟主催勉強会において,グリア事務総長が「対日経済審査報告書」の内容等に基づき講演を行い,OECDの分析・政策提言が広く紹介され,日本とOECDとの関係が議員レベルにおいても強化された。

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