核軍縮・不拡散
オーストラリア・グループ(AG)総会
2018年6月4日~8日,パリにおいて,オーストラリア・グループ(AG)(生物・化学兵器関連物資・技術の拡散防止のための国際輸出管理レジーム)の総会が開催されました。同総会後に発出された議長声明(PDF)の主要点は以下のとおりです。
1 総論
AG参加国は,生物・化学兵器の拡散に対抗するための取組を強化するとのコミットメントを再確認し,特に次の措置をとることに合意した。
- シリア,イラク,英国及びマレーシアにおいて再び化学兵器が使用されたことに対して強い懸念を表明する旨の声明を発出した。
- AG参加国のためのシリア向け特別管理リストを改正した。
- 生物・化学兵器の製造及び運搬に利用され得る新たな技術,サイバー領域の悪用,科学の発展に関する意識向上を通じ,拡散者に先んじる取組を強化する。
- 利用可能な技術的情報が増加しているところ,ノビチョク及びその前駆物質に関する一般的な議論が必要であり,AG参加国は,次回総会前に議論を行うことが有益である点に同意した。
- AGとして,テロリスト及び非国家主体による生物・化学兵器の製造,運搬,攻撃を可能にする物資,技術及び情報の拡散防止にさらに注力する。
- 無形技術移転,拡散金融,調達,積替え及び幅広い拡散ネットワークによりもたらされる課題に対する,産業界及び学界への関与強化を含む取組を共有する。
- 中国を始めとするAG非参加国と協働し,また,輸出管理の執行における経験,情報,捜査活動の結果,「キャッチオール管理」に関するワークショップ開催の検討を含む活動を共有するとのコミットメントを新たにする。
- AG非参加国へのアウトリーチ,及び,全ての国が強固な輸出管理を実施し,国際的なベスト・プラクティスとしてAGの輸出管理を採用するよう奨励する継続的な取組を強化する。
2 技術的な事項
輸出審査及び執行の専門家が,生物・化学関連の機微な汎用資機材の拡散を防止する上での経験や方策について意見交換を実施した。専門家は,技術の急速な発展に追いつくための取組を共有し,より複雑化する拡散金融及びサイバー領域の悪用によりもたらされる課題について議論した。専門家は,AG規制リストに掲載されている生物・化学関連品目の管理を改善するための取組を継続し,また,研究所の安全を確保する取組を強化することに合意した。
AG規制品目リスト及びガイドラインは,AGのウェブサイトで閲覧が可能である。
3 アウトリーチ
AG参加国は,アウトリーチの対象の拡大とAG非参加国への関与強化の取組を歓迎し,2018年から2019年においても活発なアウトリーチの計画を継続することに合意した。また,貿易を阻害することなく,生物・化学兵器による攻撃を可能とする物資,技術及び情報の拡散を防止するための協調を強化する重要性について合意した。さらに,新たな技術の急速な発展や科学の発展に鑑み,産業界や学界へのアウトリーチの重要性を強調した。
2018年3月にロンドンで開催されたアフリカ諸国とのAG対話の成功を受け,AG参加国は,これまでのAG対話への参加国に対してさらなるフォローアップを実施するとともに,全ての国が強固で効果的な輸出管理を実施し,国際的なベスト・プラクティスとしてAGの輸出管理を採用するよう奨励することに合意した。
4 新規参加
AGは,複数の国からの参加申請を歓迎し,これらの国と協議していくことに合意した。2018年1月,インドのAG参加が承認された。
5 AGガイドラインの遵守
AGは,可能な限り多くの国が遵守を宣言し,AGガイドライン及び規制リストを採用するよう奨励するとのコミットメントを再確認した。AG参加国は,遵守国にはAG参加国から輸出管理における世界的なベスト・プラクティスを実施するに当たって助けとなる幅広い情報及び支援が与えられることを認識し,優先事項として,発展途上の輸出管理措置及び主要な通過・積替え拠点を持つ国に関与していくことに合意した。
6 国別の状況及び化学兵器の使用に関する声明
複数のAG参加国が,最近の事案が化学兵器禁止条約(CWC)に対して与える重大なリスク及びルールに基づく国際秩序を保護し,かつ,擁護する必要性を強調し,AG議長に対してAGとして統一声明を発出することを要請した。これに対し,AG参加国は,この忌まわしく無差別的な兵器の使用を禁じる国際法及び規範に違反し,挑戦する形で,化学兵器が再び使用されたことに対して強い懸念及び警戒感を表明した。
AG参加国は,シリア政府に対し,国際法の下での義務を尊重し,化学兵器の使用を中止するとともに,CWCの下での義務に基づいて自国の化学兵器プログラムを漏れなく申告し,完全に廃棄するよう改めて求めた。また,AG参加国は,全ての国に対して,国際法の下での義務を尊重し,化学兵器を使用せず,CWCの下での義務に基づいて自国の化学兵器プログラムについて漏れなく申告し,完全に廃棄するよう求めた。
AG参加国は,2018年3月に英国において発生し,化学兵器禁止機関(OPCW)による技術支援訪問報告により確認された,罪のない人々及び危機対応サービス隊員を重大な危機に陥れた神経剤使用事案に対して強い懸念を表明した。AG参加国は,英国による本事案に関する完全な分析に関するプレゼンテーションを歓迎し,進行中の警察による捜査の結論に期待を表明した。
AG参加国は,北朝鮮の生物・化学兵器能力に改めて懸念を表明した。2017年2月にクアラルンプール国際空港において発生した金正男殺害事案におけるVX神経ガスの使用は,化学兵器の脅威への対処の必要性を示した。
AG参加国は,CWCを擁護し,OPCWの有効性を補強し,技術事務局がその権限を執行するための追加的かつより強力な対策について,CWC締約国が議論し,見解を表明する機会として,2018年6月26日及び27日にハーグにおいてCWC特別締約国会議が開催されることを歓迎した。
AG参加国は,2018年11月に開催されるCWC運用検討会議が,化学兵器の使用の世界的な禁止の衰えを防ぐために極めて重要であると強調した。AG参加国は,CWCを擁護するための,OPCW事務局長及び技術事務局による専門的,公平かつ独立した働きを支持し,評価した。
AG参加国は,化学兵器使用への不処罰に対する闘いのための国際パートナーシップについて説明を受けた。同パートナーシップに未参加のAG参加国は,参加を奨励された。多くのAG参加国が,同パートナーシップ参加国による,化学兵器を開発及び使用した者に責めを負わせるための取組を支持した。
全てのAG参加国は,自国からの輸出が化学・生物兵器の開発・使用に貢献しないよう確保することや,また,全ての国が安全を享受できるようにするための国際的な不拡散アレンジメントを保護し,強化する助けとなる方策について,引き続き協働するとの不変のコミットメント及び決意を再確認した。
全てのAG参加国は,化学兵器の使用はいかなる場合でも許されないという点で合意した。
7 次回総会
AG参加国は,次回総会までに中間会合を開催し,効果的な実施,キャッチオール管理及びノビチョクのような神経剤及び前駆物質のリスト化等の議論を行うことが有用であると考え,中間会合の主催国を募る要請が発出された。
次回総会は,2019年6月3日から7日までパリにおいて開催される。