核軍縮・不拡散

令和4年8月2日

 2022年7月4日~8日、パリにおいて、オーストラリア・グループ(AG)(生物・化学兵器関連物資・技術の拡散防止のための国際輸出管理レジーム)の総会が開催されました。同総会後に発出された議長声明の主要点は以下のとおりです。

1 主要な成果

  • 参加国は、生物・化学兵器の拡散に対抗する取組の強化への関与を再確認した。
  • 参加国は、化学兵器禁止条約(CWC)発効25周年及び生物・毒物兵器禁止条約(BTWC)署名開放50周年に当たる本年は、世界から化学・生物兵器を完全に排除するための努力を一層強化する上で時宜を得ている点で一致した。世界は依然として生物・化学兵器による持続的な脅威に直面している。参加国は、これらの兵器の使用は、場所、時間、主体を問わず、いかなる状況下でも容認されず、国際法の下で禁止されている点で一致した。
  • 参加国は、シリアを含む過去10年間の化学兵器使用の事例を想起し、個人に対する化学兵器薬剤の使用に対する懸念を表明した。参加国は、7月8日が英国でノビチョク神経剤により毒殺された英国人スタージェス氏の命日であることを想起した。また、ロシアの野党指導者ナバリヌイ氏へのノビチョク神経剤による毒殺未遂について、徹底的かつ透明性のある調査を要請した。また、参加国は、イランや北朝鮮を含む他国での生物・化学分野での拡散活動に関する懸念について議論を行った。
  • 参加国は、化学兵器禁止条約(CWC)及び化学兵器禁止機関(OPCW)に対する強力かつ明確な支援の継続を強調し、OPCWの専門性、公平性及び完全性を支持し、賞賛した。
  • 参加国は、国際法に基づき、化学兵器を開発せず、生産せず、使用せず、あらゆる残存する化学兵器計画を完全に申告し、廃棄する義務を完全に履行することを再確認した。また、化学兵器を使用するすべての者又は化学兵器の使用を指揮、実現若しくは庇護する者に責任を負わせるために適切な行動をとることの重要性について一致した。
  • 参加国は、BTWC及びCWCの目的を達成するために効果的な輸出管理及びAGが果たす重要な役割を含む、これら条約の運用検討会議に向けた作業の重要性を強調した。
  • 参加国は、国連憲章第2条4に違反するロシアのウクライナ侵略を最も強い言葉で非難する国連総会第11回緊急特別会合決議を想起し、ロシアの生物・化学兵器使用の脅威及びウクライナ民生用生物・化学施設及びその周辺への攻撃について議論を行った。参加国は、機微な汎用品・技術の輸出管理の強化措置について議論し、各国における規制措置に言及し、不拡散の目的を推進するため一層協調して対処する方策について検討を行った。また、参加国は、ウクライナと米国に対する、生物・化学兵器に関するロシアによる根拠のない主張への懸念を表明した。
  • 参加国は、生物・化学テロの脅威が続いていること、テロ活動を支援するおそれのある調達への警戒を維持し、非国家主体による生物・化学技術及び設備の悪用への防護の必要性を認識した。
  • 参加国は、合法的な貿易の促進を継続しつつ、既存の不拡散体制を強化するための協力的な取組を支持した。輸出管理レジームは、機微な汎用品を含む協力と合法的な国際貿易を可能とするために必要な信頼、信用及び保証を提供するものである。
  • この関連で、参加国は、国際の平和及び安全を強化及び維持し、大量破壊兵器の拡散の脅威に対抗する上で、原子力供給国グループ、ザンガー委員会 、ミサイル技術管理レジーム及びワッセナー・アレンジメントの役割を補完するAGの中心的な役割を再認識した。
  • 参加国は、国連安保理決議第1540号に基づき設立された委員会が果たす重要な役割を認識した。参加国は、G7等他の不拡散団体による有益な活動について説明を受けた。

2 技術的な事項

  • 審査及び執行の専門家は、機微で汎用性のある化学物質、生物材料及び関連機器・技術の拡散を防止するための経験及び最良の慣行を共有した。
  • 参加国は、無許可の無形技術移転(ITT)を防止することの重要性を強調した。参加国は、ITTのリスクを適切に管理するための方法を開発及び導入し、産業界及び学術界に周知するための協力を含む最良の慣行及び経験を共有した。
  • 参加国は、急速に進展する汎用技術に対応するための取組を共有した。参加国は、合成生物学、新たな送達制度等の新たな発展技術や、その発展が不拡散や輸出管理に及ぼす影響について議論した。
  • 参加国は、AG規制品目リストが国際的な最良の慣行の基準であることに留意し、新たな脅威に対応するためAG規制品目リストへの新たな品目の追加や適切でなくなった品目の削除を含め、規制品目リスト上の生物・化学品目に適用される管理の精査を継続した。
  • 規制品目リスト及びガイドラインは、AGのウェブサイトで閲覧が可能である。

3 アウトリーチ

  • 参加国は、非参加国へのアウトリーチ及び働きかけの計画を積極的に継続することで一致した。
  • 参加国は、産業界及び学術界との連携及びこれらへのアウトリーチの重要性を強調した。

4 遵守

  • 参加国は、輸出管理措置の整備国、主要な通過及び積替え拠点を有する国を含むできるだけ多くの国がAGガイドライン及び規制品目リストを適用することの重要性を再確認した。
  • 参加国は、チリによるAG規制品目リスト及びガイドラインの一方的遵守の意思を歓迎した。

5 次回の中間会合及び総会

  • 参加国は、2023年初頭に中間会合を主催するイタリアの申し出への謝意を表明した。
  • 参加国は、2023年後半にパリで次回の総会を主催するフランスの申し出を受け入れた。

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