アジア
第8回日本・メコン地域諸国首脳会議


7日,午後8時15分(現地時間)から約45分間,ラオス・ビエンチャンにおいて,第8回日本・メコン地域諸国首脳会議(日・メコン首脳会議)が開催され,我が国から安倍総理大臣が出席し,ラオスとの共同議長を務めたところ,概要は以下のとおりです(メコン地域諸国から,ラオス人民民主共和国のトンルン・シースリット首相(H.E. Dr. Thongloun Sisoulith,Prime Minister of the Lao People's Democratic Republic)(共同議長),カンボジア王国のフン・セン首相(Samdech Akka Moha Sena Padei Techo Hun Sen, Prime Minister of the Kingdom of Cambodia),ミャンマー連邦共和国のアウン・サン・スー・チー国家最高顧問(H.E. Ms. Aung San Suu Kyi, State Counselor of the Republic of the Union of Myanmar),タイ王国のプラユット・ジャンオーチャー首相(H.E. Mr. Prayuth Chan-o-cha, Prime Minister of the Kingdom of Thailand),ベトナム社会主義共和国のグエン・スアン・フック首相(H.E. Mr. Nguyen Xuan Phuc, Prime Minister of the Socialist Republic of Viet Nam)が出席。)。会議において,「日メコン連結性イニシアティブ」のもとで優先的に取り組むプロジェクトをとりまとめた文書が発出(日本語(PDF)/英語(PDF)
)されました。
1 冒頭
(1)共同議長のトンルン・ラオス首相より,今次会議を安倍総理大臣と開催できることを喜ばしく思う,日メコン協力は2009年の設立以来,「新東京戦略2015(PDF)」や「日メコン行動計画(PDF)
(以下,行動計画)」等を採択し,インフラの整備や人材育成を実施し,具体的な成果につながっている,日本政府及び日本国民に感謝,ラオスは協力の強化に注力していく旨述べた。
(2)安倍総理大臣より,世界経済の見通しに対する下方リスクが高まる中,6億人の巨大市場を有するASEAN経済の強靱性強化は喫緊の課題であり,潜在力に富むメコン地域の成長が重要,日本は質の高いインフラ整備に対する中長期のリスクマネーを供給していく,5年間で約2,000億ドルの資金を供給する「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」等を用いて,「メコン産業開発ビジョン」で掲げた2020年までのメコン地域のGDP200億ドル押し上げに貢献したい旨述べた。
2 日メコン協力
(1)安倍総理大臣より,日メコン協力について以下のとおり述べた。
ア 「新東京戦略2015」の一番目の柱であるハード連結性に対する日本の取組は加速化。3年で7,500億円の支援は,一年目である本年4月以降で既に3分の1以上を実施。メコン諸国と共に策定した「行動計画」,「メコン産業開発ビジョン」及び「ワークプログラム」を踏まえ,「日メコン連結性イニシアティブ」を通じ,メコン各国とともに優先的に実施すべきODAプロジェクトリストを作成できたことを歓迎。同イニシアティブの下,「生きた連結性」の実現を支援していく。
イ 近年,メコン地域への日系企業の進出は急増。更なる投資拡大には,投資家に利益をもたらすような環境整備が不可欠。企業が安心して継続的な投資を行えるよう,メコン地域における法制度整備支援を実施。各国自身の今後の取組にも期待。
ウ ソフト面では,「産業人材育成協力イニシアティブ」を通じ,メコン各国が必要とする人材ニーズを踏まえ,効果的な取組を実施。また,「Innovative Asia」事業の下,2017年度からの5年間でアジアの途上国から計1,000人の留学生を受け入れる予定。今週,日越大学の修士課程が開設予定であり,次世代を担う高度人材の育成も強化していきたい。
エ ラオスとカンボジアとの航空協定が発効。先週,プノンペン・成田間の直行便が就航したことを歓迎。一層の人的交流を期待。
オ 日本は,優れた医療技術の国際展開のため,現地の医師や看護師等を対象とした研修や,感染症の基礎的研究の推進を実施。
カ 自然災害への対処や水資源の持続的な利用はメコン地域の死活的な課題。各国の防災能力向上のため,本年11月に「『世界津波の日』高校生サミットin黒潮」を開催する。脆弱なインフラは結果として成長を妨げる。この観点からも,「質の高いインフラ」をメコン地域に展開していく。メコン河流域の環境保全,特に森林資源の保護に資するプログラム形成のため,調査を開始したい。
(2)これに対し,メコン諸国より,概要以下の発言があった。
ア 日メコン協力の進捗を歓迎。日本からのメコン地域への支援はメコンの社会・経済発展に貢献しており,日本国民及び日本政府に対し,心から御礼申し上げる。この一年で,外相会議及び経済大臣会合で,「行動計画」,「産業開発ビジョン」や「ワークプログラム」といった重要な文書を採択してきた。
イ 「新東京戦略2015」の3本柱に基づく支援は持続的な開発に貢献。メコン地域は高い潜在性をもっている。日メコン協力は,メコン各国及び地域全体の社会・経済の発展や,メコン域内の格差是正を通じ,円滑な統合を進めることを可能にしている。本年はASEAN共同体発足の年であり,日メコン協力はASEANの経済統合を促すもの。
ウ 「新東京戦略2015」や「行動計画」のもとで,質の高いインフラをメコン地域全体で整備していることに感謝。本年の日メコン外相会議で設立された日メコン連結性イニシアティブ(PDF)を支持。シニア・レベル・ワーキング・グループの開催により,回廊別に深い議論ができたことを歓迎。本年7月にJICAとNEDAでパートナーシップ合意が締結されたことを歓迎。幅広い様々な成果がこのイニシアティブのもとで生まれ,貿易投資や,海・空・陸・デジタル面等,様々な分野における連結性の強化につながることを期待。9月1日の成田・プノンペン間の直行便の就航により,人的交流の拡大を期待。
エ メコン諸国は日本と経済回廊で協力したい。また,投資や貿易の促進も強化していきたい。この3年間で,約1,000社の日系企業がメコン地域で事業を開始。雇用の創出を促している。中小企業に対する支援に感謝。
オ 「産業人材育成協力イニシアティブ」を支持。人材の育成は物理的な連結性を強化。また,日越大学は特筆されるべき協力である。
カ 女性のエンパワーメントは社会の様々な課題に対応していくために重要。日本・ASEAN女性エンパワーメントファンドの設立を歓迎。新たな生活様式や,高齢化に伴う課題である健康に関する課題への取組も重要。
キ 自然災害はメコン地域の喫緊の課題。食料安全保障,気候変動,災害に強靱な社会の構築が重要。電力分野の協力や,水不足への対応について,協力していきたい。農業発展についても協力が重要。本年6月にタイと日本が共催したグリーン・メコン・フォーラムを通じ,持続可能な開発を促進。
3 地域・国際情勢
安倍総理より,メコン地域の更なる成長と発展には,地域の平和と安定が不可欠,日本は,平和安全法制を含む,国際協調主義に基づく積極的平和主義の下,地域の平和と繁栄に今後も貢献していく,この観点からも,昨年11月のミャンマーの総選挙や,タイでの新憲法草案の国民投票が平穏裏に実施されたことを歓迎する旨を述べた。参加国からは,相互理解,信頼に基づく,平和と安定のためのあらゆる措置を支持する旨の発言があった他,南シナ海情勢や北朝鮮をめぐる諸懸念等の地域情勢についても議論が行われた。