報道発表
インドに対する円借款に関する書簡の交換
1 本31日(現地時間同日),インドの首都ニューデリーにおいて,我が方八木毅駐インド大使と先方ラジェシュ・クッラー財務省経済局局長(H.E. Mr. Rajesh Khullar, Joint Secretary, Department of Economic Affairs, Ministry of Finance)との間で,総額2,519億6,600万円を限度とする円借款5件に関する書簡の交換が行われました。このうち,下記2,(1),(2)及び(3)の支援は,本年1月の日印首脳会談において安倍総理からシン首相に対して表明していたものです。
2 対象案件の概要
(1)デリー高速輸送システム建設計画(フェーズ3)(第二期)(1,488億8,700万円)(案件位置図(PDF))
インドのデリー首都圏の人口は,1991年の942万人から2011年には1,675万人に増加しており,2021年には2,432万人に達すると見込まれています。また,自動車数の伸びも著しいため,交通渋滞が深刻化し,これに伴う大気汚染対策も重要な課題となっています。我が国は1996年度から2009年度にかけてデリー首都圏における高速輸送システム建設計画の実施のため,総額3,748億円の円借款を供与し(フェーズ1及びフェーズ2),同システムはデリー市民の足として定着しています。
この計画はそのフェーズ3として,2011年度に行った第一期借款(1,279.17億円)に引き続き,6路線6区間(計約116キロメートル)の大量高速輸送システムを建設するものです。これにより,都市環境の改善と地域経済の一層の発展に寄与することが期待されます。
(2)新・再生可能エネルギー支援計画(フェーズ2)(300億円)
インドにおいては,近年の経済成長に伴いエネルギー消費の増加が続いており,また,電源設備容量の57%を石炭火力発電に依存(2012年)する偏ったエネルギー供給構造となっています。
この計画は,2011年度に供与したフェーズ1(300億円)の後続案件として,インド再生可能エネルギー開発公社(IREDA)を通じて,発電事業者等に対し,新・再生可能エネルギーの開発事業等に必要な中長期資金を供与するものです。これにより,安定的な電力供給の確保及び電力供給源の多様化を図り,インドの環境改善,持続的な経済発展及び気候変動の緩和に寄与することが期待されます。
(3)中小零細企業・省エネ支援計画(フェーズ3)(300億円)
インドにおいては,近年の経済成長に伴いエネルギー消費の増加が続いており,エネルギーの効率的な利用を進めることが急務となっています。このような中,インド全体の製造業の約45%を占める中小零細企業については,設備の老朽化等によりエネルギー効率が低く,大企業と比較して省エネルギーのための資金調達能力や技術・ノウハウも限られています。
この計画は,2008年度に供与したフェーズ1及び2011年度に供与したフェーズ2(それぞれ300億円)の後続案件として,インド小企業開発銀行(SIDBI)を通じて,インドの中小零細企業に対し,主に省エネルギーの取組(一部医療分野)に必要な中長期資金を供与するものです。これにより,インドの中小零細企業による省エネルギーへの取組推進を図り,インドの環境改善,持続的な経済成長及び気候変動の緩和に寄与することが期待されます。
(4)ハリヤナ州配電設備改善計画(268億円)(案件位置図(PDF))
インドにおいては,近年の経済成長に伴いエネルギー消費の増加が続ける一方,供給能力が需要の拡大に追いついておらず,インド北部のハリヤナ州においても,2012年末時点で,電力供給量は年7.7%強の不足,ピーク時出力は9.5%の不足でした。このため,新規電源開発や送配電網の整備及び送配電ロス率低下が急務となっています。
この計画は,ハリヤナ州において,配電線の新設・張替,変電所の新・増設,自動検針電力計等の導入,メーターボックスの設置等を実施するものです。これにより,配電ロス率の低減及び電力の安定供給の達成を図り,地域の経済発展及び生活水準の向上に寄与することが期待されます。
(5)アグラ上水道整備計画(II)(162億7,900万円)(案件位置図(PDF))
インド北部ウッタル・プラデシュ州のアグラ市はインド有数の観光地ですが,同市及び周辺地域の急増する生活用水や商業用水等の需要に上水供給量が追いついていません。さらに,同市及び周辺地域への給水源であるヤムナ河は,上流に位置するデリー等の大都市からの未処理下水が流入することで水質汚濁が進み,浄化のために大量の塩素の使用が必要であるため浄化コストが高くなるとともに,健康面への影響等が懸念されています。
この計画は,2006年度に供与し2007年から事業を開始している「アグラ上水道整備計画」に対し,資機材価格の高騰等を理由とする事業費の増加に対処するため,追加的に円借款を供与し,アグラ市及びその周辺地域向けの導水施設の建設,アグラ市の既存の上水道施設の改修・拡張等を行うものです。これにより,安全かつ安定的な上水道サービスの提供を図り,同地域の貧困層を含む住民の生活環境の改善に寄与することが期待されます。
3 供与条件
(1)上記2.(1)及び(5)
(ア) | 金利 | : | 年1.40%(コンサルティングサービス部分は年0.01%) |
(イ) | 償還期間 | : | 30年(10年の据置期間を含む。) |
(ウ) | 調達条件 | : | 一般アンタイド |
(2)上記2.(2)
(ア) | 金利 | : | 年0.25% |
(イ) | 償還期間 | : | 30年(10年の据置期間を含む。) |
(ウ) | 調達条件 | : | 一般アンタイド |
(3)上記2.(3)
(ア) | 金利 | : | 年0.15% |
(イ) | 償還期間 | : | 15年(5年の据置期間を含む。) |
(ウ) | 調達条件 | : | 一般アンタイド |
(4)上記2.(4)
(ア) | 金利 | : | 年0.80% |
(イ) | 償還期間 | : | 20年(6年の据置期間を含む。) |
(ウ) | 調達条件 | : | 一般アンタイド |
4 なお,上記2.(1)から(4)までの案件は,我が国が2013年11月に策定した攻めの地球温暖化外交戦略「Actions for Cool Earth: ACE」の中で表明した,2013年から2015年までの3年間の気候変動分野における途上国支援策計1兆6,000億円の一環として実施するものです。我が国としては,すべての国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築に向け,インドと引き続き気候変動分野で連携していきます。
(参考)
インドは,面積約329万平方キロメートル,人口12億1,000万人(2011年国勢調査暫定値),人口1人当たりのGNI(国民総所得)1,580米ドル(2012年,世銀)。