わかる!国際情勢
日本とアフリカの関係は、次のステージへ
第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)を終えて
TICAD 9のロゴ
(横浜の海の青を、アフリカの各国が国旗にも掲げる緑と合わせ、生い茂る、雄大に成長するイメージを持つ色である碧色を用いており、会議が記憶に残るよう、アフリカ大陸を9に見立てシンプルながら力強い文字で表したもの。)
TICADとは
出典:政府広報オンライン「HIGHLIGHTINGJapan」2025年8月号
より「TICADのあゆみ」
2013年に横浜で開催されたTICADV以降、TICADは3年ごとにアフリカと日本で交互に開催されることとなり、2025年8月20日から22日には横浜で第9回目のTICADが開催されました。
TICADの特徴
冷戦終結後から始まったTICADは、国際社会の中でアフリカへの関心を喚起する起点となりました。30年間変わらないアフリカのオーナーシップの尊重と国際社会のパートナーシップというキーワードの下、TICADの先駆性や、国際機関、第三国、企業、アカデミア、NGO等を含む包摂性、オープンさ、といった特長は、他の国際的なフォーラムにはない日本の強みです。
成長著しいアフリカは、21世紀最大のフロンティアと言われています。アフリカの人口増加や経済成長率などアフリカの目まぐるしい成長、市場規模、豊富な資源など、日本企業にとってアフリカは、新たなビジネスチャンスや投資機会を提供する魅力的な市場であると言えます。
日本はこれまでアフリカの開発支援も行ってきましたが、資金や物資の提供のみを行うのではなく、人材を育成しながら、質の高いインフラや制度の維持強化を図り、一緒に課題解決に取り組むのが、日本の特徴です。
TICAD 9
1 参加国・参加機関
TICAD 9集合写真
日本は、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)と共同でTICAD 9を開催しました。TICAD 9には、33名の首脳級を含むアフリカ49か国が参加しました。
2 TICAD 9のテーマ及び成果
TICAD 9のテーマ
TICAD 9の閉会式「TICAD 9横浜宣言」を採択
TICAD 9では、アフリカが直面する諸課題に対し、日本の技術と知見を活かした革新的な課題解決を共に創り上げていくことをテーマとして、「経済」、「社会」、「平和と安定」の3分野から様々な議論が行われました。その中でも焦点があてられた、「民間セクター主導の持続可能な成長」、「若者・女性」、「域内統合及び域内外との連結性強化」といった横断的なテーマも含めて、幅広い分野において日本とアフリカが協力していくことを記した「TICAD 9横浜宣言(PDF)
」が採択されました。
具体的には、特に以下の7つの分野にて日本として取り組みを加速していくことを表明しています。
- (1)アフリカへの投資促進
- (2)民間資金動員の促進
- (3)AI・DXの活用と鉱物資源サプライチェーンの強靱化を含む産業協力強化
- (4)アフリカ域内外の連結性強化
- (5)保健政策の強化
- (6)若者・女性に焦点を当てた人材育成・人材交流
- (7)アフリカの平和と安定に向けた取組の進展
また、アフリカにおける課題解決のために尽力している日本企業をはじめとした、民間セクターと公共セクターが意見交換を行う場としての官民ビジネス対話や、国際機関、民間企業、市民団体等による200以上のテーマ別イベントも開催されました。
3 ビジネス促進
協力文書披露式典の様子
TICADVで、「援助から民間投資へ」という考えが打ち出されて以降、日本企業のアフリカへの関心は益々増してきています。今回のTICAD 9ではTICAD8の3倍超となる324件のビジネス関連の協力文書が結ばれたこと、また、テーマ別イベントとしてJETROが主催したTICAD Business Expo & Conferenceに過去最大の194企業・団体が出展し、日・アフリカ双方の企業関係者等約1万人が参加したことは、まさしくその証左と言えるでしょう。
日本政府としても、日本企業の対アフリカビジネスの勢いを更に後押ししていくため、官民連携の取組として、TICAD 9の機会に、インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ、ナカラ回廊開発に関する広域オファー型協力、日アフリカの経済連携強化に関する産学官検討委員会、そしてアフリカ保健投資促進パッケージ等の具体的な取組を多数表明しました。
4 若者の活躍にも注目
Youth Forumの様子
模擬アフリカ連合会議の様子
アフリカの人口の年齢の中央値は19歳。TICAD 9では、こうした若者のあふれるパワーを成長の活力としていくため、AIや保健分野等での人材育成を促進していくことも表明しました。
また、TICAD 9当日には若者によるイベントが多く開催され、8月20日には若者版TICADとして日本とアフリカの若者延べ約400名が参加したYouth Forumが開催されました。このイベントでは、主に日本とアフリカの900人以上の若者が1年以上の議論を重ねて策定したユース提言“Youth Agenda 2055:The Future We Want”を発表し、大人とは違う視点からアフリカと日本の未来を描き出しました。
さらに、模擬国連に倣った模擬アフリカ連合会議も実施され、日本とアフリカの学生・若者がチームを組み、アフリカ連合各加盟国代表を模して経済、政治、科学・技術をテーマに意見を述べ合い、3つの総会決議を採択しました。TICAD 9の最終日には、ユース代表がTICADの全体会合と閉会式に出席し、TICAD 9参加者に対して若者の大きな存在感を示しました。
TICAD10に向けて
現在、アフリカとのパートナーシップを重視する国は日本以外にもたくさんありますが、30年以上前にアフリカへの関心が停滞しつつあった国際社会において、日本はアフリカとの関係をいち早く重視し、TICADを通してアフリカ諸国との歴史を積み上げてきました。TICAD 9を踏まえ、日本・アフリカ双方がお互いの強みを生かしながら、日本・アフリカ・世界が抱える諸問題の解決策やアフリカの成長につながる解決策を共に創り上げる、信頼できるパートナーとして協力を続けていきます。
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