わかる!国際情勢

令和7年7月2日
日本・サウジアラビア王国外交関係樹立70周年公式ロゴ
サウジアラビアの世界遺産「アル-ヒジュル古代遺跡」

 2025年、日本とサウジアラビア王国は1955年に外交関係を樹立してから70周年を迎えました。
 サウジアラビアは、アラビア語で「サウード(家)によるアラブ(の王国)」という意味を持つ君主制の王国です。アラビア半島の大部分を占める国土面積は約215万平方キロメートル(日本の約5.7倍)、人口は約3,217.5万人(日本の約1/4)、北はヨルダンやイラク、東はペルシャ湾、西は紅海に面しています。
 サウジアラビアは、日本が輸入する原油の約40%を供給しており、日本のエネルギー安全保障の要ともいえる極めて重要な国です。加えて、アラブ・イスラム世界の中心的存在として、サウジアラビアは中東地域や国際社会の平和と安定において重要な役割を果たしています。日本はこうした背景を踏まえ、サウジアラビアとの戦略的パートナーシップを重視してきました。ここでは、各主要分野で、両国の関係と協力が近年どのように進んでいるか、政治・経済分野を中心に紹介します。
 本年5月に岩屋外務大臣がサウジアラビアを訪問した際にSNS発信したショート動画はこちら(動画)別ウィンドウで開くから。

1 エネルギー分野での協力

ライトハウス・イニシアティブが公表された日・サウジアラビア首脳会談(2023年7月) (写真提供:内閣広報室)
ジッダ港に寄港した水素運搬船「すいそふろんてぃあ」を視察する アブドルアジーズ・エネルギー相とファーレ投資相(2023年7月) ジッダ港に寄港した水素運搬船「すいそふろんてぃあ」を視察するアブドルアジーズ・エネルギー相とファーレ投資相(2023年7月)

 長年にわたり、サウジアラビアは日本にとって最も重要な原油供給国の1つであり、両国はエネルギー分野で相互の信頼を築いてきました。この信頼関係は、現在、原油取引に留まらず、水素やアンモニアを含む次世代エネルギー等の分野での連携へと拡大しています。
 2023年7月、岸田総理(当時)によるサウジアラビア訪問の際に、両国間で「ライトハウス・イニシアティブ」という新たな協力枠組みが打ち出されました(首脳会談)。この灯台(lighthouse)構想の下で、両国は中東をクリーンエネルギーや重要鉱物のグローバルな供給ハブとするため、重要鉱物の探査や精製、水素・アンモニアの製造・利用、e-fuelの活用等の分野で協力を進めており、日本企業及び機関も研究・開発、先端技術の実証実験、技術の普及・実装等に関与しています。
 エネルギー移行を進めるにあたっては、エネルギー安全保障・経済成長を損なわない形で、各国の事情に応じた多様な道筋の下で行う必要があり、両国間で産油国と消費国の対話と連携が重要です。両国間のこうした取組は、エネルギーの脱炭素化と経済成長の両立を目指す日本にとって、地政学的にも経済的にも極めて重要な意義を持っています。

2 外交・安全保障分野での連携

第1回日・GCC外相会合(2023年9月リヤドにて)
第2回日・サウジアラビア外相級対話における戦略的パートナーシップ協議会(SPC)設立に関する覚書署名(2025年1月)

 イスラム教の二大聖地を有するサウジアラビアは、アラブ・イスラム世界で高い権威を有し、国際関係においても、湾岸協力理事会(GCC)、アラブ連盟(LAS)、イスラム協力機構(OIC)で中核的な地位を占めています。また、日本と同じG20のメンバーとして、世界経済や国際的な安全保障の分野でも、重要な役割を担っています。
 近年では、パレスチナ問題に関する国際会議の主催や、スーダンにおける人道状況解決への関与、さらにはウクライナ情勢に関する関係国の協議の開催地としての役割等、国際的な仲介・調整役としての地位を強めています。
 こうした中、日本は、両国首脳が議長を務める戦略的パートナーシップ協議会(SPC)、外相級戦略対話(第2回戦略対話)、政策対話、さらには日・GCC外相会合(第1回会合)といった国際的な枠組みを通じても、外交・安全保障面での緊密な意思疎通と政策協調を図っています。

3 経済成長の勢いを共有

日・サウジ・ビジョン・2030閣僚級ラウンド・テーブル(2025年1月)
ジッダでの自動車省エネセミナーの開催(2025年2月)

 サウジアラビアは、30歳以下の若年層が全人口の約60%を占める若く活力が溢れる社会です。この活力を背景に、現在、同国では包括的な経済社会改革を目指す国家戦略「サウジ・ビジョン2030」の下で、脱炭素化、産業の多角化、文化・娯楽・スポーツの推進といった取組が進められており、ギガ・プロジェクトと呼ばれる大型開発事業(都市開発、観光インフラ等)が数多く展開されています。日本企業は、伝統的にサウジアラビアにおける淡水化、エネルギー、石油化学等の分野でインフラ整備や産業政策に貢献してきました。これに加え、2016年にムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(2025年現在の皇太子兼首相)の訪日に際して、両国間で「サウジ・ビジョン2030」実現に向けた包括的な協力枠組みとして「日・サウジ・ビジョン2030」が発足し、従来の協力分野に加え、宇宙、ヘルスケア、エンターテインメント、学術・研究といった幅広い分野で協力が進められています。

4 ソフトパワー外交等

訪日したファイサルeスポーツ連盟会長と深澤外務大臣政務官(当時)の会談(2024年9月、東京ゲームショウ2024会場内にて)
ファイサルeスポーツ連盟会長と武藤経済産業大臣の会談(2025年1月、リヤドにて) (写真:経済産業省提供)

 日本と同じ君主制国家であるサウジアラビアでは、日本の皇室に対する敬愛が深く、皇室・王室間の交流は両国の友好関係の柱になってきました。
 また、サウジアラビア国内では日本文化への関心が高く、近年はアニメ、マンガ、ゲームといった日本のコンテンツが大変な人気を集めています。こうした文化をきっかけに、日本への親しみが広がる一方、日本のコンテンツ産業への投資や提携も加速しています。

 スポーツの分野でも、柔道、サッカー等の競技やオリンピックの分野でも交流が進められています。さらに、これまで多くのサウジ人学生が日本に留学しており、現在、その多くが両国の架け橋としてさまざまな分野で活躍しています。
 こうした草の根レベルの文化交流や人的交流は、相互理解とソフトパワー外交の有効な手段として機能しています。

サウジアラビア柔道連盟では日本人コーチが指導にあたっている。松本外務大臣政務官の視察時(2025年1月)
リヤドにおける日本大使主催の日本留学帰国サウジアラビア人留学生向けイフタール会(2025年3月)

 2025年4月に開幕した日本国際博覧会(大阪・関西万博)において、サウジアラビアは外国パビリオンとして最大規模の展示を行い、「より良い未来のために一緒に」とのメッセージのもと、自国の歴史、現状、未来への取組を発信し、大変な人気を博しています。
 大阪・関西万博の成功は、2030年にサウジアラビアの首都リヤドで開催予定のリヤド万博へとバトンを受け渡す重要な布石となるでしょう。
 さらに、昨年(2024年)12月には、2034年の男子サッカーワールドカップ(W杯)の開催国がサウジアラビアに決定されました。
 外交関係樹立70周年を迎え、日本とサウジアラビアの関係はますます多層的かつ未来志向のものとなっています。政府だけでなく、企業、市民、学術機関等あらゆる担い手がこの関係の発展に参加することで、両国の戦略的パートナーシップがさらに強固なものとなることが期待されます。

わかる!国際情勢へ戻る