わかる!国際情勢

令和6年5月23日
カリコム加盟国と日本の国旗の色の折り紙を重ね、鮮やかな一輪の花が表現された「JAPAN CARICOM FRIENDSHIP YEAR 2024」のロゴマーク 日・カリブ交流年2024ロゴマーク

 2024年は日・カリコム事務レベル協議を開始してから30年が経過し、さらにジャマイカ及びトリニダード・トバゴとの外交関係樹立60周年にあたります。これらを記念して制定した「日・カリブ交流年2024」にちなみ、今回はカリブ共同体諸国について紹介するとともに、日本とカリブの交流について解説します。

カリコム(CARICOM:カリブ共同体)とは

カリブ共同体(カリコム)とは?(カリコムの旗と14か国及び1地域の旗、左下に地図)

 カリブ海には大小様々な島国があり、カリブ海沿岸にも多数の国があります。1973年に域内の経済統合、加盟国間の外交政策の調整などを目指して設立されたのが、カリブ共同体(CARICOM:カリコム)です。現在、カリコムに加盟している島国は、アンティグア・バーブーダバハマバルバドスドミニカ国グレナダハイチジャマイカセントクリストファー・ネービスセントルシアセントビンセント及びグレナディーン諸島トリニダード・トバゴの11か国、そしてカリブ海沿岸国である、ベリーズガイアナスリナムの3か国の、合わせて14か国及び1地域(英国領モンセラット)です。

 他の中南米諸国はスペイン語圏の国が多いのに対し、カリブ共同体の国々は、英国の植民地であった影響から、旧仏領でありフランス語圏のハイチ、旧蘭領でオランダ語を公用語とするスリナムの2か国を除き、14か国中12か国が英語を公用語としています。

国際場裡での重要性

 1804年にフランスから独立したハイチと1975年にオランダから独立したスリナムを除き、カリコム諸国は1960年代から1980年代にイギリスから独立した、比較的新しい国家です。カリコム14か国は島国ないしカリブ海に面する沿岸低地国であり、人口も小規模な国家が主となっています。人種としては、国毎に特徴はあるものの、サトウキビ等のプランテーション労働力としてアフリカから連れてこられたアフリカ系の末裔が主となっています。こうした歴史的経緯に由来する共通項も踏まえ、カリコム諸国は経済・通貨・金融政策を統一した単一市場を形成することを目標としており、外交政策を調整して国連などの場でまとまった行動を取る傾向にあるほか、社会的・文化的・技術的発展のための様々な協力等を行っています。

 カリコム14か国は国連加盟国数の7%を占めており、国際場裡でも数的存在感を持つことに加え、民主主義等の普遍的価値や原則を共有するなど、外交的存在感は大きく、昨今、国際的取組において、カリコム諸国のプレゼンスは益々高まっています。

多様性に富んだ国々

トリニダード・トバコのカーニバルの様子
ジャマイカ・ナショナル・スタジアム敷地内にある、ボルト像

 一方で、カリコム諸国は多様性に富んだ世界でもあります。産業構造も、海底油田や天然ガス、金、ボーキサイト等のエネルギー・鉱物資源を有するトリニダード・トバゴ、ガイアナ、スリナム、ジャマイカ、といった国が存在する一方、主な外貨収入源をもっぱら観光に頼っているベリーズ、バハマ、セントルシアといった国もあります。

 また、一人あたりの国民総所得(GNI)が1,610ドルのハイチから、31,520ドルを超えるバハマまで、経済格差もあります。

 文化も多様性に富んでいます。ジャマイカで誕生した「レゲエ」は、世界中にファンが多く、R&B、ジャズ、ソウル、ヒップホップなど異なったジャンルの音楽が融合したクロスオーバーも見られるなど、非常に存在感があります。トリニダード・トバゴで誕生したドラム缶から作った打楽器「スティールパン」は、日本でも近年人気が高まってきています。その他、カリブの海賊たちに愛されたという「ラム酒」や、世界的にも有名なトリニダード・トバゴの世界三大カーニバルの一つである「カーニバル」、人々の日常生活や農村風景、動植物等を素朴かつ独特の作風で豊かに描いた「ハイチ絵画」も有名です。

 さらに、スポーツについても、旧英国植民地国では一般的にクリケットが人気ですが、ジャマイカのウサイン・ボルト氏に代表されるように陸上競技、特に短距離走種目も盛んです。

島嶼国の脆弱性克服に向けて

ベリーズの「ブルーホール」
ベリーズのマヤ遺跡

 カリブ海の島々と言えば、温暖な気候やエメラルドグリーンの海と白浜、クルーズ船、豊かな自然を楽しむ観光が盛んです。「ブルーホール」に代表されるベリーズの珊瑚礁保護区や、“双子の山”と呼ばれるセントルシアのピトン山などの世界遺産、ベリーズのマヤ遺跡はよく知られています。 しかし、観光業が主な産業であるということは、地理的に近い欧米諸国を含めた世界経済の状況に左右されるということを意味します。国土が狭く人口が少ないため、国内の生産や市場規模が小さく、生活必需品や食料、エネルギーを輸入しているなど、外部経済に依存する面が大きく、経済的に脆弱であるという側面も有しています。特に新型コロナ禍で人の移動が停止したことによる経済的被害は甚大となり、カリコム諸国の脆弱性が改めて浮き彫りになりました。

 また、カリブ海地域はハリケーン等自然災害が多発する地域であり、一度被害が生じると、国全体に非常に大きな被害が生じ、そこからの復興は容易ではありません。また、気候変動の影響もあり、近年ではサルガッサム海藻の大量来遊がカリブ諸国で深刻な問題となっており、海藻が海岸を埋め尽くすことによる水産業や観光業への深刻な影響など、新たな問題も発生しています。

 このように、大多数のカリコム諸国は日本と同じく島国であり、ハリケーンや地震等共通の課題があることから、日本は、防災分野や気候変動分野を中心に経験の共有と協力を行っています。

カリコム諸国との交流

 日本は、ジャマイカトリニダード・トバゴバルバドスベリーズハイチに大使館を設置しており、カリコム諸国との友好関係を促進するために日々連絡を密にしています。また、「日・カリコム事務レベル協議」はこれまで19回、「日・カリコム外相会合」も7回開催しています。

 そして、交流の深化においても、海外の英語母語話者を中心に日本で語学指導等を行う「JETプログラム」事業を通じ、多くのカリブ諸国からの教員が日本の学校で英語を教え、また、若手外交官や行政官を対象とした対日理解促進交流を目的としたJuntos!!招へいプログラム等を通じ、市民レベルでの信頼や相互理解の強化を行ってきました。

「日・カリブ交流年2024」

日・ジャマイカ外相会合

 2024年は日・カリコム事務レベル協議開始後30年が経過した年であるとともに、ジャマイカ及びトリニダード・トバゴとの国交樹立60周年にもあたります。これを記念し、日本とカリコム諸国との間で2024年を「日・カリブ交流年2024(Japan-CARICOM Friendship Year 2024)」と定め、日本とカリブとの外交関係を一層強化していく年と位置づけ、交流を深めることを目的とした記念事業を日本及びカリコム諸国の双方で実施しているところです。10年ぶり二度目となる「日・カリブ交流年」は、次の10年間に向けたカリコムとの協力関係を一層強化する年となります。

 交流年の事業として認定されたイベントには、広く一般から募集した上で選定した日・カリブ交流年のロゴマーク(カリコム加盟国と日本の国旗の色をイメージした折り紙を重ね、鮮やかな一輪の花を表現)を付しています。このコラムの冒頭にあったのが、そのロゴマークです。

 交流年開始の機会を捉え、2024年2月には、カリコム外交・共同体関係理事会会議(COFCOR)の議長国であるジャマイカのジョンソン=スミス外務・貿易大臣が外務省賓客として訪日し、上川外務大臣との間で外相会談を実施したほか、ジャマイカとの外交関係樹立60周年を記念するレセプションが行われました。

 同年3月には、バーネット・カリコム事務局長が閣僚級招へいで訪日し、上川外務大臣柘植外務副大臣と会談を行い、日本とカリコムとの間で一層の相互理解と国際社会での連携を促進する旨確認しました。また、同訪日の際には、日・カリブ交流年記念レセプションを開催し、日本及びカリコム諸国の架け橋となるJuntos!!若手外交官・行政官招へいスキームを通してカリコム諸国から来日していた若手外交官・行政官14名も参加しました。

 このようなプログラムや「日・カリブ交流年2024」を通じた様々な機会を通じ、今後さらに、日本とカリコム諸国の絆が深まっていくことが大いに期待されます。

 共に歩もう”Let’s Get Together!”

バーネット・カリコム事務局長と握手をする上川外務大臣
(集合写真)上川外務大臣と日・カリブ交流年レセプション参加者一同

日・カリブ交流年2024記念レセプション


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