気候変動

G7気候変動と脆弱性に関する取組

平成29年9月6日

英語版 (English)

  • (写真1)ひび割れた地面
  • (写真2)海氷と山

1 G7における議論の経緯

 気候変動は,地球規模の安全保障及び経済の繁栄に脅威をもたらすものとして,最も深刻な課題の一つと捉えられています。そのような問題意識の下,当時のG7議長国であった英国の主導によりG7各国の専門家会合が開催され,その後も,G7外相会合や作業部会において継続的に議論が行われてきました。

 2015年,G7外相がシンクタンクに作成を委託した独立報告書「平和のための新たな気候」(A New Climate for Peace別ウィンドウで開くにおいては,国家及び社会の安定に対して深刻な脅威を引き起こす可能性がある7つの気候脆弱性リスクを以下のとおり特定し,G7各国はこれらの諸点につき外交政策上の影響について検討することとなりました。
  • (1)地域資源争奪
  • (2)生活の不安定性と移住
  • (3)異常気象と災害
  • (4)変わりやすい食糧価格と食糧供給
  • (5)国境を越えた水管理
  • (6)海面上昇と沿岸地帯の浸食
  • (7)気候政策の意図しない影響

 例えば気候変動と脆弱性を関連づけた事例については,2011年に始まったシリアの内戦の背景として,2006年から2009年にかけて続いたかんばつの影響があったとの分析があります。これはシリアにおけるかんばつが農業生産と所得を低下させ社会不安を高めたことが国内の対立を悪化させた遠因となったとの見方に基づくものです。こうした分析については,批判もありますが,気候変動が現在も進行している様々なリスクを悪化させる可能性について,より焦点が当たることとなっており,気候変動と脆弱性の関連性について国際的関心が高まっています。

2 G7議長国としての日本の取り組み

 2016年にG7議長国を務めた日本は,「気候変動と脆弱性(Climate Change and Fragility)」のテーマについてG7各国内での議論を主導してきました。同年4月に広島で開催されたG7外相会合では,気候変動の脆弱性リスクに対して緊急に対処する必要性があることを認識するとともに,気候変動に対する地球規模の回復力を高めるために,脆弱性リスクを低減するという共通の目的に向けて行動することの重要性が強調されました。同時に,気候変動の脆弱性リスクにつきG7で2年間作業することとなりました。(過去のG7外相会合コミュニケ(気候変動と安全保障(抜粋)))(PDF)別ウィンドウで開く

 2017年1月19日には,外務省が「気候変動と脆弱性の国際安全保障への影響」に関する円卓セミナーを開催しました。この円卓セミナーで得られた知見について,今後のG7作業部会において活用していくことを念頭に,円卓セミナーでの議論をさらに深めるため,同セミナーに参加した有識者の出席を得て,フォローアップの検討会を開催しました。

3 具体的な事例における気候変動のリスクの検証

 G7作業部会における気候変動の脆弱性リスクに関する議論の中では,作業として具体的な事例に焦点を当て,その事例における気候変動のリスクを具体的に検証することが提起されています。こうした中で日本は,気候変動に伴うアジア・太平洋地域における自然災害の分析と脆弱性への影響を踏まえた外交政策の分析・立案(PDF)別ウィンドウで開くについて,本年中にG7各国に具体的な考えを示すべく,国内の関係省庁や研究機関・専門家の協力を得つつ作業を進め,2017年9月6日にその成果を発表しました。

 アジア・太平洋地域の多くの国では,近年経済成長がめざましく,人口増加も特徴の一つとして挙げられています。その一方で国連大学の調査別ウィンドウで開くによれば,世界の自然災害リスクの脅威にさらされている高リスク国の上位20カ国のうち12カ国がアジア太平洋地域に存在するなど気候変動の脆弱性リスクも高い地域でもあります。経済・社会開発が進められる中で,十分な気候変動対策を実施することは必ずしも容易ではなく,こうした地域は川の氾濫等の水害や,自然災害に見舞われることも多く,気候変動の影響によって脆弱性がより高まる傾向が強いと考えられています。防災は日本の知見がある分野であることから,地域として特に関心が高いアジア・太平洋地域の自然災害に焦点を当て,気候変動のリスクの検証を進めています。

4 気候変動と外交政策:課題と展望

 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で行われる気候変動に関する議論は,ともすると環境問題であると受け止められることが多いですが,気候変動問題は,言うまでもなく国境を越えた影響を及ぼすため,国際社会が一致団結して取り組む必要のある問題です。各国の利益を損なわないようにバランスをとりながら,それでいて野心的な目標を達成しなければなりません。そして,気候変動は国際情勢の様々な側面に影響を及ぼしています。

 例えば,防災や災害リスクの低減という社会経済開発の側面では,気候変動に伴う長期的なリスクを考慮すべきことが議論されています。また,気候変動対策は企業や自治体に対して追加的な負荷をもたらすのではなく,むしろ経済成長や雇用をもたらすビジネスチャンスであるとの経済的な側面もパリ協定を策定したCOP21の際には,強調されてきています。上述のシリアの例のように,気候変動が移民などの人口移動や地域の不安定要素の遠因となっているとの見方も示されており,こうした諸要素を幅広い外交政策の企画立案の際に検討すべきとの見方が強まるとともに,国際的な議論の必要性が指摘されてきています。

 こうした流れの中で,G7プロセスにおいて,気候変動と脆弱性に関する作業部会が2013年,当時議長国であった英国主導の下立ちあげられました。同作業部会に提出するべく,日本が発表した取組は,気候変動と脆弱性の影響の関連性を政策決定者が認識し,その上で政策立案を行うよう今後促す第一歩となることを目的としています。

 気候変動と外交政策を関連づけるためには,様々な課題があるのも事実です。例えば,短期的な課題と気候変動のような中・長期的課題を具体的にどのように関連づけるか,様々な社会課題に対する気候変動の影響をどのように定量化していくのかといった点に関し,気候変動による様々な外交分野における政策への影響を正確性の高い数値として示すことは現段階では容易ではありません。また,気候変動による悪影響を緩和するために,どのような手段が最も効果的かという点についても,複合的要因を考慮することが求められるため,その特定が難しいというのが現状です。

 このような今後の課題を前に,より具体的なケーススタディーを積み重ね,各国・地域における政治,経済,そして社会的な側面における気候変動の影響を引き続き検証・分析し,アップデートしていくことで,政策決定者間の認識を高め,知見を深めていく必要があります。

(ご参考)

 2015年,G7気候変動と脆弱性に関する専門家会合の委託を受けた独・Adelphiを中心としたシンクタンクのコンソーシアムが調査報告書を作成。


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