気候変動
「気候変動と脆弱性の国際安全保障への影響」に関する円卓セミナーの概要及び報告書



1月19日、外務省において「気候変動と脆弱性の国際安全保障への影響」に関する円卓セミナーが開催されました。本セミナーにおいては、滝沢求大臣政務官による開会の挨拶、藤原帰一東京大学社会科学研究所教授による基調講演が行われました。また各セッションでの議論を通じて各分野における気候変動がもたらし得る影響に関し、専門家の知識や知見が共有されました。気候変動および脆弱性に関する複合的なリスクの理解を深め、国際社会がどのようにこの問題に対処していく必要があるかについて、率直な意見交換が行われました。
1 会合の概要
会合は午前及び午後のセッションに分かれ、午前に行われたオープニング・セッションでは、滝沢求大臣政務官より開会の挨拶 (PDF) 、G7ワーキンググループ議長(石垣友明気候変動課長)によりG7における気候変動と脆弱性に関する作業の紹介、続いて藤原教授より、気候変動と脆弱性の国際政治及び安全保障への影響について基調講演が行われました。引き続き、安全保障・気候変動に関し知見を有するドイツのシンクタンクAdelphiのアレクサンダー・カリウス(Alexander Carius)共同創設者兼ディレクターより、G7での気候変動と脆弱性リスクに関するこれまでの研究と国際協力の現状について説明が行われました。また、第1セッションにおいて、気候変動と軍の活動、安全保障および外交政策について研究する米国のシンクタンク・気候変動・安全保障研究所(CCS)のシロー・フィティック(Shiloh Anna Fetzek)シニアフェローより気候変動と脆弱性の国家安全保障への影響について米国の安全保障政策の観点を中心に発表がありました。続いて、軍備、安全保障に関する豊富なデータベースや知見を有するスウェーデンのシンクタンク・ストックホルム国際平和研究所のマリン・モジョルク(Malin Mobjörk)上席研究員より気候変動と安全保障リスクについて国連安全保障理事会における議論や今後の国際的な取り組みの可能性と課題について説明が行われました。その後、参加者間で気候変動によりもたらされる安全保障上のリスクに真剣に向き合う必要性について活発な意見交換が行われました。
午後には、専門家のみによる非公開セッションが開催され、気候変動と脆弱性の国際安全保障への影響に関係する幅広い分野についてより掘り下げた議論が展開されました。その後、全体によるパネルディスカッションが行われ、パネリストとして根本かおる国連広報センター所長、パトリック・サフラン(Patrick Safran)アジア開発銀行首席業務企画専門官、亀山康子国立環境研究所社会環境システム研究センター副センター長出席のもと、参加者によるディスカッションが行われました。気候変動が、環境、地球規模の安全保障及び経済の繁栄に脅威をもたらすものとして、世界が直面する最も深刻な課題の一つであり、国際社会の様々な分野における取り組みが重要であるとの指摘がなされました。最後にG7ワーキンググループ議長(石垣友明気候変動課長)より閉会の挨拶が行われ、G7は、今日の会合での議論をふまえ、各国が気候変動問題に直面する中で、各国が強靱性を高め、脆弱性を低減させるというG7各国の共通の目標に向かって対処していく考えであり、今回の会合での議論がG7の今後の検討に有益な示唆を与えたとの発言を行い、会合が終了しました。
2 開催の意義と評価
本セミナーは50名の気候変動と脆弱性の国際安全保障への影響に関する様々な分野の専門家の方々を含む100名の参加を得て開催されました。日本政府がこのような気候変動と安全保障に特化した会合を開催するのは初めてのことでしたが、国内における議論を高めるにあたり、有意義であったと評価できます。多くの参加者からも、この問題が多分野に関係する国際的に最も深刻な課題の一つであることについて理解を深め、様々な当事者による連携が重要であることが確認できたとの好意的な評価を得ました。また、G7議長国として、日本がリーダーシップをとって気候変動と脆弱性の国際安全保障への影響に関する問題に取り組んでいることを対外的に示すことができました。政府としては、本セミナーで得られた知見は、今後のG7作業部会において活用していく考えです。
3 報告書
G7「気候変動と脆弱性」作業部会に関する背景、本セミナーに関する上記概要及び非公開セッションでの議論(気候変動がもたらす移住、感染症、海洋問題などのリスク及び農業、災害管理、製造業・金融等の民間セクターの役割に対する気候変動の影響)についての本セミナーの報告書(PDF)。
4 フォローアップ
円卓セミナーでの議論を更に深める為,本セミナーに参加した有識者の出席を得て,フォローアップ検討会を開催。2月16日,22日,3月1日の3回にわたり,多岐にわたる分野(エネルギー・資源,金融,防災,人の移動(感染症,移住),安全保障等)における気候変動の影響をどのように政策に反映させていくかについて,各分野の専門家(研究者,シンクタンク,NGO関係者等)の参加を得て議論を行った。同フォローアップ検討会のまとめ(PDF)。
(参考)
G7「気候変動と脆弱性」作業部会
2013年から、当時のG8議長国であった英国の主導で、気候変動が安全保障と経済に与える影響を扱う専門家会合を実施。2015年同専門家会合の委託を受けた独・ Adelphi を中心としたシンクタンクのコンソーシアムが調査報告書を作成。
2015年4月のG7外相会合(リューベック)声明において、調査報告書を歓迎すると共に、作業部会を立ち上げて、2015年中に調査報告書の勧告部分につき検討し、その検討結果を2016年のG7外相会合に報告することを決定。
2016年4月のG7外相会合(広島)において、同作業部会に新たに2年のマンデートを付与することを決定。