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「サービスの貿易」とは何か


 皆さんが「貿易」という言葉を聞いたときに、まず最初に思い浮かべるのは自動車やテレビなど家電製品の輸出入だと思います。しかしながら、このような目に見える製品の輸出入以外にも、各国のサービス産業によるサービスの貿易が様々な形態によって行われており、現在では世界の貿易(輸出額)に占めるサービス貿易の割合は約20%にまで達しています。また、各国の国内においてもサービス分野の比重はますます高まっています。特に、先進国では国民総生産や就労人口のおおむね6割以上がサービス産業に関連しています。

 そもそもサービス産業にはどのようなものがあるかと言えば、皆さんが日常的に利用しているバス、電車などの運送サービス、銀行・保険などの金融サービス、電話・ファックスなどの通信サービス、デパートなどの流通サービスなどが挙げられます。皆さんがこれらのサービスを、何らかの方法により日本の会社以外の業者を利用して受けた場合、サービスの貿易が行われたことになるのです。

 もちろん、サービスの貿易の場合、外国製の家具や果物などのように製品が国境を越えてくるのが明確に分かるものではありません。そこでWTOにおいてはサービスの貿易の形態を以下の四つに分類しています。

(1)ある国のサービス事業者が、自国に居ながらにして外国にいる顧客にサービスを提供する場合(越境取引=第1モード)
(2)ある国の人が、外国に行った際に現地のサービス事業者からサービスの提供を受ける場合(国外消費=第2モード)
(3)ある国のサービス事業者が、外国に支店・現地法人などの拠点を設置してサービスの提供を行う場合(拠点の設置=第3モード)
(4)ある国のサービス事業者が、社員や専門家を外国に派遣して、外国にいる顧客にサービスを提供する場合(自然人の移動=第4モード)

 各国のサービス事業者が、このような方法によってサービスを提供しようとする際の障害を少なくしていくことにより、円滑なサービス貿易を実現していこうとするのがWTOの場で行われるサービス交渉なのです。

 それでは、サービスの貿易が皆さんの日常生活にどのように顔を出しているかを更に具体的に一例を挙げて見てみましょう。

<Aさんの海外旅行>

 Aさんは英国のミュージシャンBの大ファンで、東京で行われるBの来日コンサートには欠かさず行っています。Aさんは日本で行われるコンサートに飽きたらず、今度はロンドンで行われるBのコンサートを聴きに行くためにイギリスに行くことにしました。出発の日、Aさんはいつものように米国系のファースト・フード・レストランのCで朝食を食べ、外資系D銀行の支店に立ち寄り、必要な額をポンドに両替してから空港に向かいました。空港に着いたAさんは英国のE航空のカウンターに行き、チェック・インを済ませ、飛行機に乗り込み、10時間以上のフライトの後、ロンドンに到着しました。Aさんは、一旦滞在先のFホテルに立ち寄り、荷物をおいてからコンサート会場に向かいました。コンサート終了後、Aさんは1週間観光をして帰国しました。

 この話の中でAさんが関係したサービス貿易を説明しますと以下のようになります。

(1)東京でのBのコンサート(娯楽サービスの自然人の移動による提供=第4モード)
(2)レストランCでの朝食(飲食店サービスの国外の拠点を通じた提供=第3モード)
(3)D銀行の支店での外貨両替(金融サービスの国外の拠点を通じた提供=第3モード)
(4)E航空の飛行機での英国へのフライト(運送サービスの越境取引=第1モード)
(5)Fホテルでの滞在(観光サービスの国外消費=第2モード)
(6)ロンドンでのBのコンサート(娯楽サービスの国外消費=第2モード)

 このように、サービスの貿易は、製品の輸出入と異なり、皆さん自身が貿易の当事者として身近な生活の中で行っているものです。そして、このようなサービス貿易を促進するための安定的基盤を提供するため、サービス貿易についての規律を定めたものが、「世界貿易機関(WTO)を設立するマラケシュ協定(通称WTO設立協定)」の一部として95年1月に発効した「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」なのです。

 GATSについての更に詳細な解説については「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)の解説」をご参照下さい。



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