平和構築

令和5年8月7日

国連平和維持活動とは

1 国連平和維持活動(PKO)の概要

  • (1)国連平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations:略称国連PKO又は単にPKO)は、戦後の東西対立の中で、国連憲章が予定していた安全保障理事会による国際の平和及び安全の維持(例:第7章に定める集団安全保障制度)が十全に機能しなかったため、国連が紛争地域の平和の維持を図る手段として実際の慣行を通じて行われてきたものである。ダグ・ハマーショルド第2代国連事務総長が「憲章6章半」の措置と呼んだとおり、国連憲章上明文の規定はない。
  • (2)PKOは、伝統的には、国連が紛争当事者の間に立って、停戦や軍の撤退の監視等を行うことにより事態の沈静化や紛争の再発防止を図り、紛争当事者による対話を通じた紛争解決を支援することを目的とした活動である。例えば、国連休戦監視機構(UNTSO)、国連インド・パキスタン軍事監視機構(UNMOGIP)、国連キプロス平和維持隊(UNFICYP)、国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)は、こうした目的のために数十年間活動を続けている。
  • (3)冷戦の終結以降、国際の平和及び安全の維持の分野における国連の役割が高まるとともに、国際社会が対応を迫られる紛争の多くが国家間の紛争から国内における紛争又は国内紛争と国際紛争の混合型へと変わった結果、PKOの任務も多様化している。すなわち、停戦や軍の撤退等の監視といった伝統的な任務は引き続き重要であるが、これに加え、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)や治安部門改革(SSR)、選挙、人権、法の支配等の分野での支援、政治プロセスの促進、紛争下の文民の保護など多くの分野での活動がPKOの任務に加えられてきている。例えば、過去日本が参加した国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)や国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)のほか、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)や2011年11月から参加している国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)は、軍事部門に加え、文民警察、行政、選挙、人権といった分野の任務を与えられている。
  • (4)また、PKOなどの平和及び安全の維持のための活動と、人道支援や復興開発支援の活動との間の協調・協力の重要性が認識されるようになっている。
  • (5)このような中、PKOは国際社会の平和と安全の維持において一層重要性を高めると同時に、規模の拡大や任務の多様化に伴って多くの課題にも直面している。2014年及び2015年に各国の首脳・閣僚級が参加するPKOサミットが開催され、こうした課題やPKO要員の能力・パフォーマンス向上等の方策について議論がなされており、その後のフォローアップとしてPKO閣僚級会合が定期的に開催されている。
  • (6)さらに、2018年、グテーレス国連事務総長は、PKOが深刻な課題に直面し、危険かつ複雑でハイリスクな環境下での活動を余儀なくされているとして、PKOの改善・強化のための新たなイニシアティブ「PKOのための行動(A4P)」を発表。また、2021年には、A4Pを加速させ、PKOをより強力・安全・効率的なものとするための取組方針「PKOのための行動プラス(A4P+)」が発表され、掲げられた優先課題・テーマに基づく取組が実施されている。

2 財政的側面

  • (1)PKOの活動経費を支弁するため、国連の通常予算とは別にPKO予算が建てられている(但し、1940年代に設置され、従前より通常予算で手当されるUNTSO及びUNMOGIPを除く。)。PKO予算は基本的に国連加盟国の分担金で賄われる。
     PKOの設置・改廃は安保理によって決定されるが、PKO予算は安保理の決定を踏まえつつ、国連総会が議決する。加盟国は、国連総会が決定するPKO予算及び分担率に従ってPKOの活動経費を負担する。PKO予算に適用される分担率は通常予算に適用される分担率を基本としつつも、途上国に負担軽減を認める一方、国際の平和と安定に格別の責任を有する安保理常任理事国に加重負担を求めている。日本を始めとする常任理事国ではない先進国は、通常分担率と同じ分担率が適用される。
     2022年から2024年までの3年間、日本のPKO分担率は8.0330%であり、米国(26.9493%)、中国(18.6857%)に次ぐ第3位の財政貢献を行っている。
  • (2)PKO予算は、通常7月から翌年6月までの単年予算となっている(通常予算は2か年予算)。ミッション毎に予算が編成される。
     PKO予算の水準は、PKOミッションの規模の変動に応じて短期間の間にも変化するが、ミッションの数や規模の拡大とともに長期的にも変化する。2002/2003年予算は28億ドル台であったが、2009年から2012年は70億ドル台後半まで上昇。2012/2013年の当初予算については、一部ミッションのマンデート終了や縮小の見通しもあり、73億ドル台と減少したが、2013/2014年修正予算は再び78億ドル台、その後、新規2ミッションの立ち上げや一部ミッションの拡大もあり、2014/2015年の予算は84億ドル台と大幅に上昇している。近年では、ミッション数の減少に伴ってPKO予算も減少傾向で、2021/2022年の予算は63億ドル台まで減少している。
  • (3)近年の日本のPKO分担率は以下のとおり。
    PKO分担率
    分担率
    2021/2022年 8.0330%
    2020/2021年 8.5640%
    2019/2020年 8.5640%

3 PKOの展開・派遣状況

4 その他参考

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