平和構築

令和7年10月8日

国連平和維持活動とは

1 国連平和維持活動(PKO)の概要

  • (1)国連平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations:略称国連PKO又は単にPKO)は、戦後の東西対立の中で、安全保障理事会による国際の平和及び安全の維持(例:第7章に定める集団安全保障制度)が十全に機能しなかったため、国連が紛争地域の平和の維持を図る手段として慣行を通じて行ってきたものであり、国連憲章上、明文の規定はない。
  • (2)PKOは、伝統的には、停戦や軍の撤退の監視等により事態の沈静化や紛争の再発防止を図り、紛争当事者同士の対話による紛争解決への支援を目的とした活動である。(例:国連休戦監視機構(UNTSO)、国連インド・パキスタン軍事監視機構(UNMOGIP)、国連キプロス平和維持隊(UNFICYP)、国連兵力引き離し監視隊(UNDOF))
  • (3)冷戦の終結以降、国際社会が対応を迫られる紛争の多くが国家間の紛争から国内における紛争又は国内紛争と国際紛争の混合型へと変わっていく中で、PKOの任務も多様化し、停戦や軍の撤退等の監視といった伝統的な任務に加えて、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)や治安部門改革(SSR)、選挙、人権、法の支配等の分野での支援、政治プロセスの促進、紛争下の文民の保護などを任務としてきている。例えば、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)や国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)のほか、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)や国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)は、軍事部門に加え、文民警察、行政、選挙、人権といった分野の任務を与えられている。
  • (4)PKOが、その重要性を高める一方で、規模の拡大や任務の多様化に伴って多くの課題に直面していることを受け、2014年及び2015年に各国の首脳・閣僚級が参加するPKOサミットが開催され、こうした課題やPKO要員の能力・パフォーマンス向上等について議論が行われた。また、その後のフォローアップとしてPKO閣僚級会合が2年に1度開催されており、日本は当初から共催国の一つとして、国際的な議論の推進に貢献している。
  • (5)2018年には、グテーレス国連事務総長は、PKOが深刻な課題に直面し、危険かつ複雑でハイリスクな環境下での活動を余儀なくされているとして、PKOの改善・強化のための新たなイニシアティブ「PKOのための行動(A4P)」を発表。、2021年には、A4Pを加速させ、PKOをより強力・安全・効率的なものとするための取組方針「PKOのための行動プラス(A4P+)」が発表され、掲げられた優先課題・テーマに基づく取組が実施されている。
  • (6)国連が統括するPKOミッションだけでなく、地域機関等によるミッションの重要性にも注目が集まっている。2023年12月、アフリカ連合(AU)主導の平和支援活動(AUPSO)がアフリカの平和と安全の維持に重要な役割を果たしていることを念頭に、国連安全保障理事会は、国連分担金を用いたAUPSOへの財政支援をケースバイケースで検討することや分担金による支援の上限をAUPSO年間予算の75%とすること等を盛り込んだ決議第2719号を採択した。
  • (7)国連創設80周年の節目を迎える昨今は将来に係る議論が活発になっており、2024年に未来サミットで採択された「未来のための約束」では、国連PKOを含む国連の平和活動は国際の平和と安全を維持する重要な手段であることが確認され、国連事務総長に対し、「国連平和活動の将来に関するレビュー」を行うよう要請が出された。また、2025年5月、ドイツで開かれたPKO閣僚級会合では、「より実効的で安全な国連平和活動のためのPKOの将来」がメインテーマとされ、PKOに対する適切なマンデートと財源及び政治的な支持が重要であると確認されたほか、平和構築の取組との連携、地域機関との協力、文民保護や女性・若者の参加促進、要員の安全・安心の確保のための技術活用、環境に配慮したミッションの在り方等が確認された。

2 財政的側面

  • (1)PKOの活動経費として、国連の通常予算とは別にPKO予算が建てられている(但し、1940年代に設置され、従前より通常予算で手当されるUNTSO及びUNMOGIPを除く。)。PKO予算は基本的に国連加盟国の分担金で賄われる。PKOの設置・改廃は安保理によって決定されるが、PKO予算は安保理の決定を踏まえつつ、国連総会が議決する。加盟国は、国連総会が決定するPKO予算及び分担率に従ってPKOの活動経費を負担する。PKO予算に適用される分担率は通常予算に適用される分担率を基本としつつも、途上国に負担軽減を認める一方、国際の平和と安定に格別の責任を有する安保理常任理事国に加重負担を求めている。日本を始めとする常任理事国ではない先進国は、通常分担率と同じ分担率が適用される。
     2025年から2027年までの3年間、日本のPKO分担率は6.9300%であり、米国(26.1548%)、中国(23.7851%)に次ぐ第3位の財政貢献を行っている。
  • (2)PKO予算は、通常7月から翌年6月までの単年予算となっており(通常予算は2か年予算)、ミッション毎に予算が編成される。
     PKO予算の水準は、PKOミッションの規模の変動に応じて短期間の間にも変化するが、ミッションの数や規模の拡大とともに長期的にも変化する。2002/2003年予算は28億ドル台であったが、2009年から2012年は70億ドル台後半まで上昇。2012/2013年には、一部ミッションの終了や縮小もあり、73億ドル台と減少したが、2013/2014年修正予算は再び78億ドル台、その後、新規ミッションの立ち上げや一部ミッションの拡大もあり、2014/2015年の予算は84億ドル台と大幅に上昇している。近年では、ミッション数の減少に伴ってPKO予算も減少傾向で、2025/2026年の予算は約53億ドル台まで減少している。
  • (3)近年の日本のPKO分担率は以下のとおり。
    PKO分担率
    分担率
    2025/2026年 6.9300%
    2024/2025年 6.9300%
    2023/2024年 8.0330%

3 PKOの展開・派遣状況

4 その他参考

我が国の実績

1 PKO等に対する貢献

  • (1)国際情勢が一層厳しさと複雑さを増す中で、分断ではなく協調の国際社会を実現するために国連が果たす役割はますます大きくなっており、PKOは、派遣先国のみならず、その国を含む地域において平和と安定を維持する具体策を提供する重要な政策手段となっている。このような認識の下、我が国は、PKOの実効性・効率性を向上させるための貢献を行ってきている。
  • (2)2011年以降、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の司令部に4名の自衛官を派遣している他、国連事務局内でPKOに係る政策や訓練等を所掌する平和活動局や活動支援局にも防衛省の文民・自衛官を派遣する等の人的貢献を行っている。
  • (3)我が国は、米国、中国に次ぐ第3位のPKO分担金拠出国として財政貢献を行っていることに加え、新型コロナ等の感染症に対して脆弱な現地ミッションの医療体制強化のための事業や即席爆発装置(IED)、偽情報・誤情報といったPKOミッションが直面する新たな脅威に対抗するための事業等に対しても任意拠出を行ってきている。
  • (4)また、要員の能力構築の観点からは、国連、支援国、要員派遣国の三者が協力してPKO要員の能力構築支援を行う枠組である「国連三角パートナーシップ・プログラム(TPP)」の旗振り役として、我が国は、アジア及びアフリカ諸国において、工兵や医療分野の教官を派遣して、訓練を行い、また、通信や遠隔医療分野での活動にも資金拠出を行っている。2023年には、TPPの幅と質を強化するために、既存分野の拡充に加え、AU主導平和支援活動(AUPSO)に派遣される要員への訓練実施等のために約850万ドルの拠出を決定した。
  • (5)この他、施設部隊派遣の実績を踏まえ、国連工兵部隊マニュアルの作成・改訂において議長国として貢献してきた他、平和維持インテリジェンス(PKI)分野の訓練コースのためのカリキュラム作成協力や、PKO閣僚級会合や準備会合の共催国を務める等、知的貢献も行ってきている。
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