平和構築
PKO政策Q&A
PKOとは何ですか。
国際連合平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations)のことです。伝統的には、紛争が発生していた地域において、その紛争当事者間の停戦合意が成立した後に、国連が国連安全保障理事会(または総会)の決議に基づいて、両当事者の間に立って停戦や軍の撤退を監視することで再び紛争が発生することを防ぎ、対話を通じた紛争解決が平和裡に着実に実行されていくことを支援する活動です。
冷戦が終結すると、宗教対立や民族対立に根ざす内戦や紛争が増大しました。その中で国連が紛争解決に果たしてきた役割が見直されるにつれて、PKOの任務は多様化しました。伝統的な任務に加え、選挙の監視、文民警察の派遣、人権擁護、難民支援から行政事務の遂行、復興開発まで多くの分野での活動を任務とするPKOが設立されるようになりました。国連PKOの国際平和に対する大きな貢献は高い評価を受け、1988年にノーベル平和賞を受賞しました。
現在世界ではどのようなPKOが活動しているのですか。
現在世界では11のPKOが展開しています(2024年1月時点)。地域的にはアフリカが半数を占めています。その活動内容は個々のPKOによって異なり、伝統的な停戦・軍事監視を任務とする数十年もの歴史を持つPKOから、そのような活動に加え、人道支援、選挙の監視や復興開発の実施を任務とする新しいPKOまで様々です。
PKOと多国籍軍の違いは何ですか。
PKOは安保理決議等に基づいて任務や組織の編成、財政措置等を講じられる国連により統括される活動です。これに対し、多国籍軍はその目的・任務が多岐にわたり、はっきりとした定義を行うことが難しい概念ですが、平和に対する脅威等が存在する場合に、諸外国の軍隊が国連の統括下に入らずに、国際の平和と安全の維持または回復のために活動を行うものであり、安保理決議等に基づいて行われる活動です。
参加5原則とは何ですか。
我が国が、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(国際平和協力法、いわゆるPKO法)に基づき国連平和維持活動に参加する際の基本方針のことで、
- 紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。
- 国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該国連平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
- 当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
- 上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができること。
- 武器の使用は、要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本。受入れ同意が安定的に維持されていることが確認されている場合、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能。
の5つを指し、それぞれ国際平和協力法の中に反映されています。
国際平和協力法について教えて下さい。
国際平和協力法は1992年6月に制定された、我が国が積極的に国際平和に寄与するための制度や手続きを定めた法律です。この法律では国連平和維持活動、国際連携平和安全活動、人道的な国際救援活動、国際的な選挙監視活動の4つの活動への協力が規定されており、具体的な業務内容として停戦監視活動や選挙監視活動への参加、医療活動や生活関連物資の支援などが規定されています。
PKOへの自衛隊の参加は憲法第9条の禁じる武力行使に当たらないのですか。
我が国がPKOに参加する場合においては、武器使用は要員の生命等の防護のための必要最小限のものに限られています。また停戦合意が破れた場合には我が国部隊は業務を中断、撤収することができる等のいわゆる参加5原則という前提を設けており、我が国が憲法で禁じた武力行使を行うことはなく、憲法に反するものではありません。
日本がPKOに参加することにどのような意義があるのですか。
我が国は、1992年の国際平和協力法施行以来、世界各地でのPKOに対し、人的・物的双方の側面から協力を行ってきました。
我が国は、国際社会全体の安定が我が国自身の安全に直結していると認識し、自らの国際的地位と責任にふさわしい貢献を行うため、国際社会の平和と安全を求める努力に対し、一定の協力をする必要があると考えています。我が国のこのような努力は、国際社会でも高く評価されています。
なお、2023年9月の内閣府「外交に関する世論調査」(PDF)によれば、約9割の回答者が現状程度もしくはこれまで以上の積極的な参加に賛同を示しています。これは現在までの我が国のPKOへの協力の実績に対する国民の評価を反映しているものと考えられます。
日本はPKOのためにこれまでどのような貢献をしてきたのですか。
我が国は、1992年の国際平和協力法成立から現在に至るまで、カンボジア・モザンビーク・ゴラン高原・東ティモール・ハイチ・南スーダンにおけるPKOに自衛隊の部隊を派遣してきました。現在は、南スーダンに司令部要員を派遣しています。最近では、要員の派遣に加えて、能力構築支援にも力を入れています。例えば、国連三角パートナーシップ・プログラム(TPP)(注)に対して、これまで計約88億円を支援し、工兵訓練及び医療訓練の教官として自衛隊員等を324名派遣してきました。また、2023年には、アフリカ連合主導の平和支援活動(AUPSO)に派遣される要員への訓練を、TPP枠組の下で実施するため、約12億円を新たに拠出することを決定しました。
(注)TPP(United Nations Triangular Partnership Programme):PKOを支えるために2015年に立ち上げられた、国連、支援国、要員派遣国の三者が互いに協力し、派遣される要員の訓練、必要な装備品の提供を行う国連の枠組。2015年からアフリカ工兵訓練が開始され、2018年からは対象地域をアジアに拡大。2019年からは訓練分野を医療分野に拡大したほか、通信分野での訓練も実施されている。