(1) 75年から90年まで内戦状態にあったが、92年に20年ぶりに実施された総選挙により発足したハリーリ内閣の下で本格的な復興に向けた努力が行われた。98年11月には、ヘラウィ大統領に代わり、ラフード国軍司令官が大統領に就任し、12月には首相もホッス首相へ交代した。新政権の下でも復興計画の継承が確認されたが財政赤字の大幅な改善を図るため、その見直しを迫られている。
(2) 外交面では、親欧米であるが、アラブ諸国との外交にも重点を置き、特に、シリアとは伝統的に緊密な関係にある。南レバノンにおいてイスラエル軍は78年から国境隣接地帯を「安全保障地帯」と称して占領している。96年4月にはイスラエルとシーア派民兵組織ヒズボラとの戦闘が激化したが、同月末停戦合意が成立した。また、イスラエルは98年4月にイスラエル軍の南レバノンからの撤退を定めた国連安保理決議425受入を条件付きで表明したが、レバノンは同決議は無条件・即時撤退を定めたものとして反発した。99年7月に成立したイスラエルのバラック政権は、南レバノンからの1年以内の撤退を公約に掲げており、その実現に向けた取組が進められつつある。
(3) 経済面では、95年から向こう10~13年間にわたる意欲的な復興計画(公共投資総額180億ドルを予定)を策定し、本格的な経済の復興開発に取り組み、財政赤字の削減、公務員の削減をはじめとする行政改革等の施策を打ち出した。現在、為替レートの上昇、インフレの沈静化が達成され、93年以降低インフレ率、安定的経済成長を達成し、97年は4%の成長を遂げている。また、貿易、金融等のサービス部門がGDPの7割を占め、対外債務の返済に特に留意する等対外信用の維持を極めて重視している。海外レバノン人からの送金等により過去5年間国際収支は一貫して黒字となっているものの、急速な復興需要等に基づき財政収支の赤字は増大している。
(4) 我が国は、レバノンから非鉄金属くず、骨とう品等を輸入し(98年輸入額371万ドル)、同国に自動車、電気機器、タイヤ等を輸出している(同輸出額1億9,525万ドル)。97年11月にはハリーリ首相が訪日し、99年1月には高村外務大臣が同国を訪問した。
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | - | 4,005 | 4,079 | 4,146 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | 10,673 | 12,118 | 13,900 |
一人当たり(ドル) | - | 2,660 | 2,970 | 3,350 | |
経常収支(百万ドル) | - | - | - | - | |
財政収支(十億レバノン・ポンド) | - | -2,823.3 | - | - | |
消費者物価指数 | - | - | - | - | |
DSR(%) | 3.3 | 5.0 | 6.4 | 14.4 | |
対外債務残高(百万ドル) | 1,779 | 2,966 | 3,996 | 5,036 | |
為替レート(年平均、164ドル=レバノン・ポンド) | 695.1 | 1,621.4 | 1,571.4 | 1,539.5 | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千平方キロメートル) | 10.2 |
(参考2)主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 66 | 70(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
44 | 28(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
56 | 32(97年) | ||
下位20%の所得又は消費割合(%) | - | - | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 300(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 20 | 8(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
- | - | |
初等教育純就学率(%) | - | 76(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | - | 94(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | - | 32(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
1 | 1(95年) |
中等教育 | - | - |
我が国は、長年続いた内戦、内戦終結後も続いた情勢不安定等のため、従来内戦被災民に対する緊急援助や研修員受入といった極めて限定的な援助を実施していた。しかし、ハリーリ政権の下で本格的な復興に向けた努力が行われたことを受け、我が国は97年11月にレバノン経済協力政策協議を派遣し、我が国ODA政策を説明するとともに、経済情勢、復興開発政策、今後の援助のあり方等について意見交換を行った。
レバノン復興プロセス開始後は、96年4月のイスラエルとの戦闘による被災民に対し、約100万ドルの緊急援助を行ったほか、同年7月には、復興プロセスを積極的に支援するため「海岸線汚染対策・上水道整備計画」に対し総額約130億円の初の円借款を供与した。また、我が国は、同年12月の「レバノン復興支援のための友好国会合」において、内戦後の復興プロセスを支援するとの方針を表明した。
レバノンの一人当たりGNPは高い水準にあるため、今後は環境案件を対象とした有償資金協力、草の根無償資金協力及び研修員受入、開発調査等の技術協力により、同国の政情、治安状況及び国内経済状況(特に財政の健全化)等を見極めつつ援助を実施していく方針である。
(1)我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
0.37(60) -(-) 0.02(4) 0.25(33) 0.19(23) |
0.25(40) 0.42(100) 0.53(96) 0.50(67) 0.63(77) |
0.62(100) 0.42(100) 0.55(100) 0.75(100) 0.82(100) |
- - - - - |
-(-) -(-) -(-) -(-) -(-) |
0.62(100) 0.42(100) 0.55(100) 0.75(100) 0.82(100) |
累計 | 3.85(47) | 4.31(53) | 8.16(100) | - | -(-) | 8.16(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2)DAC諸国・国際機関のODA実績
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
0.4 0.6 0.8 |
57.2 87.1 69.2 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
4.9 4.8 4.4 |
75.2 63.3 78.8 |
(3)年度別・形態別実績
年度 | |||
90年度までの累計 | なし | 5.91億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
0.98億円
研修員受入 29人 |
91 | なし | 0.19億円 災害緊急援助(洪水被害) (15万ドル=0.19) |
0.03億円 研修員受入 1人 |
92 | なし | なし | 0.11億円 研修員受入 3人 |
93 | なし | なし | 0.08億円 研修員受入 3人 |
94 | なし | 0.38億円 教育スポーツ省に対する柔道器材 (0.38) |
0.06億円 研修員受入 4人 |
95 | なし | なし | 0.27億円
研修員受入 11人 |
96 | 130.22億円 海岸線汚染対策・上水道整備計画 (130.22) |
1.14億円
災害緊急援助(紛争被難民救済)(ICRCに対する拠出) (0.97) |
0.21億円 研修員受入 9人 |
97 | なし | 1.78億円
緊急無償パレスチナ難民救済(UNRWA経由) (1.07) |
0.44億円
研修員受入 13人 |
98 | なし | 0.77億円
草の根無償(7件) (0.31) |
0.46億円
研修員受入 13人 |
98年度までの累計 | 130.22億円 | 10.17億円 | 2.64億円
研修員受入 86人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.78年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/904-22.htm)
(参考)98年度実施草の根無償資金協力案件
案件名 |
シューフ・レバノン杉保留地における貯水池造成計画 ナビ・ベッリ・リハビリテーション・センター整備計画 アル・タンミア学校兼孤児院建設計画 イルファーン校コンピューター・ラボ整備計画 アンドーフ神父雑聴児学校スクールバス整備計画 インマ診療所整備計画 障害者のための職業訓練計画 |