(1) 91年12月、ソ連の解体とともに実質的な独立国家となった。独立後しばらく混乱が続いたが、95年11月の大統領選挙の結果、元ソ連外相であるシェヴァルナッゼが圧倒的支持を受けて選出され、同時に実施された議会選挙では同大統領の支持派も議会第一党となり、大統領の地位はより安定的なものとなった。
同国では西北部のアブハジア自治共和国(イスラム勢力が強い)が独立を宣言、また、北部の南オセチア自治州(少数民族のオセット人が居住)がロシア領北オセチアとの統合を要求したことにより民族紛争が発生したが、いずれの紛争も停戦合意がなされているものの、アブハジアでは現在も小規模な衝突が散発している。外交面ではシェヴァルナッゼ政権になってからロシアとの関係正常化を背景に諸外国からも承認され、西側諸国の支援を受けている。
(2) 経済面では、元来牧畜、農業を主要産業としており、資源に乏しい。独立直後、GDPが前年比で半減するなど、極端な経済不振に陥る一方、民族紛争を背景とした経済封鎖(特に南オセチア紛争に起因する北オセチアによるガス・パイプライン封鎖)や紛争による多数の難民(約30万人)発生が大きな経済的負担となったが、紛争の沈静化が継続していることにより、物資の輸送も正常化しつつある。最近は緊縮財政などの改革路線によりインフレが大幅に収束し、95年のGDP成長はプラスに転じるなど、成果の兆しが現れてきていたが、98年夏以降のロシアの金融危機の影響により、マクロ経済の不安定化の懸念が指摘されている。一方、アゼルバイジャンのカスピ海石油開発に伴う、グルジア経由黒海へのパイプライン敷設を梃子とした経済状況改善への期待が高まっている。
(3) 国内情勢の不安定や民族紛争等により我が国との関係は十分ではなかったが、近年の情勢安定化に伴い、両国関係を整備する環境が整いつつある。92年10月にチクヴァイ外相、99年2月にシェヴァルナッゼ大統領が訪日している。
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | - | 5,400 | 5,411 | 5,427 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | 2,358 | 4,590 | 4,656 |
一人当たり(ドル) | - | 440 | 850 | 860 | |
経常収支(百万ドル) | - | - | - | - | |
財政収支(百万ドル) | - | - | - | - | |
消費者物価指数 | - | - | - | - | |
DSR(%) | - | 4.1 | 2.5 | 6.4 | |
対外債務残高(百万ドル) | - | 1,191 | 1、357 | 1,446 | |
為替レート(IUSドル=ラリ) | - | - | - | - | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千平方キロメートル) | 69.7 |
(参考2)主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | - | 73(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 17(97年) | |
所得が1ドル/日以下の 人口割合(%) | - | - | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 21(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | - | - | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 19(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | - | 1(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
- | - | |
初等教育純就学率(%) | - | 87(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | - | - | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | - | 48(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
- | 30(95年) |
中等教育 | - | 49(96年) |
(1) グルジアはソ連崩壊後の新たな国際情勢において地政学的に重要な位置を占めており、また、同国の民主化、市場経済導入の動きはODA大綱の観点からも望ましいものであるため、同国が人材不足や経済インフラの老朽化、環境悪化等の問題に効率的に対処し、経済的な困難を克服するために、我が国は支援を行っている。
(2) 我が国は、94年1月グルジアがDACリストパート1に掲載される以前の91年から研修員受入れ等の協力を開始しており、また、計2億ドルの旧ソ連諸国に対する緊急人道支援の一環として、93年以降医薬品、灯油、ワクチン保冷輸送機材などを中心に483万ドルの支援を同国に実施している。さらに、91年4月に締結された我が国と旧ソ連諸国との技術的支援協定に基づき、91年以降グルジアよりも専門家を数名招聘している。
(3) 我が国は、技術協力については市場経済及び各種行政分野を中心に研修員受入れを行っている。96年度には初の無償資金協力として食糧増産援助及びノンプロジェクト無償資金協力、97年度に初の有償資金協力として「電力リハビリ計画」に対する円借款供与を行った。98年度には一般無償資金協力で医療機材整備支援を行っている。
ODAによる協力の重点分野については、99年3月に行った政策協議を踏まえ、1)経済インフラ(特にエネルギー、運輸・通信)、2)社会セクター、 3)人造りの三分野を優先させた上で、4)財政安定化支援を検討対象とすることとしている。
(1) 我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸与 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
-(-) -(-) -(-) 4.13(95) 3.91(85) |
0.04(100) 0.10(100) 0.16(100) 0.22( 5) 0.68( 15) |
0.04(100) 0.10(100) 0.16(100) 4.35(100) 4.59(100) |
- - - - - |
-(-) -(-) -(-) -(-) -(-) |
0.04(100) 0.10(100) 0.16(100) 4.35(100) 4.59(100) |
累計 | 8.04(87) | 1.20(13) | 9.24(100) | - | -(-) | 9.24(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績(支出純額、単位:百万ドル)
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 |
95 96 97 |
米国 52.0 米国 55.0 米国 32.0 |
ドイツ 10.2 ドイツ 33.6 ドイツ 15.4 |
オランダ 9.4 オランダ 9.0 オランダ 5.3 |
英国 2.6 イタリア 3.7 日本 4.4 |
ノールウェー 2.5 英国 2.8 スイス 3.5 |
0.1 0.2 4.4 |
81.6 112.2 69.7 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
IDA 85.1 IMF 80.6 IMF 76.4 |
CEC 24.8 IDA 76.3 IDA 64.3 |
WFP 6.4 CEC 35.5 CEC 21.5 |
UNHCR 4.8 UNHCR 5.7 WFP 4.8 |
UNICF 4.4 WFP 3.0 UNDP 3.8 |
1.1 4.3 6.2 |
126.6 205.4 176.8 |
(3) 年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
93年度までの累計 | なし | 0.39億円
災害援助 (91年度:0.39) |
0.06億円
研修員受入 2人 |
94 | なし | なし |
0.08億円
研修員受入 6人 |
95 | なし | なし |
0.07億円
研修員受入 6人 |
96 | なし | 10.00億円
食糧増産援助 (5.00) |
0.15億円
研修員受入 6人 |
97 | 53.32億円
電力リハビリ計画 (53.32) |
3.80億円
食糧増産援助 (3.80) |
0.23億円
研修員受入 10人 |
98 | なし | 14.30億円
ノンプロジェクト無償 (3.00) |
0.88億円
研修員受入 20人 |
98年度までの累計 | 53.32億円 | 28.49億円 |
1.47億円
研修員受入 50人 |
(注) | 1. | 「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。) |
2. | 「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。 | |
3. | ICRC経由でアフガニスタン、アンゴラ、アゼルバイジャン等11か国への供与にて合計約1.7億円。 |
(参考3)98年度実施草の根無償資金協力案件
案件名 |
教育センター教育機材整備計画 |
プロジェクト所在図
中央アジア及びコーカサス地方