2022年版開発協力白書 日本の国際協力

(2)水・衛生

急激な都市化と人口増により増加するプノンペンの汚水の処理能力向上に向け、カンボジアのカウンターパートと下水管工事現場で活動するJICA専門家(写真:JICA)

急激な都市化と人口増により増加するプノンペンの汚水の処理能力向上に向け、カンボジアのカウンターパートと下水管工事現場で活動するJICA専門家(写真:JICA)

水と衛生の問題は人の生命に関わる重要な問題です。世界の約20億人が、安全に管理された飲み水の供給を受けられず、36億人が安全に管理されたトイレなどの衛生施設を使うことができない暮らしをしています注60。また、水道が普及していない開発途上国では、多くの場合、女性やこどもが時には何時間もかけて水を汲(く)みに行くため、女性の社会進出やこどもの教育の機会が奪われています。また、不安定な水の供給は、医療や農業にも悪影響を与えます。SDGsの目標6は、「全ての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」ことを目指しています。

●日本の取組

タジキスタンの小学校に整備した給水施設で手洗いするこどもたち(「案件紹介」も参照)

タジキスタンの小学校に整備した給水施設で手洗いするこどもたち(「案件紹介」も参照)

日本は、1990年代から累計で、世界一の水と衛生分野における援助実績を有しています。2022年、インドネシア、カンボジア、ベトナム、ラオスなどで上水道整備・拡張のための協力を実施しました。例えば、カンボジアでは、下水道管理に係る法・制度の整備を通じて、プノンペン都庁および公共事業・運輸省の下水道管理の体制構築を支援しています。また、タジキスタンでは、給水サービスの改善に向けて、ピアンジ県・ハマド二県上下水道公社の能力強化を目的とした技術協力プロジェクトを実施しています(詳細は「案件紹介」を参照)。

2022年4月に熊本で開催された第4回アジア・太平洋水サミットにおいて、アジア・太平洋地域の30か国の首脳級・閣僚級が参加する中、岸田総理大臣は日本の貢献策「熊本水イニシアティブ」を発表しました(詳細は「開発協力トピックス」を参照)。

日本国内および現地の民間企業や団体と連携した途上国の水環境改善の取組も、世界各地で行われています。例えば、インドネシアでは、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業を活用して、「再生水利用・産業排水処理の促進に向けた自動再生式活性炭排水処理技術普及・実証事業」が実施されました。繊維産業の盛んな同国においては、染色排水の処理不足による河川汚染や地下水の過剰取水による地盤沈下等の環境問題の解決が求められていました。同事業により、現地でこれまで大型浄化装置が2台導入され、工場排水を処理した水の再利用が可能となったことにより、資源としての水の有効活用や水使用量の合理化、さらには排水量の削減が実現し、近隣河川への環境負荷改善に貢献しています(ジャパン・プラットフォーム(JPF)を通じたウガンダへの支援については「案件紹介」を参照)。

環境省でも、アジアの多くの国々において深刻な水質汚濁が生じている問題に対して、現地での情報や知識の不足を解消するため、アジア水環境パートナーシップ(WEPA)を実施しており、アジアの13の参加国注61の協力の下、人的ネットワークの構築や情報の収集・共有、能力構築などを通じて、アジアにおける水環境ガバナンスの強化を目指しています。2022年4月に、オンラインで開催された第17回WEPA年次会合では、「生活排水ガバナンスの現状と課題」、「分散型排水処理システム導入の現状と課題」に焦点を当て、各国における水環境ガバナンスの進展について情報共有するとともに、活発な意見交換が行われました。また、SDGsの目標6.3に掲げられている「未処理汚水の半減」の達成に貢献すべく、主にアジア地域を対象に、日本の優れた技術である浄化槽の技術や法制度などを紹介しています。2022年11月に第10回のワークショップをオンラインで開催し、分散型汚水処理の大きな課題の一つである生活雑排水処理にフォーカスして、生活雑排水を適正に処理することの重要性や有益性、処理施設普及拡大のための法制度上の対策や地方公共団体の取組事例などを発表し議論を重ねることで、今後の方向性や解決に向けての改善策に関して共通認識を得ました。これにより、浄化槽を始めとした分散型汚水処理に関する情報発信と各国分散型汚水処理関係者との連携強化を図りました。


  1. 注60 : UNICEFによるデータ(2020年)。
    https://data.unicef.org/resources/progress-on-household-drinking-water-sanitation-and-hygiene-2000-2020/
  2. 注61 : インドネシア、韓国、カンボジア、スリランカ、タイ、中国、ネパール、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス、日本の13か国。
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