2022年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス4

第4回アジア・太平洋水サミットの開催

インド北西部のラジャスタン州ナゴール地区で、「ラジャスタン州地方給水・フッ素症対策事業」により建設された浄水場施設。これにより、安全かつ安定的な上水道サービスが確保された。(写真:ラジャスタン州公衆衛生局)

インド北西部のラジャスタン州ナゴール地区で、「ラジャスタン州地方給水・フッ素症対策事業」により建設された浄水場施設。これにより、安全かつ安定的な上水道サービスが確保された。(写真:ラジャスタン州公衆衛生局)

首脳級会合冒頭の様子(写真:日本水フォーラム)

首脳級会合冒頭の様子(写真:日本水フォーラム)

水は、社会に恵みをもたらす資源である一方で、自然災害では人の命や豊かな生活を脅かす存在にもなります。例えば、近年、世界各地で水害が多発しており、30年前と比較して、日本では、集中豪雨の発生件数が約1.4倍に、アジア太平洋地域では、影響人口が大きい水害注1の数が約3倍に増加しています。水害以外でも、「水」は貧困、公衆衛生、食料、環境、エネルギー、平和と安全保障など、様々な社会課題と密接に関係しています。

アジア・太平洋水サミットは、アジア太平洋地域の首脳級を含むハイレベルを対象とし、水問題に対する認識を深め、具体的な資源動員や行動を促すことを目的とした国際会議です。2022年4月23日および24日、熊本県熊本市で第4回注2アジア・太平洋水サミットが開催されました。日本での開催は15年ぶりであり、日本を含むアジア太平洋地域の31か国の首脳級・閣僚級が参加したほか、対面・オンラインを合わせて約5,500名が参加しました。日本からは岸田総理大臣が参加し、出席した各国首脳などと昼食会や二国間会談も行いました。今回のテーマは、「持続可能な発展のための水~実践と継承~」であり、新型コロナウイルス感染症からの復興の過程で水の重要性を改めて認識し、次世代に渡って持続可能な発展を続けるために議論が行われました。

開会式では、オンラインによる天皇陛下のおことばおよび記念講演が行われました。また、午後の首脳級会合では、岸田総理大臣が基調演説を行い、日本は各国や国際機関と協調・連携しながら、水に関する社会課題の解決に向けて「質の高いインフラ」整備などに積極的に取り組んでいく旨を述べました。そして、水問題への日本の貢献策である「熊本水イニシアティブ」を発表しました。23日午後の首脳級会合では、出席した各国首脳により「熊本宣言」注3が発表されたほか、その後の2日間にわたる各国・機関の関係者による活発な議論を踏まえ、24日には議長サマリーが発表されました。

また、閉会式では、アジア太平洋地域のユース代表(インド)と福岡県の高校生の代表が「ユースからのメッセージ」として、若者と大人が協力することの重要性を発信し、地域の持続可能な発展に向けて、若者の参画を強化していくことの重要性が再認識されました。

「水を治める者は国を治める」という故事のとおり、今や水を治めることは、地球規模の社会課題を解決することにも大きく貢献します。複数国の首脳級も参画して得られた本会議の成果については、アジア太平洋地域のみにとどまるものではなく、世界の水問題や、防災、気候変動に関する今後の議論に対しても、大きな力と知恵を与えることが期待されています。2023年3月に46年ぶりに実施される予定の「国連水会議」への重要なインプットにもなる見込みです。


注1 影響人数1,000人以上の水害を指す。

注2 2007年に第1回会合が大分県別府市で開催され、第2回は2013年にタイで、第3回は2017年にミャンマーで開催された。

注3 水関連分野での取組強化のため、ガバナンス、ファイナンス、科学技術の3つの分野で変革と改善に向けた実質的な行動を求めている。

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