2022年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス3

人間の安全保障の実現に向けた取組の推進

オンライン形式で開催されたグローバル・ローンチにおける、林外務大臣のビデオメッセージ

オンライン形式で開催されたグローバル・ローンチにおける、林外務大臣のビデオメッセージ

2022年2月国連開発計画(UNDP)は人間の安全保障に関する特別報告書を公表(写真:UNDP)

2022年2月国連開発計画(UNDP)は人間の安全保障に関する特別報告書を公表(写真:UNDP)

2022年9月の国連総会一般討論演説において、岸田総理大臣は、国連の理念実現のための3つの柱の一つとして、新たな時代における人間の安全保障の理念に基づく取組の推進を掲げました。

人間の安全保障とは、人間一人ひとりに着目し、人々が恐怖や欠乏から免れ、尊厳を持って生きることができるよう、個人の保護と能力強化を通じて国・社会造りを進めるという考え方です。日本は長年にわたって人間の安全保障の理念を国際社会で推進してきており、開発協力大綱でも日本の開発協力の根本にある指導理念として位置付けています。また、一人ひとりに焦点を当てる人間の安全保障は、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指す持続可能な開発目標(SDGs)の理念とも軌を一にするものです。

日本政府は人間の安全保障の推進のため、概念の普及および現場での実践の両面において、これまで様々な取組を実施してきています。2012年には、日本の主導により、人間の安全保障の共通理解に関する国連総会決議が全会一致で採択されました。また、2000年以降累次にわたって、人間の安全保障に関するシンポジウムを開催するなど、国際社会における人間の安全保障の概念の普及に積極的に取り組んでいます。さらに、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、世界の人々の命・生活・尊厳が危機に晒(さら)された状況を受けて、菅総理大臣(当時)が2020年9月の国連総会一般討論演説において、新しい人間の安全保障の考え方について議論を深めることを提案し、国連の下でハイレベル諮問パネルが立ち上げられました。このパネルでの議論を踏まえて、2022年2月、国連開発計画(UNDP)により人間の安全保障に関する特別報告書が公表され、オンライン形式で開催されたグローバル・ローンチ(発刊イベント)には、林外務大臣がビデオメッセージを発出しました。この特別報告書では、従来の人間の安全保障の2つの柱である「保護」と「能力強化」に加えて、「連帯」の概念を取り込んだ「新たな時代の人間の安全保障」の必要性を提唱しています。気候変動や感染症を始めとする地球規模課題を一国のみで解決することは不可能であり、各国そして一人ひとりが連帯の精神を持ち、協調して対処することが不可欠です。日本政府はこうした認識に立ち、「新たな時代の人間の安全保障」のアプローチに賛同し、この概念の普及と実践に努めていく考えです。

また、現場での人間の安全保障の実践を推進するため、日本の主導により、1999年に国連に人間の安全保障基金が設置され、2021年度までに日本は同基金に累計で約490億円を拠出しています。同基金は、2021年末までに100以上の国・地域で、国連機関が実施する人間の安全保障の確保に資するプロジェクト282件を支援してきました。

人間の安全保障の実現に向けて、日本は引き続き国際社会で主導的な役割を果たしていきます。

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