2021年版開発協力白書 日本の国際協力

(3)日本のNGOとの連携

日本のNGOは、開発途上国・地域において様々な分野で地域住民が直接裨益する開発協力活動を実施しています。地震・台風などの自然災害や紛争等の現場においても、迅速かつ効果的な緊急人道支援活動を展開しています。NGOは、途上国それぞれの地域に密着し、現地住民の支援ニーズにきめ細かく対応することが可能であり、政府や国際機関による支援では手の届きにくい草の根レベルでの支援を行うことができます。外務省は、こうした「顔の見える開発協力」を行う日本のNGOを開発協力における重要なパートナーと位置付け、NGOが行う事業に対する資金協力、NGOの能力向上に資する支援、NGOとの対話の3点を柱に連携を進めています。

ア NGOが行う事業に対する資金協力

日本政府は、日本のNGOが開発途上国・地域において、開発協力事業および緊急人道支援事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、様々な協力を行っています。

■日本NGO連携無償資金協力

南アフリカのドゥエシューラ学区の12の対象校に図書室を設置。パソコン等の資機材を配備し、図書委員会生徒へのIT技能指導を行っている。(写真:特定非営利活動法人アジア・アフリカと共に歩む会)

南アフリカのドゥエシューラ学区の12の対象校に図書室を設置。パソコン等の資機材を配備し、図書委員会生徒へのIT技能指導を行っている。(写真:特定非営利活動法人アジア・アフリカと共に歩む会)

日本政府は、日本NGO連携無償資金協力として、日本のNGOが途上国で実施する経済社会開発事業に資金を提供しています。事業の分野も保健・医療、教育・人づくり、職業訓練、農村開発、水資源開発、地雷・不発弾除去のための人材育成支援等、幅広いものとなっています。この枠組みを通じて、2020年度は日本の59のNGOが、34か国・1地域において、総額約58億円の事業を109件実施しました(「案件紹介 ベトナム」、「案件紹介 バングラデシュ」も参照)。

■ジャパン・プラットフォーム(JPF)

ジャパン・プラットフォーム(JPF)解説は、日本のNGO、経済界および政府が協力し、NGOの緊急人道支援活動を支援・調整する組織です。2020年度には、イラク・シリア人道危機対応支援、南スーダン難民緊急支援、ウガンダ国内コンゴ民主共和国難民緊急対応支援、パレスチナ・ガザ地区人道危機緊急対応支援、新型コロナウイルス感染症対策緊急支援、害虫被害緊急支援、イエメン人道危機対応支援、アフガニスタン人道危機対応支援など、19プログラムで93件の事業を実施しました。2021年10月時点で43のNGOが加盟しています(JPFによる難民・国内避難民支援については「難民・避難民支援」も参照)。

■NGO事業補助金

外務省は、2020年度、開発協力事業の案件発掘・形成、事業実施後の評価、国内外における研修会や講習会などを実施する7つの日本のNGOに対し、NGO事業補助金を交付し、プロジェクト形成調査および事後評価、オンラインを含む国内外でのセミナーやワークショップなどの事業を実施しました。

■JICAの草の根技術協力事業

草の根技術協力事業は、日本のNGO/CSO、地方公共団体、大学、民間企業等の団体が、これまでの活動を通じて蓄積した知見や経験に基づいて提案する国際協力活動を、JICAが提案団体に業務委託してJICAと団体の協力関係の下に実施する共同事業です(制度の詳細や応募の手続き等は、JICAホームページ注10を参照)。草の根技術協力事業は約90か国を対象に、毎年200件程度を実施しています。

イ NGOの能力向上に資する支援

国際協力において、政府以外の主体の活動および民間資金活用の重要性が高まる中、日本のNGOの組織体制や事業実施能力をさらに強化し、人材育成を図ることを目的として、外務省は、以下の取組を行っています。

■NGO相談員制度

外務省の委嘱を受けた全国各地の経験豊富なNGO団体(2020年度は15団体に委嘱)が、市民やNGO関係者から寄せられるNGOの国際協力活動、NGOの設立、組織の管理・運営、開発教育の進め方などに関する質問や相談に対応しました。

■NGOインターン・プログラム/NGOスタディ・プログラム

外務省は、人材育成を通じた組織強化を目的として、NGOインターン・プログラムおよびNGOスタディ・プログラムを実施しています。NGOインターン・プログラムは、将来的に日本の国際協力NGOで活躍しうる若手人材の育成を目的としており、2020年度は、計8人がインターンとしてNGOに受け入れられました。

NGOスタディ・プログラムは日本の国際協力NGOに所属する中堅職員が国内外で研修を受け、研修成果を所属団体や他のNGOに広く共有し、日本のNGO全体の能力強化に寄与することを目的としており、2020年度は、このプログラムにより5人が研修を受けました。

■NGO研究会

NGOが直面する共通の課題をテーマとして、調査・研究、セミナー、ワークショップ、シンポジウムなどを行い、具体的な改善策を報告・提言することによって、組織や能力の強化を図ります。2020年度、「国際協力分野における性的搾取(さくしゅ)・虐待・ハラスメントからの保護に関する世界の動向調査と、日本の国際協力NGOにおける取組に向けたガイドライン等の策定・普及」および「新型コロナウイルス感染症拡大に対する日本の国際協力NGOの対応戦略」の2つのテーマに関する研究会を実施しました。この活動の報告書や成果物は外務省のODAホームページに掲載されています。

ウ NGOとの対話(NGO・外務省定期協議会およびNGO-JICA協議会)

NGO・外務省定期協議会解説は、2020年度は新型コロナ拡大の影響を受け全体会合は開催されませんでしたが、小委員会の「連携推進委員会」および「ODA政策協議会臨時会合」がそれぞれ1回ずつ開催されました(NGO・外務省定期協議会の詳細および議事録などについては外務省ホームページ注11を参照)。

また、JICAは、NGOとJICAの対話と連携を目的とするNGO-JICA協議会を実施しており、2020年度は2度オンラインにて実施され、1回目は36団体、2回目は94団体がそれぞれ参加しました(NGO-JICA協議会の詳細および議事録などについてはJICAホームページ注12を参照)。


  1. 注10 : https://www.jica.go.jp/partner/kusanone/index.html
  2. 注11 : https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/taiwa/kyougikai.html
  3. 注12 : https://www.jica.go.jp/partner/ngo_meeting/index.html
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