(4)地方公共団体との連携
開発途上国においては、急速な経済発展が進む中で、大都市のみならず、地方都市においても、都市化の進展とともに、水、エネルギー、廃棄物処理、都市交通、公害対策分野等の都市問題に対応するニーズが急増しています。このような中で、様々な分野で知見を蓄積している日本の地方公共団体が、途上国のニーズにきめ細かに対応することは、途上国の開発にとって大変有益です。このため、日本政府は地方公共団体のODAへの参画を推進してきました。また、地方公共団体も、日本の地域の活性化や国際化の促進のため、地方の産業を含めた地方公共団体の海外展開を積極的に推進しています注13(具体的事例については、「匠の技術、世界へ」も参照)。
ウガンダ、エチオピア、ナイジェリア、マリ一般公募



小規模農家のためのe-エクステンション・プラットフォーム構築
(1)技術協力プロジェクト(2020年8月~実施中)注1(2)日本財団資金(1986年~)

アプリでGPS情報に基づく栽培アドバイスを確認する農業普及員(ナイジェリア)(写真:SAA)
一般財団法人ササカワ・アフリカ財団(以下、SAA)は、1980年代初頭に東アフリカを襲った大飢饉をきっかけにアフリカの農業を支援するために設立された団体であり、35年にわたりアフリカの小規模農家に農業技術の普及に取り組んでいます。特にJICAと農業分野における連携協力の覚書を締結し、市場志向型農業振興(SHEP)アプローチ注2などの技術協力プロジェクトを通じ、これまで農家の所得向上のための事業を行ってきました。
2020年、SAAは新型コロナウイルス感染症がアフリカの農業にもたらす影響に関する調査を実施しました。その結果、農家にとって種子や肥料の入手が困難になっている現状や、金融サービスや市場へのアクセスに影響が出ていること、各地方公共団体の農業普及員による農家への指導機会が減っていることが分かりました。これを受けて、SAAはアフリカ初のe-エクステンション・プラットフォーム注3構想を掲げ、中長期的な視点から、ICTを駆使しつつ、小規模農家とその関係者との情報格差を解消し、コミュニケーションを円滑化して、アフリカの食料システムのレジリエンス(強靭(きょうじん)性)強化に取り組んでいます。
たとえば、ウガンダでは、現地のベンチャー企業m-Omulimisaが開発したアプリを通じて農業技術や市場・気象情報を農家に提供し、農家と農業普及員との双方向コミュニケーションを可能にしました。ナイジェリアでは、GPSに基づく栽培アドバイス・ツールを活用して適切な施肥(せひ)等を行い、とうもろこしの単収注4が48%増加する成果を上げています。エチオピアでは、農家が病虫害被害の写真やSNSを送ると、農業普及員がアプリを通じて対応策をすばやく伝えることができるようになりました。これからも、これらのデジタルツールを活用し、農業のDX化を推進することを通じて、SAAのアフリカでの活動は続いていきます。
注1 生計向上のための市場志向型農業普及振興プロジェクト
注2 用語解説を参照。
注3 ICTを活用した技術移転、省人化農業、ロックダウンの影響による物流停滞への対応としての投入材へのアクセスの3点を重点分野とするSAAの取組。現地のベンチャー企業と連携しながらスマートフォンの農業普及アプリの導入やアプリの新規開発を行い、小規模農家の情報格差の解消を目指す。
注4 農産物の面積あたりの収穫量。
- 注13 : ODAを活用した地方公共団体の海外展開支援:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/page23_000707.html