2020年版開発協力白書 日本の国際協力

(2)開発協力人材・知的基盤の強化

ナイジェリアのボルノ州ングウォム村の再建された診療所で、医療従事者から現状を聞く横井水穂(よこいみずほ)UNDP北東部支所長(JPO派遣制度を利用し、2001年までUNDPガーナ事務所に勤務)

ナイジェリアのボルノ州ングウォム村の再建された診療所で、医療従事者から現状を聞く横井水穂(よこいみずほ)UNDP北東部支所長(JPO派遣制度を利用し、2001年までUNDPガーナ事務所に勤務)

日本政府は、2025年までに国連関係機関で勤務する日本人職員数を1,000人とする目標を掲げており、その達成に向けて、大学や国際機関駐日事務所などと連携しつつ、世界を舞台に活躍・貢献できる人材の発掘・育成・支援を積極的に実施しています注17。また、前述のODAに関する有識者懇談会により提出された提言の1つである「開発協力を担う人材の育成」も踏まえつつ、人材発掘の観点から、国内外において、国際機関の採用制度を説明するセミナーを開催したり、国際機関の幹部や人事担当者が訪日して行う就職説明会を実施したりするなど、広報に努めています。

また、日本政府は、国際機関の正規職員を志望する若手の日本人を原則2年間、国際機関に職員として派遣し、必要な知識・経験を積んでもらい、派遣後の正規採用を目指すジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣制度注18を実施しており、開発協力分野を含む国際機関で活躍する人材の育成に努めています(JPOで派遣された国際機関日本人職員の活躍については、「国際協力の現場から」も参照)。外務省では、1974年から同制度による派遣を開始し、これまでに累計約1,800名、2019年度は52名のJPOを派遣しました。このほか、平和構築・開発人材の発掘・育成・キャリア構築を包括的に実施するため、2015年度から、「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業注19」も実施しています(詳細は「平和構築分野での人材育成」を参照)。

JICAは、「オールジャパンの国際協力活動推進」という理念のもと、国際協力分野での人材の発掘・育成と既存の人材の有効活用に取り組んでいます。具体的には、省庁、JICAの情報のみならず、NGO、国際機関といった様々な国際協力実施機関、企業、大学等幅広い国際協力関連情報を一元的に発信する国際協力キャリア総合情報サイト「PARTNER」注20を運用し、国際協力に関する求人情報、人材の登録、各種研修・セミナー情報の提供、キャリア相談などを行っています。加えて、開発協力に関わりの深い研究を行い、将来同分野において活躍する意思を持っている大学院生などに対し、1997年からインターンシップを実施しており、2019年度は146名を開発コンサルタントの協力現場を含む様々な職場で受け入れています。また、2002年の第2次ODA改革懇談会の提言に基づいて、JICAは、国際協力専門員制度により、高い専門的な能力と途上国での豊富な業務経験を持つ人材を確保するとともに、国際協力人材の養成のため、ジュニア専門員の採用や、能力強化研修なども実施しています。

また、JICA緒方貞子平和開発研究所注21は、開発途上国が現場で直面する課題について政策志向の研究を行い、国際社会における日本の知的プレゼンスの強化に取り組んでいます。この基本方針を踏まえ、JICA緒方研究所では現在「平和と開発のための実践的知識の共創」という新たなビジョンを掲げています。その実現に向けて、同研究所は、国際的な学術水準の研究を行い、現場で得られた知見を分析、総合してJICAの事業にフィードバックさせ、人間の安全保障の実現に貢献するほか、新型コロナウイルス感染症をきっかけに社会が大きく変化する中で、いかにSDGsを戦略的に推進させていくかなど、新たな開発課題に関する研究にも果敢に挑戦しています。また、人材育成の機能と研究交流の拠点としての機能を一層強化し、JICA開発大学院連携事業の一翼を担う機関として同事業を推進しています。

日本政府は、日本が持つ強みを活かして、日本と途上国側の関係者間での政策研究や知的ネットワーク形成を図るなど、大学・研究機関と連携しつつ、開発協力を立案・発信するための知的基盤強化に努めていきます(国際協力を通じた日本の活性化については、「開発協力トピックス」を参照)。

日本人が国際機関職員になるための主な方法

★それぞれの制度の詳細は下記ホームページをご覧ください。
空席公募:https://www.mofa-irc.go.jp/boshu/open-recruitment.html
JPO派遣制度:https://www.mofa-irc.go.jp/jpo/seido.html
国際機関側の若手育成・採用制度(YPP):https://www.mofa-irc.go.jp/apply/ypp.html


  1. 注17 : 外務省国際機関人事センター・ホームページ(https://www.mofa-irc.go.jp/)では、国際機関空席情報や国際機関で働くための様々な情報提供をしています。
  2. 注18 : JPO派遣制度:https://www.mofa-irc.go.jp/jpo/seido.html
  3. 注19 : 平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/peace_b/j_ikusei_shokai.html
  4. 注20 : 国際協力キャリア総合情報サイト「PARTNER」:http://partner.jica.go.jp/
  5. 注21 : 2020年4月1日、JICA研究所は緒方貞子氏によるJICA研究所の設立趣旨を継承・発展させ、世界の平和と開発への知的貢献を強化するためにJICA緒方貞子平和開発研究所に名称を変更。
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