2020年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス7

開発協力を通じた日本の活性化

日本の開発協力は、企業や地方自治体、大学、市民社会など、多様なアクター(主体)によって支えられています。こうしたアクターの関与は、日本の開発協力を有効に実施する上で欠かせない存在ですが、実は日本社会の活性化や国際化にも繋がっているのをご存知ですか。

そうした効果が生まれている分野の一つが、外国人材の往来を通じた地方の活性化です。新型コロナウイルス感染症の影響による一時的な減少はありますが、近年日本を訪れる外国人の数は増加しており、日本に在留する外国人は2019年末時点で293万人、就労する外国人も同年10月末時点で166万人と、それぞれ過去最多を更新しました。こうした外国人材の増加を地方の活性化に繋げていくために、外国人材を円滑・適正に受け入れ、共生社会を実現するための環境整備が重要となっています。

2019年、JICAおよびラオス農業森林省、香川県ファーマーズ協同組合の連携の下で「持続的農業開発にかかるシェンクワン・香川県・JICA連携プログラム」が開始されました。JICAは、このプログラムを通じ、香川県関係者と協働して、ラオス・シェンクワン県において技術協力を行い、農産物の生産量を増加させて農家の生計向上とシェンクワン県の農業振興に繋げることを目指しています。加えて、本プログラムに参画する香川県にとっても、ラオスからの優秀な技能実習生受入れの円滑化、ラオスでのビジネス展開の促進、外国人材の往来を通じた異文化理解の促進といったメリットが期待されます(詳細は、「匠の技術、世界へ」を参照)。

また、宮崎市では、JICAと宮崎市、宮崎大学および市内のIT企業が協力し、バングラデシュの成長を支えるICT人材育成を支援する仕組み(B-JET:Bangladesh-Japan ICT Engineers' Training Program)が構築されています。バングラデシュの工科大学卒業生等が日本語とビジネスマナーを学んだ上で来日し、宮崎大学で日本語研修を継続しながら市内IT企業でのインターンを行うというものです。この取組を通じて育成されたICT人材の一部は宮崎市内で就職しており、同市の国際化およびICT産業の活性化にも貢献しています。

こうした効果は、大学でも生まれています。「JICA開発大学院連携」は、ODAを通じて来日する留学生に対して、日本自身の開発・発展の経験やドナーとしての経験などについて体系的な学びの機会を提供し、途上国のリーダーとなる人材を育成することを目指して2018年に開始されました。ここで提供されるプログラムの一部は、ODA関係の留学生に限らず、他の留学生や日本人の学生にも開放されています。途上国の優秀な人材が来日し、他の学生とともに日本の経験について英語で学ぶことは、大学教育全体の活性化・国際化にも貢献することが期待されます。

B-JETに参加するバングラデシュの学生たち。現地でのトレーニングの後、来日し宮崎でインターンを行う

B-JETに参加するバングラデシュの学生たち。現地でのトレーニングの後、来日し宮崎でインターンを行う

JICA開発大学院連携の一環で行われた「日本理解プログラム」に参加する留学生たち(写真:長岡市郷土史料館)

JICA開発大学院連携の一環で行われた「日本理解プログラム」に参加する留学生たち(写真:長岡市郷土史料館)

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