(8)食料安全保障注44および栄養
国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国連世界食糧計画(WFP)、国連児童基金(UNICEF)、および世界保健機関(WHO)が共同で作成した報告書である「世界の食料安全保障と栄養の現状2020」によると、2019年の世界の栄養不足人口は6億8,780万人で、世界の約11人に1人に達したと推定されています。2014年まで10年以上減少傾向にありましたが、2015年に増加に転じて以降、6千万人以上増加しています。SDGsの目標2として掲げられた「飢餓(きが)の終焉(しゅうえん)、食料安全保障と栄養改善、持続可能な農林水産業の実現」を達成するためには、さらなる努力が不可欠な状況です。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する世界経済の落ち込みにより、暫定(ざんてい)的な予測ではあるものの、8千万人から1億3千万人が追加的に栄養不足に陥る可能性が指摘されています。この深刻な食料危機に対し、レジリエンス(強靱(きょうじん)さ)や適応能力の強化に向けた行動の加速と拡大が世界に呼びかけられています。
食料安全保障を確保するためには、持続可能な食料増産のみならず、栄養状態の改善、社会的セーフティー・ネットの確立、必要な食料支援や病害虫・家畜の感染症への対策など、国際的な協調による多面的な施策が求められます。栄養状態の改善については、特に、妊娠から2歳の誕生日を迎えるまでの1000日間における妊婦と子どもの栄養状態を改善することが、子どもの長期的な成長過程にも多大な影響を与えるため、重要とされています。
また、開発途上国の貧困層の多くは農村地域に住み、その大部分が生計を農業に依存していることから、農業・農村開発に取り組むことも重要です。加えて、途上国の農家の多くは、農産物を高く買い取ってもらえないことなどが要因となって、貧困から抜け出せない状況にあり、その解決策として、フードバリューチェーンの構築が提起されています。これは、農家をはじめ、種や肥料、農機などの必要な資機材の供給会社、農産物の加工会社、輸送・流通会社、販売会社など多くの関係者が連携して、農産物の付加価値を、生産から製造・加工、流通、消費に至る段階ごとに高められるような連鎖をつくる取組です。具体的には、農産物の質の向上、魅力的な新商品の開発、輸送コストの削減、販売網の拡大による販売機会の増加などが農産物の付加価値としてあげられます。
●日本の取組

インドのヒマーチャル・プラデシュ州マンディ県における、野菜栽培・加工の現地普及員らが地区農民に技術指導を実施する様子(写真:JICA)
日本は、フードバリューチェーンの構築を含む農林水産業の振興に向けた協力を重視し、地球規模課題として、食料問題に積極的に取り組んでいます。短期的には、食料不足に直面している途上国に対して食糧援助を行い、中長期的には、飢餓(きが)などの食料問題の原因の除去および予防の観点から、途上国における農業の生産増大および生産性向上に向けた取組を中心に支援を進めています。中長期的支援として、具体的には、日本の知識と経験を活かし、栽培環境に応じた研究・技術開発や技術の普及能力の強化、水産資源の持続可能な利用の促進、農民の組織化、政策立案などの支援に加え、灌漑(かんがい)施設や農道、漁港といったインフラ整備などを実施しています。
…食料支援と栄養改善への取組
日本は、食料不足に直面している途上国からの要請に基づき、食糧援助を行っています。2019年度には、二国間食糧援助として13か国に対し、総額40.5億円の支援を行い、日本政府米を中心に、約68万トンの穀物(コメ、小麦)を供与しました。
また、日本は、WFPとの連携の下、ネパールのヌワコット郡において、地産地消型食材を用いた学校給食を提供するための施設整備及び学校給食普及に向けた能力構築並びに地域住民への栄養教育のための研修等を実施するための3.52億円の無償資金協力を行いました。
二国間支援に加え、日本は、国際機関と連携して、飢饉(きが)の要因となる紛争の発生・再発を予防する観点からの食料支援にも取り組んでいます。たとえば、WFPを通じて、緊急食糧支援、教育の機会を促進する学校給食プログラムのほか、農地や社会インフラ整備などへの参加を食料配布により促し、地域社会の自立をサポートする食料支援などを実施しています。WFPは2019年に、世界83か国で約9,710万人に対し、約420万トンの食糧を配布するなどの活動を行っており、日本は2019年、WFPの事業に総額1億5,693万ドルを拠出しました。
栄養改善への取組に関しても、二国間で母乳育児の推進や保健人材育成などの支援を行っているほか、多国間では、UNICEFやWFPなどへの拠出を通じた支援を行っています。ほかにも、日本は、国際的に栄養改善の取組を牽引(けんいん)する国際的イニシアティブであるSUN(サン)(Scaling Up Nutrition)にドナー国として参加しています。近年は、民間企業と連携した栄養改善事業の推進にも力を入れており、2016年には、栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)を発足させました。このプラットフォームを通じ、日本は、民間企業、市民社会、学術研究機関といったパートナーと協同で、食品関連事業者などによる途上国における栄養改善の取組を後押しする環境を整備し、栄養改善に貢献しています。
このほか、第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)において、日本は、アフリカでの栄養改善を加速化するための「食と栄養のアフリカ・イニシアティブ(IFNA)」を立ち上げ、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)にて、アフリカの5歳以下の子ども2億人の栄養改善に向けてIFNAの経験・知見をアフリカ全土に拡大することを表明しました。このように、日本主導の栄養改善の取組が本格的に動き始めています。
ベトナム一般公募
栄養士制度普及促進事業
JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業*1(味の素による「ベトナム栄養制度創設プロジェクト」との連携)(2014年4月~2016年6月)

ベトナム人栄養士がインターンとして京都大学病院の栄養士から学んでいる様子(写真:味の素ファンデーション)

ベトナム国立栄養研究所の研修センターで栄養学を学んでいる医療従事者とプロジェクト専門家(写真:味の素ファンデーション)
近年成長が著しいベトナムにおいては、国が豊かになりつつある一方で、肥満などの過栄養や生活習慣病の急増といった健康問題が現れはじめています。そのため、正しい栄養知識を国民に伝える栄養士を養成する必要性が高まっています。
そこで、2011年、味の素株式会社はベトナム国立栄養研究所とともに「ベトナム栄養制度創設プロジェクト*2」を開始し、2013年には4年制栄養士養成コースがハノイ医科大学に開講されました。日本栄養士会、十文字学園女子大学、神奈川県立保健福祉大学などが同プロジェクトに協力し、2017年にはベトナム初の栄養士が43名誕生しました。
また、同社は、JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業を通じて、栄養関連制度に関わる政府、大学および病院関係者と、栄養士養成コースの教官および学生を日本に招いて研修を実施しました。また、訪日した関係者らは日本で学んだ知識や現場視察の経験を基に、ベトナム国内で栄養管理や政策の重要性を伝える「栄養シンポジウム」を開催しました。その成果もあり、2015年には栄養士が公務員の職業として法的に認定されるなど、ベトナムにおける栄養士制度の基盤ができました。
同社はその後も支援を続け、臨床栄養分野におけるインターンシップ事業や現地ワークショップを行いました*3。また、2017年以降は、公益財団法人味の素ファンデーションが事業を継続し、現在では栄養士を養成する大学は9校にまで増えました。ベトナム保健大臣はワークショップで「5年で500人」の栄養士養成に言及しており、その目標に向けて、様々な支援が積み重ねられています。
新たに誕生した栄養士が、ベトナム国内での健康状態の向上のための担い手として活躍するためには、まだまだ教育や制度の充実が必要です。栄養士が活躍できるよう、味の素ファンデーションは、持続可能な仕組みづくりのための支援を行っています。
*1 開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業(現:普及・実証・ビジネス化事業(SDGsビジネス支援型)
*2 Vietnam Nutrition system Establishment Project(VINEP)
*3 医療技術等国際展開推進事業(2015年、2017年)
国際連合世界食糧計画(WFP)の2020年ノーベル平和賞受賞

WFP日本事務所、WFP協会およびWFP議員連盟一行による表敬を受け、WFPのノーベル平和賞受賞について報告を受けた菅総理大臣(写真:内閣広報室)
2020年10月9日、2020年のノーベル平和賞にWFPが選ばれました。WFPは、1961年に設立された緊急食糧支援等を実施する国連の機関です。
菅総理大臣および茂木外務大臣は、受賞に対する祝意を表明するメッセージをそれぞれ発出しました。その中で、今日、世界が新型コロナウイルス感染症の拡大という未曾有(みぞう)の危機に直面する中、連日対応にあたっているWFP職員に深甚(しんじん)なる敬意を表するとともに、国際連合唯一の食糧支援機関として、人道危機に際し、豊富な活動実績を有するWFPを高く評価しており、今後もWFPの取組を力強く後押ししていく考えを表明しました(WFPの邦人職員の活躍については、特集「世界各地で活躍する国際機関日本人職員」も参照)。
…東京栄養サミット2021の開催
日本は、栄養をユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に重要な基礎分野と位置づけ、東京オリンピック・パラリンピック開催国として、2021年12月を目処に「東京栄養サミット2021」を開催する予定です。同サミットを通じて、栄養改善に向けた国際的取組を推進することを目指しています。
同サミットでは、栄養に関連する様々な分野を取り上げ、多くの関係者とともに課題解決に向けた議論を行う予定です。具体的には、栄養のUHCへの統合、健康的で持続可能なフード食料システムの構築、脆弱(ぜいじゃく)な状況下における栄養不良対策、データに基づくモニタリング(説明責任)、栄養改善のための財源確保の5つのテーマを取り上げる予定です(UHCについて、詳細は「UHCの推進(国際会議での日本のイニシアティブ)」から「UHCの推進(日本の具体的取組)」を参照)。
…フードバリューチェーンの構築と農林水産業の振興

カメルーンの首都ヤウンデ市で陸稲の収穫後処理研修において唐箕(とうみ)の説明を行う日本人専門家
日本は、政府と民間企業が連携した取組により、途上国などにおけるフードバリューチェーンの構築を推進しています。2019年12月には、各国・地域でフードバリューチェーン構築の重点的取組を定めた「グローバル・フードバリューチェーン構築推進プラン」を策定し、2020年度には、同プランに基づき、ベトナム、タイ等と二国間政策対話などを実施しました。
また日本は、アフリカの食料安全保障・貧困削減の達成のため、アフリカの経済成長において重要な役割を果たす農業を重視し、その発展に貢献しています。たとえば、アジア稲とアフリカ稲を交配したネリカ(NERICA)*の研究支援と生産技術の普及支援、包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)に基づいたコメ生産増大のための支援などを行っています。
さらに、2019年のTICAD7において、サブサハラ・アフリカのコメ生産量をさらに倍増(2018年目標値の2,800万トンから2030年までに5,600万トンへ倍増)させることを目標として、アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)フェーズ2の立ち上げを表明しました。CARDフェーズ2では、対象国を23か国から32か国に増やし、自国産米の品質向上のための取組を含むRICEアプローチ*を採用することなどにより、コメの生産量倍増に向けた取組を強化しています。
なお、自給自足から「稼ぐため」の農業への転換を推進するため、日本は農家向け市場志向型農業振興(SHEP)アプローチ*を通じ、2019年までに、アフリカ以外を含む29か国を対象に、技術指導員18,013人、小規模農家183,042人に対して、市場志向型農業の振興に向けた人材育成を実施してきました。
加えて日本は、TICAD Ⅵにおける各国からの農業分野へのさらなる協力要請を受けて、アフリカ諸国と日本とをつなぐプラットフォームを立ち上げました。同プラットフォームに基づき、2019年から2020年までの間に、7名の経験豊かな専門家を派遣し、優れた農業技術の移転と人材育成を進めると同時に、農業分野の優れた案件を推進しています。
モロッコ
水産業振興のためのJICA専門家派遣
個別専門家(2017年5月~2020年1月)

漁民との会話を通じて漁村の状況を確認する杉山専門家(写真:JICA)

女性組合と地場産品のアイディアを交換する杉山専門家(写真:JICA)
日本とモロッコとの間には、水産セクター開発において40年にわたる長い協力の歴史があります。日本は、水産インフラ整備、沿岸漁業振興、水産教育、資源研究といった多面的な支援を行いました。今や、モロッコの水産業はアフリカ最大級の漁獲量を誇るまでに発展し、水産物は国の総輸出額の約10%を占め、関連産業を含めて約66万人もの雇用を生んでいます。その一方で、社会的、経済的に弱い立場にある零細(れいさい)漁業者も少なくありません。
そのため、2017年5月から、杉山俊士(すぎやましゅんじ)専門家がモロッコの海洋漁業局に行政アドバイザーとして派遣されました。
杉山専門家はまず、零細漁業の実態を知るため、海洋漁業局の同僚とともに数か月かけて、沿岸部に点在する約23か所の漁村を訪ねました。そして、漁師たちが訴える過酷な状況に耳を傾け、地場(じば)産品の開発、観光業と漁業の連携、女性グループの参画、といった様々な可能性について現場で議論し、その結果を提言としてまとめ、モロッコ政府に提出しました。その内容は、イワシの瓶詰(びんづ)めの製造やムール貝の養殖を通じた零細漁業者の収入機会向上のための取組、欧米からの観光客の取り込みに向けた漁協直営レストランや水産物直売所と漁港の連携といった取組などで、これに加え、水産物直販のための技術研修なども行いました。
また、モロッコは、日本から学んだ水産インフラ整備などの経験を生かしてサブサハラアフリカ諸国への南南協力*1を進めていますが、杉山専門家はそのような同国の活動も後押しし、アフリカ地域全体で水産分野が発展するための協力を進めています。
なお、この提言は、モロッコの水産セクターの持続的な発展を意図した「ブルーエコノミー(BE)*2」の具体的な実施枠組みとしてまとめられたものであり、日本にとっても、BEという新しい分野での支援の経験を得ることにつながっています。このように、日本とモロッコの双方にとって有益な新たな試みが着々と進められています。
*1 用語解説を参照。
*2 海や河川、湖などにおける資源の持続的な利用を通じて、海洋資源の保全と経済発展の両立を目指すもの。多様な関係者を巻き込み、地域の海洋・水産資源を有効活用した経済開発を目指すコンセプトで、近年脚光を浴びており、モロッコだけでなくアフリカ諸国でもその取組への期待が高い上、水産品加工や商品開発における日本の経験を活かすことが可能。
…多国間協力による食料安全保障
「責任ある農業投資」*のもと、FAO、IFAD、国際連合貿易開発会議(UNCTAD)、世界銀行の4つの国際機関で「責任ある農業投資原則(PRAI)」が策定され、2014年の世界食料安全保障委員会(CFS)では、「農業及びフードシステムにおける責任ある投資のための原則(CFS-RAI)」が採択されました。日本は、関係国際機関と連携し、「責任ある農業投資」のための調査研究や、地域レベルの意識向上と理解促進を図るため、優良事例を共有するなどの取組を推進しています。
また、2016年のG7伊勢志摩サミットで、「食料安全保障と栄養に関するG7行動ビジョン」を発表しました。同行動ビジョンを受け、2030年までの目標達成のため、女性のエンパワーメント、栄養改善、農業・フードシステムにおける持続可能性および強靭(きょうじん)性の確保を重点分野として取り組んでいます。
またG20において、日本は、国際的な農産品市場の透明性を向上させるための「農業市場情報システム(AMIS:Agricultural Market Information System)」を支援する取組を行ってきました。これは、2011年にG20が食料価格乱高下への対応策として立ち上げた、関連する組織間のプラットフォームで、これを活用してG20各国、主要輸出入国、企業や国際機関が、タイムリーで正確かつ透明性のある農業・食料市場の情報(生産量や価格など)を共有しています。日本は、食料安全保障の向上に貢献するべく、日本の情報を共有するとともに、AMISへの事業費の拠出を行っています。
そのほか日本は、途上国が自らの食料生産基盤を強化するため、FAO、IFAD、国際農業研究協議グループ(CGIAR)、WFPなどの国際機関を通じた農業支援に加え、国際獣疫事務局(OIE)やFAOを通じた動物衛生の向上にも貢献しています。たとえば、日本はFAOを通じて、途上国の農業・農村開発に対する技術協力や、食料・農業分野の国際基準・規範の策定、統計の整備などを支援しています。加えて、15の農業研究機関からなるCGIARが行う品種開発などの研究を支援するとともに、研究者間の交流を通じたCGIARとの連携を進めています。また、口蹄疫(こうていえき)、ASF(アフリカ豚熱)などの国境を越えて感染が拡大する動物の感染症について、OIEとFAOが共同で設置した「越境性動物感染症の防疫のための世界的枠組み(GF-TADs)」への積極的な貢献などを通じて、両国際機関と連携しながら、アジア・太平洋地域における動物衛生の向上に貢献しています(「匠の技術、世界へ」も参照)。
- *ネリカ(NERICA:New Rice for Africa)
- 1994年、国際農業研究協議グループ(CGIAR)のアフリカ稲センター(Africa Rice Center)が、多収量であるアジア稲と雑草と、病虫害に強いアフリカ稲を交配することによって開発した稲の総称。アフリカ各地の自然条件に適合するよう、従来の稲よりも、①収量が多い、②生育期間が短い、③乾燥(干ばつ)に強い、④病虫害に対する抵抗力がある、などの特長がある。日本は1997年から、国際機関やNGOと連携し、新品種のネリカ稲の研究開発、試験栽培、種子増産および普及に関する支援を実施するとともに、農業専門家やJICA海外協力隊を派遣した栽培指導や、アフリカ各国の研修員の日本国内での受入れを行っている。
- *アフリカ稲作振興のための共同体(CARD:Coalition for African Rice Development)
- 稲作振興に関心のあるアフリカのコメ生産国と連携して活動することを目的とした、ドナー(援助国、アフリカ地域機関、国際機関など)が参加する協議グループ。アフリカにおけるコメ生産拡大に向けた自助努力を支援するため、2008年第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)において我が国が提唱し、立ち上げた。
- *RICE(Resilience, Industrialization, Competitiveness, Empowerment)アプローチ
- CARDフェーズ2で採用されたサブサハラ・アフリカのコメ生産量倍増のための取組。具体的には、気候変動・人口増に対応した生産安定化や、民間セクターと協調した現地における産業形成、輸入米に対抗できる自国産米の品質向上、農家の生計・生活向上のための農業経営体系の構築が挙げられる。
- *小規模農家向け市場志向型農業振興(SHEP:Smallholder Horticulture Empowerment& Promotion)アプローチ
- 2006年に日本がケニアで開始した小規模農家支援のためのアプローチであり、野菜や果物などを生産する農家に対し、「作ってから売る」から「売るために作る」への意識変革を起こし、営農スキルや栽培スキル向上によって農家の所得向上を目指すもの。日本は、2013年の第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)において、SHEPアプローチのアフリカ諸国への広域展開と人材育成(技術指導員1,000人、小農組織5万人)を表明するなど、同アプローチを取り入れた活動をアフリカを中心に世界各国で実践している。
- *責任ある農業投資(Responsible Agricultural Investment)
- 世界規模での食料増産の必要性や国際食料価格の高騰(こうとう)を踏まえ、途上国の農村部における深刻な貧困の削減などを目的とした農業投資の増加の必要性と、農業投資によって生じる現地の人々の食料安全保障や土地所有権などの様々な権利が脅かされるといった意図せざる負の影響への対応の調和を図ることで、農民を含む現地と投資家の利益の最大化、および両者のリスクの最小化を目指すもの。2009年のG8ラクイラ・サミット(イタリア)において、日本が提唱。
- 注44 : すべての人がいかなるときにも十分で安全かつ栄養ある食料を得ることができる状態のこと。