2020年版開発協力白書 日本の国際協力

世界各地で活躍する国際機関日本人職員
~ワクチン、食糧支援、医師、子どもや弱者の保護など、世界各地で活躍している皆さまから寄稿を頂きました~

北島千佳氏
GAVIワクチンアライアンス上級資金調達官

北島千佳氏

新型コロナウイルス感染症のパンデミック収束に向けて最も期待されているのがワクチンです。Gaviワクチンアライアンスとは、安全で効果のある新型コロナワクチンを速やかに開発し、世界中の人々に届けるCOVAXファシリティという枠組みを主導している官民パートナーシップです。私は上級資金調達官として、Gaviの活動を支える資金調達を担当しています。従来、Gaviの活動の中心は最貧国の子どもたちへの予防接種でしたが、新型コロナにより活動内容や支援対象が拡大しています。COVAXファシリティは先進国・途上国を問わず、最も必要とする人々にワクチンを平等に届ける世界で唯一の仕組みで、世界の180か国以上の国・地域が参加し、2021年末までに20億回分のワクチンの調達と供給を目標にしています。新たなワクチンの開発が成功する確率は必ずしも高くないため、多様なワクチンの開発・製造を支援することでワクチン確保の「保険」としても機能します。日本政府は2011年よりGaviの主要ドナー国であるとともに、COVAXファシリティへの参加を最初に表明するなど、他の国々の参加を牽引(けんいん)しています。

GaviワクチンアライアンスおよびCOVAXファシリティについては、用語解説も参照。

藤井明子氏
国連開発計画(UNDP)モルディブ常駐代表

藤井明子氏

世界の観光客を魅了して止まない常夏のモルディブ。リゾートのイメージが強く、地元住民が暮らす島の日常のイメージは湧(わ)きにくいかもしれませんが、国の収入のほとんどを観光に依存するモルディブに新型コロナ危機が与えた影響は多大なものでした。2020年3月27日に空港が閉鎖されてから7月15日の再開まで観光収入はゼロに等しく、多くの人々が失職や減収を余儀なくされました。UNDPが同国の経済省と行った調査によると、元々失業率の高かった若者層にさらにしわ寄せが行ったとのことです。15万人が2キロ四方の土地にひしめき合う首都マレでは、感染は瞬く間に広がり、一部食料の輸入も滞り、島嶼(とうしょ)国の脆弱(ぜいじゃく)性が露呈しました。

そのため、UNDPは、日本政府の支援のもとコロナ危機の影響で職を失った若者や女性を対象に零細農家・企業の復興支援を早急に立ち上げました。スマートシティを推進しているフルマレ市では都市菜園を、また比較的農地のあるラム環礁では農業支援を推進しました。起業資金を持たない女性たちのためのモルディブ初の共同シェアキッチンの立ち上げも進み、新型コロナ危機の前よりも生活環境を良くする‘Build Forward Better'の概念が復興の鍵となっています。次のモルディブ旅行では是非住民島にも足を伸ばし、現地の野菜を使った手料理を食してみてはいかがでしょうか。

日比幸徳氏
国連世界食糧計画(WFP)リビア・トリポリ事務所事業総括

日比幸徳氏

2018年9月から、私は国連世界食糧計画(WFP)リビアの事業総括として事業を担っています。治安悪化のため、赴任当初の3か月間は隣国チュニジアからの遠隔勤務でした。新型コロナの影響で一時帰国していた2020年4月から11月までの間も、リビアとの時差-7時間の日本から現地時間にあわせて自宅からの遠隔勤務を続けました。2020年12月現在はリビアの事務所に戻り勤務しています。

人口677万人の同国では、現在も90万人が人道支援を必要としています。新型コロナの影響は事業遂行を困難にすると同時に食料援助の必要な人を2倍近くに増加させています。現在WFPリビアは、困難に直面しながらも、20万人以上に支援を届けています。どの事業の場でも感染対策を徹底しています。たとえば、新型コロナの影響で学校が休校中のため、約2万人の児童に対する学校給食を自宅配給に変更し、栄養バランスの取れた食事の提供を続けています。遠隔事業の運営経験、テクノロジーの活用、そして同僚の専門性を強みに、私は新しい取組においても走りながら前に進んでいます。

澤屋奈津子氏
国際移住機関(IOM)ニジェール事務所 パブリック・ヘルス・オフィサー

澤屋奈津子氏

ニジェールでは、2020年3月中旬、新型コロナの感染拡大を抑えるために国境が閉鎖されました。これにより、首都ニアメおよびアガデズ州のトランジット・センターに足止めされた西アフリカ諸国の人々の母国への帰還や、アルジェリアから送還されるニジェール人を含む移民たちの隔離(かくり)期間中の生活への支援が必要となりました。私はニジェールの新型コロナの国内監視委員会に国際移住機関(IOM)スタッフとして参加しており、政府およびWHO等の国際機関を含む他のパートナーとともに、日々悪戦苦闘しながら支援を続けています。

一方、ティラベリ州等では洪水やテロにより非常事態宣言が出され、国内外で多くの避難民が発生しています。そのため、日本からの資金協力を得て、最も脆弱(ぜいじゃく)な妊婦、子どもなど被災者一人ひとりの状況に配慮しつつ、シェルターや保健医療サービスへの支援を行っています。こうした支援が実を結び、彼ら一人ひとりの力で困難に対応できるようになってほしいと心から願って活動しています。

木多村知美氏
国連児童基金(UNICEF)中東・北アフリカ事務所(在ヨルダン)医師

木多村知美氏

UNICEF中東・北アフリカ地域事務所は、ヨルダンの首都アンマンを拠点に、16の国事務所と域内活動の管理・評価、技術支援、情報共有といった業務を行っています。新型コロナに関する支援において、私が所属する保健栄養部門は、国事務所と協力しながら、感染予防、医薬品や医療機器の調達、コミュニケーション強化、子どもと女性に対する保健栄養サービスの継続に取り組んでいます。

新型コロナ感染症対策として、当事務所は、世界保健機関(WHO)をはじめとする5つの機関とともに、プライマリーケアで働く保健医療従事者の為のオンライン研修プログラムを共同で作成、また、WHO・国際連合人口基金(UNFPA)と母子死亡率の高い9か国の保健大臣とのオンライン会議を共同で開催し、コロナ禍における子どもと女性に対する保健栄養サービスをいかに継続していくかについて議論しております。現在も、こうした域内での協力推進に関し、保健省や国際機関等と継続的に協議を行っています。フィールド活動は少ない地域事務所ですが、地域全体に関わるメリットを生かした活動が出来ればと思っています。

吉川美帆氏
国連児童基金(UNICEF)カンボジア事務所子どもの保護専門家

吉川美帆氏

2016年5月から現在まで、私は国連児童基金(UNICEF)において、子どもの保護専門家として、東南アジア地域に位置するカンボジアに勤務しています。具体的な業務としては、子どもを暴力、虐待、搾取から守るための様々な活動の実施を担当しています。2020年は新型コロナの影響を受けた子どもの保護に関する業務を重点的に行いました。

UNICEFカンボジア事務所では、新型コロナ感染拡大防止とそれに伴う社会経済的影響の軽減を目的として、日本からの支援を受け、保健、水・衛生、子どもの保護、教育、およびこれらの活動に関する広報等多岐(たき)に渡る取組を実施しました。特に、子どもの保護分野においては、カンボジア社会福祉省やNGOと密に連携し、すべての子どもたちが精神保健・心理社会的支援を含む社会福祉サービスを継続して受けられる環境づくりに率先して取り組みました。今後とも、UNICEFの職員として、世界で一人でも多くの子どもたちが安全に暮らすことが出来るよう、貢献していきたいと思っています。

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