2015年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス 05

2015年版ODA評価年次報告書ハイライト
~評価を通じたODAの改善を目指して

■ ODA評価年次報告書の目的

外務省ではODAに関して、開発協力白書に加え、ODA評価の概要についてまとめたODA評価年次報告書を1982年以来毎年発行しています。

評価には、ODAの管理改善支援と、国民に対し、ODAが適正に実施されているかどうかについて説明を行うという2つの目的があります。

第一の目的のODAの管理改善とは、日本が世界各地で実施しているODAが、効果的に実施されているか、それが本当に被援助国の開発に役立っているかを検証し、改善すべき点があれば対応し、その後の活動に活かすことです。そのために、外務省は、開発政策上重要なテーマや分野、また援助実績の多い国などの観点から、年に8件程度の案件を取り上げて、有識者による第三者評価を行っています。評価結果は、今後のより良い援助のための提言とともにまとめて評価報告書として公表されています。

さらに、ODAについて国民の理解と支持を得るという第二の目的のために、過去1年間に行った評価結果の概要と、評価の結果行われた提言に対し、どのように応えていくかについて簡潔にまとめ、年次報告書として公表しています。

なお、評価報告書は、客観的な観点から評価を行うとの考え方に立って、外務省のODA担当部局から独立した立場で外務省の評価専門の別の部局が作成しています。

 

■ 2015年版ODA評価年次報告書の概要

ガーナのアッパーウエスト州地域保健機能を活用した妊産婦・新生児保健サービス改善プロジェクト(写真:久野武志)

ガーナのアッパーウエスト州地域保健機能を活用した妊産婦・新生児保健サービス改善プロジェクト(写真:久野武志)

2015年版ODA評価年次報告書は3つの章と参考資料から構成されています。

第1章では、日本におけるODA評価の制度や経緯、また、国際社会におけるODA評価の動向などの概要について紹介しています。第2章では、外務省が2014年度に実施した第三者評価の概要と提言、そしてそれを受けた外務省およびJICAの対応策について説明しています。また、外務省だけでなく、日本政府としてどのような評価が行われたのかについて紹介するため、他省庁およびJICAが実施した評価の概要も紹介しています。加えて、援助受入れ側から見た日本のODAの評価の概要も紹介しています。2014年度は、9件の第三者評価を実施しましたが、ここでは、その中から、保健関連ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた日本の取組の評価およびケニアの国別評価について紹介します。

保健分野の取組というテーマが評価の対象となったのは、同分野が評価すべき重要な節目を迎えていると判断されたからです。MDGsが2000年に採択されて以来、日本は保健分野において、「国際保健政策2011-2015」、「国際保健外交戦略」などの一連の開発協力政策を策定し、二国間援助や国際機関を通じた援助による様々な支援を行ってきました。2015年のMDGs達成期限を控え、これまでに日本が行ってきた保健関連MDGs達成に向けた取組について総合的な評価を行い、保健分野における新たな政策立案の参考とすることを目的にしています。

評価の結果、日本の保健分野ODA政策(イニシアティブなど)は、MDGsやG8サミットなどに見られる国際社会の取組・援助潮流と一致している、また、日本が包括的に保健サービス支援に取り組んだ地域においては、他地域に比して保健アウトカム(成果)指標の改善度が高かったという意味で、日本の保健ODA支援の効果が上がったと考えられる、とされました。また、MDGsに代わる「持続可能な開発目標(SDGs)」において、保健関連目標に関し、日本が先進国の一員として、より保健支援ニーズが高く、状況の改善が強く求められているサブサハラ・アフリカや紛争国において、大きな役割を果たすことなどが提言されました。日本は、この評価結果も踏まえ、保健分野の新たな支援政策である「平和と健康のための基本方針」を策定しました。

評価年次報告書2015の表紙

評価年次報告書2015の表紙

他方、ケニアについては、アフリカにおける大国であり、日本も多くの支援を行っているにもかかわらず、2005年以来評価が行われてこなかったことから今回評価の対象となりました。

評価の結果は全般には肯定的であったものの、日本の援助に関するケニア側の認知度について検討課題があるとの指摘があり、日本の援助に関するケニア国民の認知度を高めるための広報の検討を行うことが提言されました。

これに対しては、日本の支援により整備された施設の完成式典などあらゆる機会を通じて、地元メディアに対するプレス発表を行うなど、広報活動に努めるとともに、ソーシャルネットワークサービスの活用や新聞への広告掲載など、ケニア国民に対し、日本の協力の認知度を高めるための幅広い広報戦略を検討していくとの対応策がとられました。

また、第3章では、2013年度に実施された第三者評価8件の結果に対するフォローアップの状況を報告しています。

いくつかご紹介すると、たとえば、アフリカン・ミレニアム・ビレッジ・イニシアティブ※に対する支援の評価では、同事業が国際機関を通じて行われるものであることから日本は直接的に事業の進捗を管理・監督する立場になかったものの、新たな援助アプローチの試行という政策的意図を考慮すれば、事業の成果をフォローし、十分なフィードバックを求める働きかけを行う必要があったと評価され、事業の実施管理体制の強化が提言されました。これに対し、同イニシアティブに基づいて実施している無償資金協力事業においては、現在の実施機関である国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)から各在外公館に対して定期的に報告を行うなど、管理体制の強化を図っていることが報告されました。

また、防災協力イニシアティブの評価では、「防災の主流化」や「メッセージを明確にした新イニシアティブの策定」という提言が示されました。これに対しては、第3回国連防災世界会議において採択された「仙台防災枠組2015-2030」を通じて防災の主流化を促進するとともに、防災分野における日本の新しいイニシアティブとして「仙台防災協力イニシアティブ」を発表しました(こちらの開発協力トピックスを参照)。

各評価案件の報告書や年次報告書は外務省ホームページに公表していますので、ここに紹介しきれなかった内容や、評価についてより詳しく知りたい方は、こちらもご参照ください。


※ ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト(MVP)の一部の事業のこと。MVPとは、MDGsの達成が遅れているサブサハラ・アフリカ地域の貧しい村落を対象に、総合的な開発アプローチを通じて極度の貧困を解消し、自立的に発展する能力を備えたコミュニティを形成することを目指した、国連ミレニアム・プロジェクトの提案を受けた援助事業。

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